Analogman Re-J Range Expander Mod TS9レビュー
Analogman Re-J Range Expander Mod TS9は、普通のTS9を「別物のハイゲインOD」に変える改造ではありません。
結論から言うと、今回確認した個体では、TS9の中音域の強さを残しながら、調整できる音域、バイパス時の高音域、使用部品を見直した改造でした。同じTS系でも、音量、歪み量、音域の変化は製品と設定によって異なります。

このラベルシールに価値があるのです。
今回修理依頼が来た個体を見た限り、基本的な歪みの音に関わる回路定数は大きく変えず、音に関係する部品をグレードの高いものへ交換し、レンジ調整のために一部抵抗値を変えている印象でした。弾いた感触としても、エフェクトONの音だけでなく、バイパス音もすっきりした感じがあります。
この記事は、修理依頼された実機を確認したうえでのレビューです。改造内容は個体差がある可能性があるため、すべてのAnalogman / RE-J系TS9が同じ仕様とは断定しません。
Analogman Re-J Range Expander Mod TS9の結論
このTS9は、ヴィンテージTS9に近づけるというより、TS9の弱点を丁寧に整えた個体として見ると分かりやすいです。
| 項目 | 印象 |
|---|---|
| 音の方向 | TS9の中域を残しつつ、レンジが少し広い |
| 歪み方 | TSらしいロー〜ミドルゲイン |
| 低域 | 通常のTS9より削られすぎない印象 |
| 高域 | 中音域が強く、高音域は鋭くなりにくい |
| バイパス音 | 曇りが少なく、すっきり感じる |
| 向いている用途 | 真空管アンプに入る信号を大きくする用途、ブルース/ロックのリード、常時ONに近い薄がけ |
TS9は中音域を強め、アンプに入る信号を大きくできます。逆に言うと、低域と高域のレンジは狭く感じることがあります。
この個体は、そこを無理にワイドレンジ化するのではなく、TS9として成立する範囲で整えているのが良いところです。

おそらくファーストリイシューのMod品で、もともとは75558がついていたと思われますが艶無しのNJM4558Dに変えられてます。
そもそもTS9はどんなエフェクターか
TS9は、Ibanez Tube Screamerシリーズを代表するオーバードライブです。
Analog ManのTube Screamer解説でも、TS9はTS808と内部的にかなり近く、主な違いとして出力段周辺の違いが挙げられています。TS9はTS808より少し明るく、滑らかさよりも中音域が強くなる変化が出やすいモデルです。
この「少し硬く、バンドで聞こえやすくなる」感じがTS9の特徴です。ブルースやロックでリードを持ち上げたいとき、クランチアンプの前で低域を締めたいときに使いやすいです。
Tube Screamer全体の流れは、こちらの記事でも整理しています。
改造内容を見た印象
今回の個体で面白いのは、音の根本を変えるような改造ではない点です。
TS系の音を大きく変えるなら、クリッピングダイオード、フィードバック回路のコンデンサ、トーン回路、出力段などを大きく変える方法があります。そうすると、低域が太くなったり、歪み量が増えたり、TSらしさが薄れたりします。
この個体は、そういう方向ではありません。
- 基本的なTS9の回路定数は大きく残している
- 音に関わる部品を質の良いものへ交換している
- レンジを整えるために一部抵抗値を変えている
- ON/OFFどちらも音の曇りを減らす方向に調整されている
派手な改造ではありませんが、TS9を使い込んでいる人ほど違いが分かりやすいタイプです。

歪みを作る部分の電解コンデンサとタンタルコンデンサはフィルムコンデンサに変えられてます。値の変更はなしです。
音の特徴
一番分かりやすいのは、TS9の中域は残っているのに、少し見通しが良いところです。
普通のTS9は、良くも悪くも音がまとまります。アンプの前に置くと低域が整理され、中音域が強くなり、リードを聞き取りやすくできます。ただ、環境によっては少し詰まったように感じることがあります。
Analogman Re-J Range Expander Mod TS9は、その詰まりが少しほどけます。
低域は広がりすぎず、TS9としての締まりを保っています。高音域は聞き取りやすくなりますが、ギラギラしすぎない。中域はしっかり残るので、普通のワイドレンジ系オーバードライブのようにバンド内で埋もれる感じも少ないです。
特にストラトでFender系アンプに入る信号を大きくする使い方に合います。Driveを低め、Levelを高め、Toneを上げすぎない設定にすると、中音域を強めながら低音域と高音域も残せます。
バイパス音の印象
この個体は、バイパス音もすっきりしているように感じます。
TS9はトゥルーバイパスではなく、バッファを通るタイプのエフェクターです。バッファは悪いものではありませんが、個体や部品、ボード全体の組み合わせによっては、OFF時に少し曇ったように感じることがあります。
今回の個体では、OFFの状態でも音の輪郭が見えやすく、余計な詰まりが少ない印象でした。
これは単純に「トゥルーバイパスだから良い」という話ではありません。むしろTS9らしいバッファ構成を活かしながら、通過音を整えているところがポイントです。
Range Expanderという名前の意味
Range Expanderという名前だけを見ると、低域も高域も大きく広げた現代的なTSを想像するかもしれません。
ただし、この個体の変化はそこまで大きくありません。TS9のレンジの狭さを完全に消すというより、TS9として必要な中域は残し、足りない部分だけを補う印象です。
このバランスはかなり重要です。
TS9を改造して低音域と高音域を増やしすぎると、元の中音域の強さが目立ちにくくなります。低音域が多すぎる状態でアンプへの入力を大きくすると音がぼやけ、高音域が多すぎると鋭い音になります。
この個体は、TS9の役割を壊さない範囲でレンジを整えているのが良いです。
RE-J Silver Modとの関係
RE-J ProjectのTS-9/808/Silver解説では、TS9の中域の濃さを維持しながら、低音のぼやけが少ない低音、濁らない高域、OFF時の音まで含めた調整について説明されています。
今回の個体も、その思想に近いものを感じます。
低音域や歪みを増やすより、TS9の中音域を残しながら、高音域とコードの各音を聞き取りやすくする変更です。TS9の音が好きでも、高音域が足りない、音域が狭い、バイパス時の音も調整したいと感じる人には、この変更が合います。
参考 TS-9/808/SilverRE-J Project PukiWiki
普通のTS9との違い
通常のTS9と比べると、音の違いは大きくありません。
むしろ、そこが良いところです。
| 比較項目 | 通常のTS9 | Analogman Re-J Range Expander Mod TS9 |
|---|---|---|
| 中域 | 中音域が強くなる | 中音域が強くなる |
| 低域 | 低音のぼやけが少なくやや削られる | 低音のぼやけは少ないが、少し量が増える |
| 高域 | 少し詰まる個体もある | バンドの中で聞こえやすく、各音を聞き取りやすい |
| 歪み量 | TSらしいロー〜ミドルゲイン | 大きくは変わらない |
| バイパス | バッファ感が出る場合がある | すっきり感じる |
TS9を別のエフェクターにしたいなら、もっと派手なモディファイのほうが向いています。
でも、TS9をTS9のまま良くしたいなら、この方向はかなり納得できます。
ヴィンテージTS9自体の音を知りたい場合はこちらも参考になります。
おすすめな人
Analogman Re-J Range Expander Mod TS9は、次のような人に向いています。
- TS9の中域は好きだが、少しレンジの狭さを感じる人
- ブースター用途でTS9を使う人
- Fender系アンプや軽く歪ませたアンプへの入力を大きくしたい人
- バイパス音も含めてボード全体の音を整えたい人
- 派手な改造より、音の改善を重視する人
特に、すでにTS9を使った経験がある人のほうが価値を感じやすいです。
初めてTS系を買うなら、まず通常のTS9やTS808で基準を作るほうが分かりやすいです。
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おすすめしない人
逆に、次のような人にはあまり向きません。
- TS9をハイゲインディストーションのように使いたい人
- 低域が大きく出る現代的なODが欲しい人
- 原音ブレンド付きのTS系を探している人
- 新品で同じ仕様を簡単に買いたい人
この個体は、おそらく現在では同じ仕様を新品で簡単に買えるタイプではありません。少なくとも、一般的な現行量産品のように常時流通しているモデルとしては探しにくいです。
中古で見つけた場合も、改造内容や施工元、基板の状態を確認したほうが安全です。
改造TS9として見た価値
TS9の改造は、やろうと思えばいくらでも派手にできます。
低域を増やす、ゲインを増やす、クリッピングを変える、トゥルーバイパス化する。どれも分かりやすい変化です。
ただ、分かりやすい変化ほど、TS9らしさを失うこともあります。
このAnalogman Re-J Range Expander Mod TS9は、変化の方向がかなり上品です。TS9の強い中音域と圧縮感を残し、アンプへの入力を上げたときも低音域と高音域を調整しています。
自作や改造をする目線で見ると、回路定数をむやみに変えず、部品と一部抵抗値で狙いを作っているところに好感があります。
参考にした情報
参考 TS-9 ANALOGMAN+RE-J による改造hot buttered pool の日記 参考 Ibanez Tube Screamer HistoryAnalog Man
TS9やTS系の改造については、こちらの記事でも整理しています。
FAQ
- Analogman Re-J Range Expander Mod TS9は普通のTS9と大きく違いますか?
- 大きく別物になるタイプではありません。TS9らしい中域を残しつつ、中音域の強さ、高音域の量、バイパス音の変化を調整した印象です。
- Range Expander Modは低域がかなり太くなる改造ですか?
- 極端に低域を増やす方向ではありません。TS9としての締まりを保ちながら、削られすぎる感じを少し補う方向に感じます。
- 現在も新品で買えますか?
- 同じ仕様の個体を新品で簡単に買えるモデルとしては確認しにくいです。探す場合は中古個体の改造内容と状態確認が重要です。
まとめ
Analogman Re-J Range Expander Mod TS9は、TS9を派手に変えるエフェクターではありません。
TS9らしい中音域と低音のぼやけにくさを残しながら、アンプへの入力を上げたときの低音域と高音域を調整しています。
通常のTS9で少し詰まりを感じる人、でもTS9らしさは失いたくない人には、かなり刺さるモディファイです。
TS9の中音域を残しながら、低音域と高音域を広げたい人に合う改造だと感じました。大きく音を変えず、弱点だけを減らす。こういう改造は、地味ですが長く使えるタイプです。


