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ARION SCH-Zレビュー|CRYO個体と自作CHORUS/VIBE改造

ARION SCH-Z Stereo ChorusのカゲツロックCRYO処理個体

ARION SCH-Z Stereo Chorusは、深くかけても耳に痛い高音になりにくく、太い揺れを作れるアナログ・コーラスです。通常のOUT 1に加えてOUT 2を備え、2台のアンプへつなげば左右へ大きく広がるステレオ効果も使えます。

私はSCH-Zを2台所有しています。1台はカゲツロックがCRYO処理を施した個体、もう1台はE.W.S.のCHORUS/VIBE MODを参考に自分で改造した個体です。CRYO処理による音の違いは正直分かりません。一方、自作改造機はバイパス時のわずかな音量低下がなくなり、VIBEモードも実用的でした。

先に結論
SCH-Z本体の魅力は、安いコーラスという枠に収まらない太い音と、モノラルでも存在感のある深い揺れです。CRYO処理の効果は、未処理の同条件個体との比較がないため判断できません。改造するなら、トゥルーバイパス化とVIBEモード追加は変化が明確です。ただしE.W.S.方式ではOUT 2を使えなくなるため、ステレオ出力との交換になります。
ARION SCH-Z Stereo ChorusのカゲツロックCRYO処理個体

カゲツロックがCRYO処理を施したARION SCH-Z。中央に「Stereo Chorus CRYO」のラベルがあります。

SCH-Zは太く深く揺れるアナログ・コーラス

コーラスは、原音へごく短く遅らせた音を混ぜ、その遅れ時間を周期的に動かすエフェクターです。1本のギターが複数で鳴っているような厚みと、音程がゆっくり動く感触を加えます。

ARION公式はSCH-Zを、一般的なコーラスより広い周波数帯域と、厚く豊かな音を持つモデルとして紹介しています。操作はRATE、DEPTH、TONEの3つです。

操作・端子役割
RATE揺れる速さを決める。右へ回すほど速い
DEPTH揺れの深さを決める。右へ回すほど深い
TONEコーラス音の明るさを調整する
OUT 11台のアンプで使う通常出力
OUT 22台目のアンプへつなぐステレオ出力

電源は9V電池または9VのACアダプターで、公式の消費電流は12mAです。本体は幅73mm、奥行127mm、高さ50mm。樹脂製なので軽く見えますが、電池込みの公称重量は340gあります。

参考 SCH-Z STEREO CHORUS 公式製品ページARION

実機で感じるSCH-Zの音

SCH-Zは、原音へ薄く飾りを足すタイプではありません。DEPTHを上げると揺れがはっきり前へ出て、和音には厚み、単音には大きな動きが加わります。それでも音の輪郭が完全に消えるわけではなく、RATEとDEPTHを低めにすれば伴奏にも使えます。

まずはRATEを10時、DEPTHを11時、TONEを12時付近から始めると、機種の性格をつかみやすいです。揺れを速くしすぎると音程の動きが忙しくなるため、深い効果が欲しいときはRATEを遅めにしてDEPTHを上げます。

TONEは、アンプやピックアップに合わせてコーラス音の高音を調整するノブです。明るすぎる場合は左へ、揺れが奥へ引っ込みすぎる場合は右へ動かします。専門用語で音を決めつけるより、原音の輪郭が残っているかを聞きながら合わせる方が簡単です。

カゲツロックのCRYO処理個体

私の所有機には、かつて存在したカゲツロックの「Stereo Chorus CRYO」ラベルが貼られています。CRYO処理とは、部品や材料を非常に低い温度まで冷却し、常温へ戻す処理を指します。オーディオや楽器の世界では、音質改善を目的とした加工として扱われることがあります。

ただし、この個体について処理した部品、温度、時間、測定結果を示す資料は確認できませんでした。未処理のSCH-Zと、音量を厳密にそろえて目隠し比較したわけでもありません。そのため、音が変わったとも、処理に意味がないとも、この1台からは判断できません。

実際に弾いた私の感想は「正直、違いは分からない」です。CRYOという表示より、SCH-Zそのものの音、ノブやジャックの状態、ノイズの少なさを基準に評価するのが妥当だと思います。

カゲツロックCRYO処理ARION SCH-Zの内部基板

CRYO処理個体の内部基板。外観から処理の対象や内容を特定することはできません。

内部はCD3207を使ったBBD方式

ARION SCH-Z基板のCD3207 BBDチップ

基板上で確認できるCD3207とCD3102。CD3207が遅延を作るBBD、CD3102がその動作を制御するクロック用ICです。

所有個体の基板にはCD3207とCD3102の表示があります。CD3207はBBDと呼ばれる遅延用ICです。BBDは音を多数の小さな段へ順番に渡し、ごく短い遅れを作ります。その遅れた音を原音へ混ぜ、遅れ時間を動かすことでコーラスの揺れが生まれます。

基板にはJRC 4558DD、JRC 2904Dと読めるICも確認できます。部品番号だけで音質の優劣は決まりませんが、SCH-Zがデジタル処理ではなく、BBDを使って短い遅れを作るアナログ・コーラスであることは実機から確認できます。

ARION SCH-Z基板のJRC 4558DDと2904D

JRC 4558DDと2904Dが見える基板。右端にはPRINCE JAPANの表示があります。

E.W.S.方式を自作で再現したCHORUS/VIBE改造

もう1台は、E.W.S.が販売していたSCH-Z CHORUS/VIBE MODの方式を参考に、自分で改造した個体です。フットスイッチを3PDTへ交換してトゥルーバイパス化し、純正のステレオ切替をCHORUS/VIBE切替へ変更しました。

ARION SCH-ZをトゥルーバイパスとCHORUS VIBE切替へ自作改造した個体

E.W.S.方式を参考に自作したCHORUS/VIBE改造機。中央のフットスイッチも交換しています。

純正状態では、エフェクトを切ったときに音量がわずかに下がるように感じました。トゥルーバイパス化すると、オフ時は入力から出力まで別の回路を通らず直結されるため、この音量差が気にならなくなりました。これは所有個体と使用環境での実感であり、すべてのSCH-Zで同じ程度の差が出るとは限りません。

E.W.S.公式マニュアルでも、改造内容として3PDTスイッチによるトゥルーバイパス、CHORUS/VIBE切替、OUT 2の廃止が明記されています。私の個体も同じ考え方なので、改造後はステレオ出力を使えません。

参考 ARION SCH-Z CHORUS/VIBE MOD ManualE.W.S.
自作改造ARION SCH-ZのCHORUS VIBEモード切替

純正のDIRECT/STEREO切替位置をCHORUS/VIBE切替として利用しています。

VIBEモードはゆっくり脈打つ揺れが気持ちいい

VIBEモードはかなり良いです。通常のコーラスより原音の芯が薄くなり、音程と音の明るさが周期的に動く感触が強くなります。私にはMXR Phase 45をゆっくり設定したときのような、音が前後へ脈打つ揺れに感じられます。

ただし、Phase 45はフェイザー、SCH-ZのVIBEはコーラス/ビブラート系で、回路方式は同じではありません。似ているのは音の動き方から受ける印象です。E.W.S.の説明でも、VIBEモードは通常より深い音程変化を作るコーラス/ビブラート効果とされています。

改造の交換条件はステレオ出力

この改造で得られるものは、オフ時に信号を直結するトゥルーバイパスとVIBEモードです。代わりにOUT 2は使えなくなります。

  • 2台のアンプで大きく広げたいなら純正SCH-Z
  • 1台のアンプで使い、オフ時の変化とVIBEモードを重視するなら改造機

どちらが上というより、使い方の違いです。純正のステレオ機能が必要な人は、改造前に失う機能を理解しておく必要があります。

マイケル・ランドウ使用機はSCH-ZではなくSCH-1

マイケル・ランドウがARION Stereo Chorusを使っていることは、本人の機材を扱ったインタビューで確認できます。ただし、その記事は型番を記載していません。2010年の来日時にギターテックへ取材したTARGIEの記事では、使用機を1980年代初期のSCH-1、トゥルーバイパス改造品と特定しています。

したがって、「ランドウはARIONのステレオ・コーラスを愛用している」は事実に沿いますが、「このSCH-Zを愛用している」と言い切るのは正確ではありません。SCH-Zは近い系統の後継モデルとして考えるのがよいでしょう。

参考 Michael Landau entrevistaCutaway Guitar Magazine 参考 Mike Landau and Robben Ford Interview!TARGIE

初期SCH-1とSCH-Zの実機比較はこちらで紹介しています。

ランドウのギター、アンプ、歪みを含む使用機材はこちらにまとめています。

中古で確認したいポイント

  • バイパス時とオン時に不自然な音量差がないか
  • RATE、DEPTH、TONEに大きなガリがないか
  • OUT 1とOUT 2の両方から正常に出力できるか
  • 電池蓋、フットスイッチ、樹脂製ジャックに破損がないか
  • 改造品はOUT 2が使えるのか、VIBE切替へ変更されているのか
  • 内部配線が外れかけていないか、修理跡が過度でないか

ARIONの樹脂筐体は軽量ですが、金属筐体のペダルと同じ強さは期待できません。特に中古の改造品は、音だけでなくフットスイッチの固定、配線、ジャックの状態まで確認したいところです。

まとめ

ARION SCH-Zは、BBDによる太く深い揺れと、2台のアンプで使えるステレオ出力が魅力のアナログ・コーラスです。3ノブで調整しやすく、薄い伴奏用から大きく揺れる効果音まで対応できます。

カゲツロックのCRYO処理個体については、私には未処理品との音の違いが分かりませんでした。比較条件や処理内容が不明なので、効果の有無を断定する材料にはできません。

一方、E.W.S.方式を参考にした自作改造は、バイパス時の音量低下が気にならなくなり、Phase 45を思わせるゆっくりしたVIBEの揺れも得られました。ステレオ出力との交換になりますが、1台のアンプで使うなら実用性の高い改造です。

FAQ

ARION SCH-Zはアナログ・コーラスですか?
はい。所有個体ではBBDのCD3207とクロック用CD3102を確認できます。BBDで短い遅れを作り、原音と混ぜてコーラス効果を生む方式です。
カゲツロックのCRYO処理で音は良くなりますか?
この所有個体では違いを判断できませんでした。処理内容が不明で、未処理の同条件個体との比較もないため、良くなるとも意味がないとも断定できません。
トゥルーバイパス化すると何が変わりますか?
所有する純正個体ではオフ時にわずかな音量低下を感じました。自作改造機はオフ時に入力と出力を直結するため、その差が気にならなくなりました。個体や接続環境によって感じ方は変わります。
CHORUS/VIBE改造後もステレオ出力を使えますか?
E.W.S.方式では使えません。OUT 2を廃止してCHORUS/VIBE切替へ変更するため、トゥルーバイパスとVIBEモードを得る代わりにステレオ出力を失います。
マイケル・ランドウが使っているのはSCH-Zですか?
ARION Stereo Chorusの使用は確認できますが、機材を型番まで特定した取材では1980年代初期のSCH-1とされています。SCH-Zそのものの愛用と断定するのは正確ではありません。