BOSS DD-5 Digital Delayは、1995年に発売された多機能デジタルディレイです。最大2秒のディレイに加え、リバース、2秒のホールド、外部フットスイッチによるタップテンポ、パンニング出力まで小さなBOSS筐体へ収めています。
現在の基準では古いデジタル機です。わざわざ古いデジタルディレイを選ぶ人は多くないかもしれません。しかし、輪郭がはっきりした1990年代らしいデジタル音も、今では一つの味として楽しめます。

長く使用してきたBOSS DD-5の所有個体。外装には傷や塗装剥がれが多く、内部には私自身による改造があります。
1995年当時は最先端だったデジタルディレイ
BOSS公式の歴史記事によると、DD-5は1995年に登場しました。従来のDD-3が最大800msだったのに対し、DD-5は最大2000msまで延長。さらに11モード、リバース、2秒ホールド、外部タップテンポ、ステレオ出力を追加しています。
BOSSの修理対応一覧では、生産完了は2002年です。製造時期によっては30年以上が経っているため、古い機材であることは間違いありません。ただし、アナログ部品の違いを楽しむヴィンテージ機というより、初期の多機能デジタルディレイとして見る方が、この機種の面白さを理解しやすいと思います。
参考 BOSS ディレイ・ペダルの歴史BOSS Articles 参考 機種別経過年数&修理対応期間一覧BOSS4つのつまみは難しくない

操作はE.LEVEL、F.BACK、D.TIME、MODEの4つ。MODEの番号でディレイの種類と時間範囲を選びます。
| つまみ | 役割 |
|---|---|
| E.LEVEL | 遅れて鳴る音の大きさ |
| F.BACK | 何回くらい繰り返すか |
| D.TIME | 音が遅れて返ってくるまでの時間 |
| MODE | ディレイの種類と時間範囲 |
ディレイは「自分が弾いた音を少し後からもう一度鳴らす」エフェクターです。E.LEVELを上げるほど返ってくる音が大きくなり、F.BACKを上げるほど繰り返す回数が増えます。
MODE 5のHOLDではF.BACKとD.TIMEを使いません。MODE 8〜11のTEMPOでもD.TIMEは使わず、外部フットスイッチを踏んだ速さから時間を決めます。
11モードの違い
| MODE | 機能 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | DELAY | 1〜50msの短いディレイ |
| 2 | DELAY | 50〜200ms |
| 3 | DELAY | 200〜800ms |
| 4 | DELAY | 800〜2000ms |
| 5 | HOLD | 最大2秒を録音して繰り返す |
| 6 | REVERSE | 逆再生のように聞こえるディレイ |
| 7 | E/D | 1〜400ms。原音とエフェクト音を別々の出力へ送る |
| 8 | TEMPO | 4分音符 |
| 9 | TEMPO | 付点8分音符 |
| 10 | TEMPO | 8分音符 |
| 11 | TEMPO | 4分音符の3連符 |
MODE 1〜4は一般的なデジタルディレイです。MODE番号が大きくなるほど選べる時間が長くなります。短い設定は音に厚みを加える用途、長い設定はフレーズの後ろへ明確な反復音を置く用途に向いています。
MODE 5は、現在でいう簡単なルーパーです。ペダルを踏んでいる間を最大2秒録音し、離すと繰り返します。電源を切るかMODEを変えると録音は消えるため、フレーズを保存する機能ではありません。
MODE 7はOUTPUT(MONO)からエフェクト音、PANNING OUTから原音を出します。2台のアンプやミキサーへつなぎ、原音とディレイ音を別々に扱いたい場合のモードです。
私はリバースディレイをイントロで使っていた
DD-5で特に気に入っていたのがMODE 6のREVERSEです。BOSSの取扱説明書では、次のように説明されています。
“This mode creates a special effect that reminds you of reverse playback.”
日本語訳:「逆再生を思わせる特殊な効果を作るモードです。」
参考 DD-5 Owner’s Manual(英語PDF)BOSS/Roland普通のディレイは「弾いた音が、そのまま後から返る」効果です。リバースでは、音の頭と終わりが入れ替わったように膨らみながら返ってきます。輪郭がすぐに現れないため、単音フレーズへ不思議な吸い込み感を加えられます。
私は曲全体へかけ続けるより、イントロなど一部分で使っていました。最初から異質な空気を作り、歌やメインの演奏が始まったらOFFにする使い方です。DD-5はOFFにしても鳴っているディレイ音を急に切らず、自然に残せる仕様なので、この切り替えにも向いています。
タップテンポには外部フットスイッチが必要

本体右側にINPUTとTEMPO、左側にOUTPUT(MONO)とPANNING OUTを装備します。
DD-5本体のペダルだけでは、演奏中にテンポを入力できません。右側のTEMPO端子へ別売のBOSS FS-5Uを接続し、曲に合わせて4回以上踏むと基本テンポが決まります。
MODE 8〜11は、同じテンポから4分音符、付点8分音符、8分音符、4分音符の3連符を選ぶ機能です。特に付点8分音符は、少ない音数でもリズミカルな反復を作りやすい設定です。
現行のディレイでは本体ペダルでタップできる機種も多いため、外部スイッチが必要な点はDD-5の弱点です。一方、エフェクトのON/OFFとテンポ入力を別々のペダルへ任せられるので、誤操作を避けやすい長所もあります。
2つの出力でディレイ音を左右へ動かせる
OUTPUT(MONO)だけを使えば、一般的なモノラル出力です。PANNING OUTも接続すると、MODE 1〜6と8〜11ではディレイ音が2つの出力から交互に鳴り、左右へ動くパンニングディレイになります。
入力は1つなので、現在の機種に多いステレオ入力ではありません。それでも、2台のアンプやステレオ録音で使うと、コンパクトペダル一台とは思えない広がりを作れます。
純正のデジタルらしさも今では味になる
DD-5の公式仕様は、16bitのA/D・D/A変換と32kHzのサンプリング周波数です。これは仕様上の事実ですが、その数値だけで音の良し悪しは決まりません。
改造前に使った私の印象では、リピート音は明るく、輪郭がはっきりしていました。現代の滑らかなデジタルディレイと比べると、少し硬くデジタル臭く感じる部分があります。しかし、今ではその質感も1990年代のデジタル機らしい個性に聞こえます。
原音になじませる温かな反復音が欲しいなら、新しい機種のアナログモードやテープモードの方が簡単です。少し人工的な輪郭を音作りに使いたいなら、DD-5を古いからという理由だけで避ける必要はありません。
所有個体はコンデンサー1個でリピート音を曇らせている

所有個体の内部基板。DD-5は表面実装部品を多く使ったデジタル回路です。

私が追加した赤いコンデンサー。E.LEVELポット側からグラウンドへ接続しています。
私の所有機には、E.LEVELポットからグラウンドへコンデンサーを1個追加しています。高い音の一部をグラウンドへ逃がし、リピート音を少し曇らせるための簡単な改造です。
狙いは、純正の明るい反復音を少し抑え、アナログディレイのように原音の後ろへなじませることでした。現在の所有個体では、純正より丸く暗いディレイ音になっています。アナログ回路へ変わるわけではなく、あくまでデジタルのリピート音をフィルターで暗くした音です。
この記事の内部写真と音の感想は、改造された一台についてのものです。すべてのDD-5が同じ部品配置や音ではありません。また、コンデンサーの値や接続点によって変化量が違うため、写真だけを見て同じ改造を行うことはおすすめしません。
電源と公式仕様

DC9V端子はBOSS PSAシリーズ対応。本体のラベルにも指定アダプターの表示があります。
| 項目 | BOSS公表値 |
|---|---|
| ディレイタイム | 1〜2000ms |
| モード | 11 |
| A/D変換 | 16bitリニア、64倍オーバーサンプリング、AF方式 |
| D/A変換 | 16bitリニア |
| サンプリング周波数 | 32kHz |
| 入力インピーダンス | 1MΩ |
| 出力インピーダンス | 1kΩ |
| 電源 | 9V電池/BOSS PSAシリーズACアダプター |
| 消費電流 | 65mA |
| 電池寿命の目安 | アルカリ電池で約5時間 |
| 寸法 | 73W × 129D × 59Hmm |
| 重量 | 420g(電池含む) |
消費電流はアナログの歪みペダルより大きいため、取扱説明書でもACアダプターの使用が推奨されています。
現行機から選ぶならDD-8
DD-5の直接の後継は2002年のDD-6です。その後DD-7を経て、現在はDD-8がコンパクトシリーズの多機能デジタルディレイを受け継いでいます。
DD-8は最大10秒、11種類のディレイ、最大40秒のルーパー、ステレオ入出力を備えます。古いデジタル音やDD-5そのものに魅力を感じるのでなければ、機能、修理対応、入手性を考えて、私はDD-8をおすすめします。
デジタルディレイの現行機を用途別に比較した記事もあります。
中古購入時に確認したい点
- 4つのつまみを動かして音切れや大きなガリが出ないか
- MODE 1〜11が正しく切り替わるか
- リバースと2秒HOLDが動作するか
- エフェクトをOFFにした後もディレイ音が自然に残るか
- OUTPUTとPANNING OUTの両方から音が出るか
- TEMPO端子が外部フットスイッチへ反応するか
- 電池端子に液漏れや腐食がないか
- 修理や改造の跡がある場合、その内容が説明されているか
BOSS公式ではDD-5の修理受付を終了しています。外観の傷だけでなく、デジタル機能、端子、スイッチを一通り確認できる個体を優先します。
まとめ
BOSS DD-5は、1995年のコンパクトペダルとして最大2秒、11モード、リバース、HOLD、外部タップテンポ、パンニング出力を実現した多機能デジタルディレイです。
現在はもっと高音質で便利なディレイを簡単に選べます。それでも、純正DD-5の明るく輪郭のあるリピート音や、初期のリバースディレイには新しい機種とは違う味があります。私はリバースモードをイントロなどの場面転換に使っていました。
所有個体はコンデンサー1個で高音を抑え、アナログディレイのように少し曇った音へ調整しています。これは純正DD-5の評価とは分ける必要がありますが、古いデジタル機を自分の演奏へ合わせる一つの方法でした。
FAQ
- BOSS DD-5はいつ発売されましたか?
- BOSS公式の修理対応一覧では1995年発売、2002年生産完了です。現在はメーカーの修理受付も終了しています。
- BOSS DD-5のリバースディレイはどんな音ですか?
- 弾いた音がそのまま返るのではなく、逆再生のように膨らみながら聞こえる効果です。所有者はイントロなど、短い場面で独特の空気を作るために使用していました。
- BOSS DD-5は本体だけでタップテンポを使えますか?
- 使えません。TEMPO端子へ別売のBOSS FS-5Uを接続し、曲のテンポに合わせて踏んで設定します。MODE 8〜11で4種類の音符を選べます。
- 掲載されているBOSS DD-5は純正状態ですか?
- いいえ。所有者がE.LEVELポットからグラウンドへコンデンサーを追加し、リピート音の高音を抑えています。純正DD-5より暗い音なので、記事では純正仕様と改造後の感想を分けています。
- BOSS DD-5と現行のDD-8はどちらがおすすめですか?
- 1990年代のデジタル音やDD-5のリバースに魅力を感じるならDD-5が候補です。機能、ステレオ入出力、修理対応、入手性を重視するなら、私は現行のDD-8をおすすめします。


