JC-120でジョン・フルシアンテの音へ近づけるなら、まずはクリーンを基本に、BP-1Wで強く弾くと少し歪む状態を作り、DS-2でリード、CE-2Wでコーラスを加える組み合わせから始めたいです。
フルシアンテの音といえばMarshallですが、自分で大きな真空管アンプを持ち込むのは簡単ではありません。スタジオに置いてあっても、モデルや整備状態、使える音量は毎回違います。それなら、スタジオやライブハウスで見かける機会の多いRoland JC-120を基準に、自分で持ち歩けるエフェクターで音を作ろう、というのがこのシリーズです。
第1回は、クリーンのカッティングから、歪んだソロ、コーラスやワウを使う場面まで。Marshallの大音量とキャビネットまで同じにはなりませんが、曲の中で必要な音の切り替えは整理できます。
最初にそろえるならDS-2・BP-1W・CE-2W
最初から全部買う必要はありません。すでにDS-1を持っていれば、それを歪み用にして始められます。フルシアンテらしい強いリードを優先するならDS-2、クリーンも含めた弾き心地を調整したいならBP-1W、揺れが欲しくなったらCE-2Wという順番です。
| 役割 | 使う機材 | まず試すこと |
|---|---|---|
| 音の基本 | BOSS BP-1W | CEモードで、強く弾くと少し歪む程度 |
| 強いリード | BOSS DS-2 | TURBO II、音量差を抑えて使う |
| もう一つの歪み | BOSS DS-1 | DS-2と交互に使い、TONEを低めから調整 |
| コーラス/ビブラート | BOSS CE-2W | CE-1コーラス、浅めから開始 |
| 信号を大きくする | MXR Micro Amp | BP-1Wへ入る信号を少し増やす |
| ワウ | Ibanez WH10V3 | GUITAR側、DEPTHを控えめにする |
ここから示す接続順とつまみの位置は、JC-120で試すための提案です。本人の機材を同じ順番・同じ数値で複製するものではありません。
CE-1はコーラスだけではない
元ギターテックのDave Leeは、フルシアンテのCE-1をMarshall MajorとSilver Jubileeへの分岐に使い、LEVELを強く弾くと少し歪み始める位置にしていたと説明しています。狙いたいのは、最初から深く歪んだアンプ音ではなく、普段はクリーンで、弾き方によって少し歪む音です。
“get to the point where it just starts to distort when you play hard.”
日本語訳:「強く弾くと、ちょうど歪み始めるところまで調整する。」
参考
Dave Leeが語るジョン・フルシアンテの機材(英語)BOSS Articles
このうちプリアンプの役割をBP-1W、揺れの役割をCE-2Wへ分けて考えます。使用機材の年代やCE-1の位置づけを詳しく知りたい場合は、こちらで整理しています。
JC-120はCH-1のクリーンから始める
外部エフェクターで音を作る基本形では、CH-1のHIGH入力を使います。BRIGHTはOFF、TREBLEは4、MIDDLEは6、BASSは3から。低音と高音を大きく持ち上げず、中音域を残す出発点です。

| コントロール | 開始位置 |
|---|---|
| 入力 | CH-1 HIGH |
| BRIGHT | OFF |
| VOLUME | 接続前は0。演奏しながら必要な音量まで上げる |
| TREBLE | 4 |
| MIDDLE | 6 |
| BASS | 3 |
接続するときはアンプとエフェクターの音量を下げ、電源を切ります。接続後はエフェクター、JC-120の順に電源を入れ、まずエフェクターをすべてOFFにしてクリーンを確認します。
HIGHは通常のギター出力向け、LOWは非常に大きな出力向けです。エフェクターをつないだだけでLOWにする必要はありません。意図しない歪みが出るときは、まずブースターの出力を下げ、それでも入力が強すぎる場合にLOWを試します。
“For a guitar with a standard output, use the ‘HIGH’ input.”
日本語訳:「標準的な出力のギターにはHIGH入力を使います。」
参考
JC-120取扱説明書・入力と接続手順(英語)Roland
音が耳に痛ければTREBLEを3へ、低音が膨らむならBASSを2へ、音が細すぎればBASSを4へ動かします。最初から複数のつまみを動かさず、同じフレーズで一つずつ比べると分かりやすいです。
ギターはストラトキャスター系のシングルコイルなら、ネック・ピックアップから始めます。コードを弾いたときの高音が強ければギターのTONEも少し下げる。歪み量を増やす前に、右手の強弱と不要弦のミュートで、音を伸ばすところと切るところを作っておきたいです。
CH-2を使っても構いません。その場合は同じEQを出発点にして、DISTORTIONとREVERBを0、VIB/CHORUSをOFFにします。CE-2Wを使うときは、JC側のコーラスを重ねず、外部の揺れだけを確認してください。
接続順と、音を作る順番
基本の3台は、次の順でつなぎます。
ギター → DS-2 → BP-1W → CE-2W → JC-120 CH-1 HIGH
DS-1、ワウ、Micro Ampも使う場合の接続例です。
ギター → DS-1 → DS-2 → WH10V3 → Micro Amp → BP-1W → CE-2W → JC-120
DS-1とDS-2は、まず片方ずつONにします。Micro Ampは歪みの後ろ、BP-1Wの前。これでディストーション自体の歪み量を直接増やさず、後ろのBP-1Wへ送る信号を増やせます。ワウは歪みの後ろに置き、歪んだ音の音域を足で動かす使い方から試します。
調整は接続順ではなく、次の順番で行います。
- JC-120だけで、演奏に必要なクリーンの音量を決める。
- BP-1WをONにし、弱く弾けばクリーン、強く弾くと少し歪むところを探す。
- DS-2をONにし、OFF時と比べて急に大きくならないようLEVELを合わせる。
- CE-2W、ワウ、Micro Ampを一つずつ加える。
最後に、実際に使う組み合わせでも音量を確認します。DS-2だけでは問題なくても、ワウやブースターを同時に入れると音量や歪み方が変わるためです。
中心になる6台の使い方
以下の時刻は、つまみを時計に見立てた位置です。LEVELは時刻で固定せず、ON/OFFの音量を聞きながら合わせます。
BOSS BP-1W
BP-1WはCEモード、GAINは9時、LEVELはON/OFFで同程度から始めます。バッファーはSTANDARDを基準にし、まずGAINだけで違いを聞きます。
普通にコードを弾いてすでに歪みすぎていればGAINを下げ、強く弾いても全く変化がなければ少し上げる。常時ONにして、クリーンとディストーションの両方がここを通る使い方です。DS-2を加えたときに音がつぶれすぎるなら、DS-2のLEVELかBP-1WのGAINを下げます。
CEモードはCE-1のプリアンプ音を基にしていますが、Marshallのアンプとスピーカーを再現する機能ではありません。JC-120が別のアンプに入れ替わるというより、JCへ入る前に少し歪む部分を作る、と考えると調整しやすくなります。
BOSS DS-2
強いリードには、TURBO II、TONEは10時、DISTは2時から。BOSSがTURBO IIを中音域を強調したソロ向けのモードとしている点が、選ぶ理由です。
JC-120へつなぐ場合、最初からLEVELまで最大にするのは避けたいです。まずBP-1WをONにしたクリーンと同じくらいの音量へ合わせ、バンドに埋もれる分だけ上げます。音を長く伸ばしたいならDISTを上げ、高音がきつければTONEを下げます。
TURBO IとIIでは音の聞こえ方が変わるので、モードを変えたらLEVELも確認します。大音量のMarshallで使われる設定を、そのままJCへ持ってくる必要はありません。
BOSS DS-1
DS-1が手元にあるなら、TONEは9〜10時、DISTは11〜12時で、まずバッキング用の歪みを作ります。LEVELはBP-1WをONにしたクリーンと同程度から。DS-2と2台使うなら、DS-1を控えめな歪み、DS-2を強いリード用として切り替える方法です。
DS-1にはDS-2のTURBO IIに相当する切り替えがありません。DS-2と全く同じ役割を期待するより、TONEを低めにし、コードを弾いたときの高音と低音のバランスを聞いて調整します。歪みを重ねるのは、それぞれ単体で使える音が決まってからで十分です。
BOSS CE-2W
コーラスはCE-1 CHORUSモード、RATEは10時、DEPTHは10時から。クリーンのコードを弾き、揺れが足りない場合だけDEPTHを上げます。まずはOUTPUT AのモノラルでJCへつなぎます。
CE-2WのCE-1モードにはコーラスとビブラートがあります。ゆっくりした広がりにはコーラス、音程そのものが揺れる効果が欲しい場面にはビブラートを使い分けます。ビブラートへ切り替えるときはDEPTHを下げてから合わせ直すと、狙う揺れ幅を見つけやすいです。
CE-1のプリアンプによる歪みはBP-1W側、コーラスの速さと深さはCE-2W側で調整します。JC内蔵コーラスは速さと深さが固定です。内蔵の音で十分ならそれを使い、揺れを細かく変えたい場合はCE-2Wを選ぶとよいと思います。
MXR Micro Amp
Micro Ampは、1つのつまみで信号を大きくするブースターです。今回の接続ではBP-1Wの直前に置き、最小から上げ、ONにすると少し歪みが増えるところを探します。
BP-1Wがすでに歪んでいると、Micro Ampを上げても、音量より歪みのほうが増える場合があります。クリーンのカッティングを少し強調したいのか、リードの歪みを増やしたいのかを先に決めておくと、上げすぎを防げます。
ソロの音量だけを上げたいなら、BP-1Wより後ろへ移す方法もあります。ただし、その後ろのコーラスやJCの入力にも大きな信号が入るため、音が割れない範囲で調整してください。
“Adding a preset amount of gain with just a single control”
日本語訳:「1つのコントロールで、あらかじめ設定した量のゲインを加える。」
Ibanez WH10V3
ワウはWH10系を軸にします。WH10V3にはGUITAR/BASS切り替えとDEPTHがあるので、GUITAR側、DEPTHは最小から始め、踏み込んだときに必要な変化が出るところまで上げます。
本人の初期WH10とWH10V3は世代が異なりますが、WH10系の操作を試す選択肢になります。JCで気をつけたいのは、ワウをONにした瞬間と、つま先側まで踏み込んだときの音量です。DS-2と同時に使う状態でも確認し、高音が強すぎればDEPTHを戻します。
ワウを歪みの前へ置いた音も比べて構いません。前に置くと、ワウで強調した音域がディストーションへ入り、歪み方も変わります。後ろでは歪んだ音の音域を直接動かせるので、まずこの違いを聞くのがおすすめです。
揺れを足すなら、曲に合わせて1台ずつ
コーラス以外にも、フェイザー、フランジャー、トレモロがあると音の変化を付けられます。以下はJC-120で効果を作り分けるための選択肢です。
接続位置は、BP-1Wの後ろから。最初はCE-2WもOFFにして、追加した1台の効果だけを聞きます。
BOSS PH-3
フェイザーは、音域が周期的に変わるようなうねりを加えるエフェクターです。PH-3なら4 STAGE、RATEは9時、DEPTHは12時、RESは9時から。クリーンの刻みに薄く加え、もっと複雑なうねりが欲しければ8、10、12 STAGEも比べられます。
BOSS BF-3
金属的なうねりを加えるならフランジャー。BF-3はSTANDARD、MANUALは12時、DEPTHは11時、RATEは9時、RESは9時から試します。歪んだリフへ短く掛けたい場合は、踏んでいる間だけ効果が出るMOMENTARYモードも使えます。
参考
BF-3のSTANDARD/MOMENTARYモードBOSS
BOSS TR-2
トレモロは音程ではなく音量を揺らします。TR-2ならRATEは12時、DEPTHは11時、WAVEは左側の滑らかな波形から。音をはっきり断続させたい場合は、WAVEを右側へ、DEPTHを深めにします。速さは曲を流しながら合わせます。
曲の中では、この4つの音を切り替える
| 場面 | ONにする機材 | 聞くポイント |
|---|---|---|
| クリーンのカッティング | BP-1W | 強く弾くと少し歪む。音を切る部分が明瞭か |
| 揺れるコード/アルペジオ | BP-1W+CE-2W | 揺れでコードの動きが分かりにくくなっていないか |
| 強く歪んだリード | BP-1W+DS-2 | 音が伸びるか。バッキングとの音量差が大きすぎないか |
| ワウを使うリード | BP-1W+DS-2+WH10V3 | 踏み込んだときの高音と音量 |
「Under the Bridge」のようなコードと装飾音を弾く練習なら、まずクリーンだけで、弦ごとの音量とミュートを確認します。「Soul to Squeeze」のような揺れを聞きたい場面ではCE-2Wを追加。曲名は音作りの目標で、ここで挙げた設定を録音時の機材・設定と対応させているわけではありません。
残響が必要なら、手持ちのディレイを揺れ系の後ろへ置き、反復音を小さめ、回数を少なめから足します。まずは残響なしでクリーンとリードの切り替えが成立するところまで作っておくと、バンドでも調整しやすいです。
応用:VOX MV50 CleanをJC-120のRETURNへ
エフェクターだけでは物足りなければ、VOX MV50 Cleanを音作りの中心にする方法もあります。MV50 CleanはNutubeを使った小型アンプで、スピーカー用の出力とは別にPHONES/LINE端子を備えます。
私が実際に試して気に入っているのは、PHONES/LINE端子にプラグを半挿しして、JCのRETURNへつなぐ方法です。問題なく動作していて、音もかなり好みでした。この状態でボリュームを上げると、私にはBassmanのような音に感じられ、Marshall系に通じる雰囲気も出てきます。
半挿しでキャビネット・シミュレーターを通さずに出力する
この使い方は、開発に携わったLee Custom Amplifierが2019年2月9日の投稿で紹介しています。通常のPHONES/LINE出力はアナログのキャビネット・シミュレーターを通りますが、半挿しでRING側の信号を取り出すと、それを通さないライン出力になるという仕組みです。投稿では、その先にエフェクターや別のパワーアンプをつなぐ使い方も案内されています。
参考
MV50の半挿しによるキャビネット・シミュレーターのバイパスLee Custom Amplifier
JCのスピーカーで鳴らすので、スピーカーの響きを模す回路を重ねずに済むのが、この接続の面白いところです。音を作るのはMV50、最後に増幅して鳴らすのはJC、という組み合わせになります。
接続と音量の合わせ方
ギター → 歪み・ワウ・ブースター → MV50 Clean INPUT
MV50 Clean PHONES/LINE(半挿し・RING側) → JC-120 CH-2 RETURN L/MONO
この接続では、JCの前面INPUTとプリアンプを通さず、MV50からの音をJCの後段へ送ります。JC前面のVOLUMEやTREBLE/MIDDLE/BASSを音量・音色調整のあてにせず、MV50側で調整します。基本編のCH-1入力とは別の接続です。
接続には6.3mmモノラル標準プラグのシールド・ケーブルを使い、MV50側を奥まで挿さず、RING側に接触する位置で使います。挿し込み位置は、上の開発者の投稿にある写真も参考になります。
- MV50とJCのVOLUMEを0へ下げ、両機の電源を切って接続する。
- JCのループ切り替えがある個体ではSERIES、LEVELは大きい信号を受ける+4dBu側から始める。
- MV50 CleanはTREBLE/BASSを中央から。JCの内蔵REVERBは0、VIB/CHORUSはOFFにする。
- MV50、JCの順に電源を入れ、MV50のVOLUMEをゆっくり上げる。
挿し込み位置を動かすときは音量を下げ、演奏中にプラグが引っ張られないようケーブルに余裕を持たせます。コーラスやディレイをMV50の後ろに置きたい場合は、PHONES/LINEからJCのRETURNまでの間へ入れられます。
JC-120は年代によって端子や仕様が異なります。RETURNのない個体では、この方法は使えません。会場の背面を先に確認してください。
“To use the unit in mono, use the L/MONO jack.”
日本語訳:「モノラルで使う場合はL/MONO端子を使います。」
参考
JC-120取扱説明書・RETURNと信号経路(英語)Roland
MV50のSPEAKER OUTPUTはスピーカー専用です。JCのINPUT、RETURNには絶対につながないでください。PHONES/LINEとは別の端子です。MV50は、スピーカーを接続せずPHONES/LINEだけを使うことが公式説明書で認められています。
参考
MV50 Clean・ライン出力とキャビネット・シミュレータVOX
参考
MV50取扱説明書(英語・日本語ほか/日本語は8ページ)VOX
JCのINPUTとRETURNの違い、HIGH/LOWやループの基本はこちらでも解説しています。
よくある質問
- DS-1とDS-2は両方必要ですか?
- 最初は片方で十分です。強いリードを優先するならDS-2のTURBO IIから。DS-1が手元にあるなら、TONEを低めにしてJC-120での音量と歪みを合わせるところから始められます。
- JC-120にコーラスがあるのにCE-2Wを使う理由は?
- CE-2Wでは速さと深さを調整し、足元でON/OFFできます。内蔵コーラスの音で十分なら、最初はJC側を使って構いません。二つを同時に掛けず、片方ずつ確認します。
- BP-1WだけでMarshallの音になりますか?
- BP-1WのCEモードはCE-1のプリアンプ音を基にしたもので、Marshallのアンプとスピーカーを再現する機能ではありません。JCへ入る前に、弾き方で少し歪む状態を作るために使います。
まずはクリーンとDS-2の音量差を合わせる
フルシアンテの音をJC-120で作るとき、最初にやりたいのはエフェクターを増やすことより、クリーンとリードの切り替えを気持ちよくすることです。JCの高音と低音を上げすぎず、BP-1Wで弾き方に応じた軽い歪みを作り、DS-2を踏んでも音量が飛び出しすぎないように合わせる。
そこまで決まったらCE-2W、ワウ、Micro Ampを加えます。自分で持ち歩ける機材の役割を決めておけば、会場が変わっても、どこから調整すればよいかが分かりやすくなります。










