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ヴィンテージMXR Flangerの内部紹介|修理依頼で預かっている一台

修理依頼で預かっているヴィンテージMXR Flangerの外観

今回は、古いMXR Flangerの中身を紹介します。実は私の所有物ではなく、地元の先輩から修理を頼まれて預かっている一台です。

故障箇所がなかなか複雑で、修理に必要な代わりの部品も見つけられず、先輩には直せないと伝えています。ただ、「直るまで持っていていいよ」というような話になり、そのまま今も手元にあります。

そんな状態なので、私はこの個体が正常に鳴っているところを一度も聴いたことがありません。音をおすすめすることはできませんが、古いエフェクターの中身を見たい方には、楽しんでもらえるのではないでしょうか。

修理依頼で預かっているヴィンテージMXR Flangerの外観

塗装がかなり剥がれたMXR Flanger。電源コードが本体から直接出ている古いタイプです。

大きな筐体に四つのノブ

横長の筐体に、MANUAL、WIDTH、SPEED、REGEN.の四つのノブ。今のコンパクトペダルと並べると、場所を取る形です。ロゴは枠で囲まれたブロック体で、この個体にはエフェクトのオン/オフを示すLEDが見当たりません。

MXR FlangerのMANUAL、WIDTH、SPEED、REGEN.ノブ

操作部は四つのノブとフットスイッチ。文字や外周のラインにも年季が入っています。

入出力のジャックは、両方とも同じ側面にあります。電源コードも含め、足元に収めるときには少し工夫が要りそうです。

同じ側面に並ぶヴィンテージMXR FlangerのINとOUT端子

INとOUTが同じ側面に並んでいます。

この旧型Flangerは、Guitar WorldのMXR史では1976年後半に登場したモデルとして紹介されています。同記事によると、MXRが従来のペダルシリーズを終了したのは1984年。おおむね1970年代後半から1980年代前半の製品ということになります。ただ、この個体が何年製なのかまでは分かっていません。

“By 1984, MXR discontinued its original pedal line”

日本語訳:1984年までに、MXRは従来のペダルシリーズを終了した。

出典:Guitar WorldのMXR史(英語)

基板全体を見てみる

ヴィンテージMXR Flangerの基板全体と内部の電源部

基板には「flanger 117-3001-101」の印字。白い角形コンデンサーや大きな青い電解コンデンサーが目を引きます。

中を開けると、筐体の形に合わせて作られた大きな基板が入っています。中央にはフットスイッチを避ける切り欠きがあり、右側には電源部も収まっています。

左側には「C4558C」と刻印されたICが二つあり、どちらもソケットに載っています。白い角形のコンデンサーが並ぶ様子も、普段見慣れているBOSSの基板とは違って面白いところです。

基板上には調整用の半固定抵抗も見えます。電源コード直結の機種なので、内部には感電の危険があります。内部の点検は専門知識のある方に任せてください。

RETICON SAD1024

RETICON SAD1024と、その下に実装されたMC14013Bの拡大写真

RETICONのSAD1024。下側にはMC14013Bが実装されています。

内部で特に目を引くのが、RETICONのSAD1024です。アナログ信号を少しずつ受け渡して遅らせる、BBDと呼ばれる部品です。データシートでは、独立した512段の遅延部を二つ備えると説明されています。

“Two independent 512-stage delay sections.”

日本語訳:独立した512段の遅延部を二つ搭載。

出典:RETICON SAD1024データシート(英語PDF・Retroamplis掲載)

フランジャーは、こうした短い遅延を使い、遅らせた音と原音を混ぜることで独特のうねりを作ります。小さなICの中を音が順番に通っていく、と考えると少し面白いです。

MXR Flangerを使ったギタリスト

エディ・ヴァン・ヘイレン

MXR Flangerといえば、まずエディ・ヴァン・ヘイレンを思い浮かべる方が多いと思います。後年のシグネチャーモデルEVH117の公式マニュアルには、本人の言葉として次の一節が載っています。

“It’s part of my sound”

日本語訳:自分のサウンドの一部なんだ。

出典:MXR EVH117公式マニュアル(英語PDF)

本人が使用例に挙げているのが、ギターでは「Unchained」「Hear About It Later」。さらに「And the Cradle Will Rock」ではエレクトリックピアノにも使ったと話しています。ギター専用の飛び道具としてだけでなく、いろいろな楽器に使っていたのが興味深いです。

ジョン・マッギオーク

もう一人、使い方まで面白いのが、スージー・アンド・ザ・バンシーズで活躍したジョン・マッギオークです。

バンドメンバーのスティーヴ・セヴェリンによると、マッギオークは短くしたマイクスタンドの上にMXR Flangerを載せていたそうです。片手で演奏しながら、もう片方の手でノブを動かせるようにしていました。

“with the other he could be changing all the parameters”

日本語訳:もう片方の手で、あらゆるパラメーターを変えることができた。

出典:スティーヴ・セヴェリンのインタビュー(英語・MusicRadar)

足元でオン/オフするだけでなく、ノブを楽器の一部のように扱う使い方です。あの大きなノブも、手元に置いて動かすなら扱いやすそうに見えてきます。

いつか音を聴いてみたい一台

有名な録音で使われている機種ではありますが、手元のこれは、まだ音を聴けていない修理待ちの一台です。先輩のものなので、いつか直して返せればとは思っています。

ひとまず今回は、外観と内部の記録として残しておきます。SAD1024や基板の配置など、古いMXRの中身が気になっていた方の参考になればうれしいです。