Guyatone DISTORTION-H PS-024は、正直に言えば少し使いづらいディストーションです。ただし、つまらない音ではありません。BOSS DS-1やMarshall Guv’norのような定番とは毛色が違い、5本のHARMONICSスライダーを動かすたびに歪みの重心が大きく変わります。
セッションでMarshallアンプへつないだときは、ピッキングハーモニクスが明らかに出しやすくなりました。一方、バッキングやソロを一台で通すメインの歪みにできるかというと、私には少し難しかったです。万能ではないものの、古いGuyatoneらしい発想を楽しめる面白い一台です。
定番ディストーションの代わりを求めると扱いにくいペダルです。倍音を強く聞かせたいリフや飛び道具的なリードでは、この癖が長所へ変わります。

黒と金の筐体に、2ノブと5本のスライダーを詰め込んだPS-024。
DISTORTION-Hは5バンドEQを載せた歪み
操作はLEVEL、DISTORTION、そしてL、ML、M、MH、Hの5本です。前面では5本をまとめてHARMONICSと呼んでいますが、実際には低域から高域までを分けて調整する5バンドEQです。

L、ML、M、MH、Hの5帯域を個別に動かせます。
当時の海外向けGuyatoneカタログでも、PS-024は歪みの質を5つの帯域で調整できるモデルとして説明されています。普通のTONEノブより触れる範囲が広いぶん、良い場所へ着地させるのに時間がかかります。
参考
Guyatone Colour The Music Brochure(英語PDF)Guyatoneカタログ資料
Marshallで鳴らすとピッキングハーモニクスが出やすい
ライブバーのセッションで、Marshallアンプを相手にPS-024を使いました。印象に残ったのは、普通に歪みが増えることより、ピッキングハーモニクスの引っかかりが強くなったことです。右手を当てた瞬間に高い倍音が立ちやすく、HARMONICSという名前にも納得しました。
ただ、ピッキングハーモニクスが出やすいことと、バッキングやソロのメインとして使いたいことは別でした。セッションで使った限りでは、私の常用する歪みに据えたいとまでは思いませんでした。
DS-1のように「まずこの位置」という音がすぐ決まるペダルでも、Guv’norのようにアンプらしい歪みを広く作れるペダルでもありません。狙った帯域を持ち上げ、癖のある歪みを作る道具として使う方が合っています。
他の使用者もEQの広さと癖を挙げている
PS-024を再現した個体を数週間使ったビルダーは、5バンドの可能性を評価する一方、回路自体はミッドが強く、DISTORTIONを4分の3より上げると高域と圧縮感が増えると報告しています。また、HM-2ほどメタルへ寄った音ではなく、もっと古いディストーションらしい音だと感じたそうです。
参考
Guyatone PS-024 Distortion-H build and sound reviewPedalPCB Community Forum・英語
2012年の日本語レビューでは、1980年代らしい尖った音と、HARMONICSによるフィルター感が印象として挙げられています。評価の言葉は違っても、「普通のディストーションとは違う」「帯域操作が音のキャラクターを大きく決める」という点は共通しています。
同型機の音を長めに確認できるレビュー動画もあります。
回路はDS-1系なのか

トランジスター、オペアンプ、ダイオード、5バンドEQ用ICを載せた内部基板。
回路図は取っていませんが、部品構成を見たとき、トランジスター、オペアンプ、ダイオードを組み合わせる姿からDS-1系統の雰囲気を少し感じました。ただし、これだけでDS-1派生とは断定できません。
第三者が追った回路ではBOSS HM-2との部分的な類似が指摘されていますが、同じ回路のクローンではないとされています。音の印象もDS-1やHM-2そのものではないため、Guyatoneが当時の歪み回路を独自の5バンドEQと組み合わせたもの、と見るのが自然です。
参考
Guyatone PS-024 Distortion-H traced circuit commentaryDirtbox Layouts・英語
M5226Pが5本のHARMONICSをまとめる

基板のD5と周辺部品。古い電解コンデンサーやフィルムコンデンサーも残っています。
基板にはMitsubishi M5226Pが載っています。これはディストーション用オペアンプではなく、5つの共振回路と出力アンプを内蔵した5バンド・グラフィックEQ用ICです。PS-024の一番変わった部分を、まさにこのICが担当しています。
参考
Mitsubishi M5226Pデータシート(英語PDF)Mitsubishi Electric資料
5本のスライダーがあるわりに基板をコンパクトにまとめられているのも、専用ICを使った効果でしょう。部品を眺めるだけでも、一般的な3ノブのディストーションとは違う設計意図が分かります。
製造時期と使用ギタリストは分からない
PS-024は1980年代の機種として複数の資料に残っています。所有個体の背面にはSER. No 8504201、TOKYO SOUND CO., LTD.、MADE IN JAPANの表記があります。

背面のシリアル番号と東京サウンド、日本製の表記。
有名なギタリストの使用機材としては、私は名前を聞いたことがありません。短命な機種だったのかなとも思いますが、正確な販売期間は不明です。少なくとも、5バンドEQ付きディストーションという設計には、知名度とは別の面白さがあります。
電源は9V

背面のEXT. DC9V端子。極性表示はセンターマイナスです。
9V電池またはEXT. DC9V端子で動作します。所有個体の表示はセンターマイナスです。古い個体なので、外部電源をつなぐ前に表示、電池スナップ、ジャックの接触を確認した方が安全です。
HARMONICSのスライダーも交換部品を探しにくい箇所です。中古では5本すべてが途切れず動くか、フットスイッチが一度で切り替わるかまで確認したいところです。
まとめ
Guyatone DISTORTION-H PS-024は、素直に使いやすいディストーションではありません。5バンドHARMONICSは音作りの幅を広げる一方、設定次第で帯域の癖が強く出ます。私にとってはバッキングやソロのメインにはしにくい音でした。
それでも、Marshallでピッキングハーモニクスが出やすくなった感触は明確でした。DS-1やGuv’norとは違う歪みが欲しいとき、帯域を追い込んで一つの変な音を作るには面白い。万人向けではないからこそ残しておきたくなる、Guyatoneらしい問題作です。
現行を含む定番ディストーションとの違いは、こちらで整理しています。

