海外で知られるBOSS GE-7の改造を実際に試したところ、プリアンプやブースターとして、より使いやすくなったと感じました。出力も上がったように感じます。 もともと好きだったGE-7を、自分の音作りにさらに使いやすくできたのが、今回の改造で面白かったところです。
GE-7の改造は、海外ではノイズの低減や音質の改善を狙う定番の題材です。今回試した内容には、そうした部品交換に加え、EQフィルターの効き方を調整する変更も含まれています。音量を上げるだけでなく、アンプへ送る音を整えたい人にとって面白い改造でした。

手元のGE-7を2台並べたところ。もともと好きだったプリアンプ・ブースター用途で、改造後も使っています。
海外で知られるGE-7 MODを試してみた
GE-7は、オペアンプを低ノイズ型へ交換したり、コンデンサを見直したりする改造が海外で紹介されてきました。たとえばTG-Musicでは、3個のTL022を別のオペアンプへ交換し、コンデンサも交換した実例を公開しています。
参考 GE-7のオペアンプ・コンデンサ交換例TG-Music(英語)We will remove these components: IC1, 2 and 3 (TL022 OP-amps)
日本語訳:IC1、IC2、IC3のTL022オペアンプを取り外します。
市販の改造では、Analog ManのGE-7/Proも、明瞭さの改善とノイズ低減を狙うものとして案内されています。
参考 GE-7/Proの改造方針Analog Man(英語)The Pro mod is designed to improve clarity and lower the noise issues that the stock GE-7’s have.
日本語訳:Pro modは、純正GE-7の明瞭さを改善し、ノイズの問題を軽減するために設計されています。
海外のGE-7 MODにも、使うICやコンデンサの値が違う複数の方法があります。今回試したのは、TL072への交換、1µFのフィルム化、EQ用コンデンサの容量変更、470pF追加を組み合わせる内容です。TG-MusicやAnalog Manの改造そのものを再現した記事ではなく、同じGE-7を別の部品構成で使う実例として紹介します。
今回の対象はTL022CPが3個並ぶ旧基板
今回の改造前の基板には「GE-7 MT BOARD」「ASSY 75215510 00」の印字があり、TL022CPが3個並んでいます。もう1個の8本足のICには「4558DD JRC」の刻印があります。

改造前の基板全体。部品の足が基板の穴を通る、スルーホール実装の旧基板です。
小さな部品を基板表面へ直接取り付けた表面実装版には、この交換内容をそのまま適用できません。また、旧基板同士でも部品番号や配置が異なることがあります。今回の交換対象は、実機で確認したC9・C7・C13と、C11・C25・C19です。部品番号はこの個体の基板に合わせたものです。作業時は、手元の基板の印字と実装値を確認してください。
電池とACアダプターを外し、基板の配線を引っ張らないように作業します。古い基板は、無理に部品を抜くと銅の配線や、はんだ付けする部分が剥がれることがあります。部品の位置・向き・容量を判断できない場合は、交換前に修理・改造工房へ相談してください。
交換・追加する部品と、それぞれの狙い
改造の方向性は、EQ回路のノイズを抑えること、信号を受け渡す部品の特性を整えること、EQフィルターの特性を見直すことの三つに分けられます。さらに470pFを追加して、高い周波数での増幅を抑える方向へ調整します。
| 交換・追加箇所 | 変更内容 | 回路上の狙い |
|---|---|---|
| 3個のTL022CP | TL072CPを3個使用 | EQフィルター回路のオペアンプ雑音を抑える |
| C11・C25・C19 | それぞれ1µFのフィルムへ交換 | 容量を保ちながら、信号結合部のコンデンサ特性を整える |
| C9 | 4.7µFを1個使用 | 容量変更でEQフィルターの効き方を調整 |
| C7 | 1µFへ交換 | 容量変更でEQフィルターの効き方を調整 |
| C13 | 0.047µFへ交換 | 容量変更でEQフィルターの特性を調整 |
| JRC4558DDの6・7番ピン間 | 470pFを追加 | 帰還回路を使って高周波側の増幅を抑える |
表の「狙い」は、交換部品と回路の一般的な働きから考えられるものです。改造後に実際に弾いて感じた変化は、後半で紹介します。
TL022CPからTL072CPへ:EQ回路の低ノイズ化
GE-7の3個のTL022CPは、各帯域のフィルターに使われています。オペアンプと抵抗・コンデンサを組み合わせ、コイルに相当する働きを作る「ジャイレーター」と呼ばれる回路です。ここが、スライダーで特定の帯域を持ち上げたり下げたりする働きを支えています。

交換前のTL022CP。今回の実機では、この3個をTL072CPへ交換しました。
TL022は低消費電力を特徴とするオペアンプです。電池で動くエフェクターには意味のある選択ですが、TL072への交換では、消費電流よりも入力電圧雑音の低減を重視します。EQの設定によってはフィルター側の雑音も目立つため、この部分を見直すのが海外の低ノイズMODでよく使われる方法です。
参考 TL022の製品情報とデータシートTexas Instruments(英語)Dual Low-Power Operational Amplifiers
日本語訳:低消費電力の2回路入りオペアンプ。
TL072CPは8本足のDIP型です。同じTL072でも表面実装用の形状があるので、部品の外形まで確認します。
参考 TL072の雑音特性・消費電流・パッケージTexas Instruments(英語)PDIP (P)
日本語訳:PパッケージのプラスチックDIP型。
この交換だけでEQの中心周波数や、抵抗で設定された増幅率を大きく変えるわけではありません。また、エフェクター全体のノイズは抵抗や電源、配線にも左右されます。TL072に替えた効果は、実機で確認する必要があります。消費電流は増えるため、電池の持ちは短くなる方向です。
C11・C25・C19を1µFのフィルムへ:信号結合部を見直す
同容量のフィルムコンデンサへ交換するのは、C11・C25・C19の3個です。それぞれ1µFを使います。 これらは、音の信号を次の段へ渡す信号結合用のコンデンサです。前段の直流電圧を次の段へ渡さず、音の信号を受け渡す「カップリング」の役割です。
容量が同じなら、周囲の抵抗との組み合わせで決まる低域の通し方は、理想的にはほぼ同じです。 ここでの狙いは低音を増やすことではなく、コンデンサが信号へ加える歪みや、容量の安定性などを見直すことです。
TIの音声回路向け比較では、1µFのフィルムコンデンサが良好な歪み・雑音特性を示しています。ただし、これはTIの試験回路での結果で、GE-7の電解コンデンサを替えれば必ず同じだけ改善するという意味ではありません。
参考 音声回路の歪みを抑えるコンデンサの選び方(PDF)Texas Instruments(英語)the 1-µF SMT film capacitor offers the best performance over the full audio bandwidth
日本語訳:この比較では、1µFの表面実装フィルムコンデンサが音声帯域全体で最も良い性能を示しました。
実装では、同容量でもフィルム型のほうが大きくなりやすい点に注意します。基板の穴の間隔と、裏蓋を閉めたときの高さを確認してください。次に紹介するC9・C7は、EQフィルターの容量を変える部品です。C11・C25・C19の同容量でのフィルム化とは役割が違います。
C9を4.7µF、C7を1µFへ:フィルター用コンデンサの容量変更
C9には4.7µFを1個使い、C7は1µFへ交換します。 C11・C25・C19を同容量のフィルムに替える作業とは別に、こちらはコンデンサの容量を変える改造です。
EQのフィルターは、抵抗とコンデンサの組み合わせで、どの音域にどのように効くかが決まります。容量の変更は、特定の音域を持ち上げたり下げたりするときの効き方を調整するためのものです。コンデンサを大きくすれば全体の音量が上がる、という仕組みではありません。
交換部品は耐圧と寸法を確認し、極性のある電解コンデンサを使う場合は、基板の+・−に合わせて取り付けます。
C13を0.047µFへ:フィルターの特性を調整
C13は0.047µFへ交換します。 0.047µFは47nFと同じ容量です。
この変更も、EQフィルターの特性を調整する一部です。どのように効くかは、組になる抵抗やコンデンサにも左右されます。C9・C7の交換と合わせて音の調整範囲を見直し、改造後にスライダーを動かして好みの設定を探します。
JRC4558DDの6・7番間に470pF:高周波側の増幅を抑える
私の個体では、JRC4558DDの6番と7番ピンの間へ470pFを追加しています。6番は反転入力、7番は出力です。
参考 NJM4558のピン配置(メーカー資料PDF)新日本無線・DigiKey掲載(英語)6. B – INPUT / 7. B OUTPUT
日本語訳:6番はB側の反転入力、7番はB側の出力。
出力と反転入力の間へ470pFを追加すると、高い周波数ほどコンデンサを通じて出力が反転入力へ戻り、高周波側の増幅を抑える働きになります。高域を無制限に伸ばすより、必要以上に高い周波数の成分を抑える方向の変更です。
実際の効き方は、EQの設定や周囲の回路によって変わります。
ノイズゲートのように無音時だけ雑音を消す改造ではなく、高周波成分を含む信号全体の通し方を変えるものです。追加部品の足を短くまとめ、近くの端子やケースと接触しないように取り付けます。
全体では、低ノイズ化とEQ特性の調整を組み合わせたMOD
今回の内容をまとめると、オペアンプ交換でEQ回路の雑音低減を狙い、同容量のフィルム化で信号結合部などの特性を整え、C9・C7・C13の容量変更でEQフィルターの特性を調整する改造です。470pFの追加は、高周波側の増幅を抑える役割を担います。
こうした組み合わせは、GE-7を常時オンで音色の調整に使ったり、ブースターとして後段へ送る音を作ったりするときの使い勝手につながる内容だと思います。改造後は、スライダーを動かしながら音の変化を聴き直し、使うギターやアンプに合う設定を探します。
一方、電源を昇圧する改造や、全帯域の増幅率を一律に上げる改造ではありません。回路上の狙いと、実際に弾いたときの出力感は分けて考えたいところです。
実際に弾くと、プリアンプやブースターとして使いやすくなった

改造後の基板。3個のオペアンプがTL072CPへ替わり、コンデンサも交換しています。
私が実際に使って感じたのは、プリアンプやブースターとして、より使いやすくなったことです。出力も上がったように感じ、アンプへ送る音を作る用途で使いやすい印象になりました。
GE-7は、もともと各帯域とLEVELを組み合わせて音色と音量を調整できる機種です。私にとって今回の改造は、その使い方をさらに気に入るきっかけになりました。
オペアンプやコンデンサをまとめて変更しているため、この感想を特定の1部品だけの効果として分けることはできません。出力やノイズの変化量を測定した結果ではなく、実際に弾いたときの印象として参考にしてください。
改造前から気に入っている使い方や、日本製GE-7の内部については、所有品の紹介で詳しく扱っています。
ACA電源仕様をDC9Vパワーサプライで使うための改造
ACA電源仕様のGE-7では、一般的な安定化DC9Vパワーサプライを単独で接続すると、内部の抵抗とダイオードで電圧が下がり、回路へ十分な電圧が届かないことがあります。
今回の旧基板では、基板に表示された配線2番と3番をジャンパー線でつなぐ方法があります。 ACA用の抵抗・ダイオードを通る経路を迂回し、この部分による電圧降下を回避するための改造です。ここでいう2番・3番は、ICのピン番号ではなく基板の配線接続点の番号です。

ACA電源仕様の配線2番・3番付近。基板の番号と配線の接続先を確認します。
作業前には電源と電池を外し、2番・3番がDCジャックのマイナス側と入力ジャックのリング側につながり、その間にACA用の抵抗・ダイオードが入っていることを配線とテスターで確認します。別の基板版やPSA仕様に、番号だけを頼りに適用するものではありません。
海外の改造解説でも、DCジャックのマイナス側と入力ジャックのリング側を直接つなぐ方法が紹介されています。
参考 BOSSのACA電源仕様をPSA仕様へ変更する改造stinkfoot.se(英語)connect the adapter jack negative (usually a blue wire) to the wire going to the input jack ”ring” terminal.
日本語訳:アダプタージャックのマイナス側(通常は青い配線)を、入力ジャックのリング端子へ向かう配線につなぎます。
この改造後は、安定化されたセンターマイナスのDC9V電源を使用します。従来のACAアダプターや12V出力は使いません。 音声回路の部品交換とは別の電源対応で、9Vを超える電圧へ昇圧する改造ではありません。
作業の進め方と、交換後の確認
必要になるのは、はんだごて、はんだ、吸い取り線または吸い取り器、ニッパー、ピンセット、テスターなどです。古い基板からICを外す作業に慣れているかも、着手前に考えたいところです。
- 改造前に各帯域、LEVEL、オン/オフの動作を確認し、内部と部品の向きを撮影する。
- 電池とACアダプターを外し、対象基板の回路図と部品番号・容量・ICの型番を照合する。
- 交換箇所を一つずつ進める。はんだが残ったまま、部品を引き抜かない。
- ICの向き、電解コンデンサの極性、隣の端子同士をつないではんだ付けしていないかを確認する。
- 基板裏の絶縁材を戻し、部品の足や本体がケースに触れないことを確認する。
- 電源部分を変更していなければ個体の指定電源、上記のACA対応改造後なら安定化DC9V・センターマイナス電源で、小さな音量から動作を確認する。異音や発熱があれば、すぐに電源を外す。
交換後は、7本の帯域スライダーとLEVELを中央にそろえた状態から始めます。各帯域を1本ずつ動かし、音が途切れたり、特定の帯域だけ反応しなかったりしないか確認してください。
オペアンプやコンデンサの交換だけでは、ACA電源仕様は変わりません。DC9V電源への対応は、上記の電源部分の改造と分けて確認してください。
ブースターとして比較するとき
まずギター、アンプ、接続順、各帯域の設定をそろえ、LEVELで聞こえる音量を合わせて音色を比べます。そのあとLEVELを上げ、後段の歪みや音量がどう変わるかを確認します。
アンプなどがすでに大きく歪んでいると、入力を上げても音量より歪みが増えることがあります。「大きく聞こえた」「歪み方が変わった」「音色が変わった」を分けて聴くと、自分の用途に合う変化か判断しやすくなります。
これは改造後の確認方法の一例です。冒頭の感想は、私が実際に弾いたときの印象として参考にしてください。
ほかのBOSS改造記事も参考に
部品交換で音の方向を変える例として、MT-2では3種類の改造を実際に試しています。交換部品の整理や、改造後の感想を比べたい方はこちらもどうぞ。
BD-2の改造まとめでも、旧基板の確認と部品交換を扱っています。GE-7とは交換位置も内容も異なりますが、作業前の確認点を読む際の参考になります。
GE-7の改造についてよくある質問
- 今回のGE-7 MODは何を狙う改造ですか?
- オペアンプ交換による低ノイズ化、C11・C25・C19のフィルム化、C9・C7・C13によるEQ特性の調整、高周波側の増幅を抑える470pF追加を組み合わせています。
- 交換するコンデンサの番号と容量は?
- C9は4.7µF、C7は1µF、C13は0.047µFへ交換します。C11・C25・C19は、それぞれ1µFのフィルムコンデンサへ交換します。
- 470pFはどこに追加しますか?
- 今回の実機ではJRC4558DDの6番と7番ピンの間へ追加しています。出力と反転入力の間に加え、高周波側の増幅を抑える狙いがあります。
- 改造すると必ず出力が上がりますか?
- 私は出力が上がったように感じ、プリアンプやブースターとして使いやすくなりました。出力電圧の増加を測定した結果ではなく、昇圧や全帯域の増幅率を一律に上げる改造でもありません。
- 現行のGE-7でも同じ改造ができますか?
- この記事の対象はTL022CPが3個並ぶスルーホール実装の旧基板です。表面実装版へそのまま適用せず、旧基板同士でも部品番号・配置・実装値を照合してください。
2n3565_tokyo 
