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Retro-Sonic Analog Delayレビュー|DM-2系の実力

Retro-Sonic Analog Delayの実機

Retro-Sonic Analog Delayは、BOSS DM-2を設計の出発点としながら、最大800msの長いディレイタイム、反復音を調整するTONE、LONG/SHORTの足元切替を加えたアナログディレイです。

DM-2系らしい温かく丸い反復音を持ちながら、ヴィンテージ機の再現だけでは終わっていません。短いスラップバックから長いアンビエントな残響まで、一台で実用的に使えるよう現代化されています。

先に結論
温かなBBDディレイと長いディレイタイムを両立したい人に向く一台です。SHORTは約400ms、LONGは約800msで、演奏中にフットスイッチで切り替えられます。公式ショップでは現在Out of Stockですが、Retro-Sonic自体は活動を続けており、このモデルの製造終了は確認できませんでした。
Retro-Sonic Analog Delayの実機

所有するRetro-Sonic Analog Delay。4ノブとLONG/SHORT、BYPASSの二つのフットスイッチを備えています。

Retro-Sonicはカナダのペダルメーカー

Retro-Sonicは2006年設立のカナダのペダルメーカーです。公式の沿革によると、最初の製品は1970年代後半のBOSS CE-1を目標にしたChorusでした。その反響を受け、Phaser、Delay、Overdrive、Distortion、Boost、Compressorへ製品を広げています。

同社は、歴史的なエフェクターの回路や音を出発点に、使いにくかった部分を現代向けに更新することを得意としています。公式サイトでは、カナダで設計、ハンドメイド、個別検査を行うメーカーと説明されています。

参考 Retro-Sonic About UsRetro-Sonic

BOSS DM-2を出発点にした800msアナログディレイ

Retro-Sonic公式は、Analog Delayの設計を始める際にBOSS DM-2を出発点にしたと明記しています。

BOSS DM-2のディレイタイムは20~300msです。一方、Retro-Sonic Analog Delayは2基の4096段3205系BBDを使い、最大約800msまで延長しています。DM-2の温かな方向を狙いながら、ディレイタイムは2倍以上です。

項目Retro-Sonic Analog DelayBOSS DM-2
回路2基の3205系BBDによるアナログディレイBBDアナログディレイ
ディレイタイムSHORT約400ms/LONG約800ms20~300ms
基本操作REPEAT RATE、INTENSITY、ECHOREPEAT RATE、INTENSITY、ECHO
追加操作TONE、LONG/SHORT切替なし
電源9V DCセンターマイナス、25mA9V電池/ACAアダプター

同じ回路や同じ部品をそのまま複製した製品ではありません。「DM-2クローン」というより、DM-2の操作感と音の方向を基準に、長いディレイタイムと現代的な機能を加えたモデルと考える方が正確です。

参考 Retro-Sonic Analog Delay製品情報Retro-Sonic 参考 BOSS DM-2 SpecificationsRoland

温かいが、800msまで使える

音の中心は、アナログディレイらしい柔らかな反復です。原音をそのまま繰り返すのではなく、反復するたびに高域が丸くなり、ギターの後ろへ自然に沈んでいきます。

温かさがありながら最大800msまで伸ばせる点が、このペダルの大きな魅力です。一般的なヴィンテージ系アナログディレイでは届きにくい長さまで使えるため、単音リードの奥行きだけでなく、ゆっくりしたフレーズや広い残響にも対応できます。

ただし、BBDはディレイタイムを長くするほど帯域が狭くなり、ノイズやクロック由来の粗さも目立ちやすくなります。このモデルでは信号のフィルタリングに加え、TONEで反復音の高域を調整できます。最長設定の質感も欠点として消すのではなく、暗くにじむアナログディレイの個性として使えます。

アナログディレイの選び方や現行機との違いはこちらで比較しています。

4ノブとLONG/SHORTの使い方

操作役割
REPEAT RATEディレイタイム。時計回りで短くなる
INTENSITY反復回数。上げると自己発振へ近づく
ECHOディレイ音の音量
TONE反復音の高域を調整し、暗さと柔らかさを変える
LONG/SHORT約800msと約400msのレンジを足元で切り替える
BYPASSエフェクトのオン/オフ。トゥルーバイパス

短い残響を作るならSHORTにして、ECHOとINTENSITYを低めから始めます。リードへ奥行きを足す場合はLONGへ切り替え、REPEAT RATEで曲のテンポへ合わせ、TONEで反復音をアンプの後ろへ引っ込めます。

LONG/SHORTをフットスイッチで切り替えられるため、同じREPEAT RATE位置でも二つの時間帯を使い分けられます。細かなテンポ同期はできませんが、スラップバックと長いディレイを一台で切り替えたいときに便利です。

内部はCoolaudio V3205Dを使ったBBD構成

Retro-Sonic Analog Delayの内部基板

Retro-Sonic Analog Delayの内部基板。BBD、クロックドライバー、コンパンダー、調整用トリマーが実装されています。

Retro-Sonic Analog Delayに搭載されたCoolaudio V3205D

所有個体で確認できたCoolaudio V3205D。4096段のBBDです。公式仕様では3205系BBDを2基使用します。

所有個体のBBDには、Coolaudio V3205Dの印字があります。Retro-Sonic公式も、アナログディレイ回路に2基の3205 BBDを使用すると説明しています。

BOSS公式のDM-2解説では、DM-2の中核部品としてMN3005とMN3101が挙げられています。このRetro-Sonicは同じ型番・メーカーのチップを使う再現機ではなく、Coolaudio製3205系BBDで長いディレイタイムを実現した別設計です。

ヴィンテージBBDが入手できなかったためV3205Dを選んだのか、コストや供給安定性、800ms化を優先したのかは、公式資料からは確認できません。部品選定の理由は推測せず、搭載部品と公称仕様を分けて見る必要があります。

参考 BOSS DM-2のBBD回路解説BOSS Articles

V3102DはBBDを動かすクロックドライバー

Retro-Sonic Analog Delayに搭載されたCoolaudio V3102D

基板上のCoolaudio V3102D。V3205Dへクロックを供給するドライバーです。

もう一つ接写で確認できるCoolaudio V3102Dは、音声を蓄えて遅らせるBBDそのものではありません。V3205Dを動かすためのクロック信号を作るドライバーです。

REPEAT RATEを動かすとクロック周期が変わり、BBDを通過する時間が変わります。長いディレイへ設定したときに高域が落ち、質感が粗くなるのは、アナログBBDディレイの仕組みと深く関係しています。

参考 V3205D/V3205SDデータシートCoolaudio 参考 V3102データシートCoolaudio

新品を見かけないが、メーカー終了ではない

Retro-Sonic Analog Delayは国内の新品流通で見かけにくくなっています。2026年9月3日時点で、メーカー公式ページには249米ドルで掲載されていますが、公式ショップの表示はOut of Stockです。

一方、Retro-Sonicの公式サイトではChorus、Flanger、Phaserなど他製品の販売が続いています。そのため、メーカー自体が製作をやめたとは判断できません。また、Analog Delayについても公式には「Discontinued」と書かれていないため、生産終了ではなく一時的な欠品の可能性があります。

新品が必要なら公式ショップの在庫復活を確認し、すぐ必要なら国内外の中古在庫を探すことになります。中古ではLONG/SHORTとBYPASSの両スイッチ、INTENSITYを上げたときの発振、長い設定での過度なノイズ、二つの出力を確認したいところです。

Retro-Sonic Analog Delayが向いている人

  • DM-2系の温かな反復音が好きな人
  • 400msを超えるアナログディレイが必要な人
  • スラップバックと長いディレイを足元で切り替えたい人
  • 反復音の暗さをTONEで調整したい人
  • タップテンポやプリセットより、BBDの質感を重視する人

反対に、曲ごとのテンポへ正確に同期したい人、複数の設定を保存したい人、クリアな反復を長時間保ちたい人にはデジタルディレイの方が向いています。

ディレイの種類と基本的な選び方はこちらでも解説しています。

まとめ

Retro-Sonic Analog Delayは、BOSS DM-2を出発点にしながら、2基の3205系BBD、最大800ms、TONE、LONG/SHORT切替を加えたアナログディレイです。

温かく暗い反復音はヴィンテージ系ですが、約400msと約800msを足元で切り替えられる点は実用的です。DM-2の再現だけを狙ったクローンではなく、名機の良さを残しながら現代の演奏へ使いやすく広げたRetro-Sonicらしいモデルだと思います。

所有個体ではCoolaudio V3205DとV3102Dを確認できました。オリジナルDM-2と同じチップではありませんが、部品の違いを欠点と決めつける必要はありません。長いディレイタイムと温かな反復音を両立するための、別の完成形として楽しめる一台です。

FAQ

Retro-Sonic Analog DelayはBOSS DM-2のクローンですか?
Retro-Sonic公式はDM-2を設計の出発点にしたと説明しています。ただし、2基の3205系BBD、最大800ms、TONE、LONG/SHORT切替を備え、同じ回路や部品をそのまま複製したモデルではありません。
最大ディレイタイムは何msですか?
LONGで約800ms、SHORTで約400msです。フットスイッチで二つのレンジを切り替えられます。
どのBBDチップを使っていますか?
メーカー仕様は2基の3205系BBDです。写真の所有個体ではCoolaudio V3205Dを確認でき、クロックドライバーにはV3102Dが使われています。
Retro-Sonicは活動を終了したメーカーですか?
終了していません。公式サイトでは現在も他のペダルが販売されています。Analog DelayはOut of Stockですが、生産終了とは明記されていません。
電源は何Vですか?
9V DCセンターマイナスで、メーカー公称の消費電流は25mAです。電源アダプターは付属しません。