エレキギター機材知恵袋を開設しました!質問募集中!

MXR Distortion IIヴィンテージレビュー|艶のある音と特殊な4ノブ

4ノブと直出し電源ケーブルを備えたヴィンテージMXR Distortion II

MXR Distortion IIは、名前からDistortion+の発展型を想像しやすいペダルです。しかし、実際の音も回路も別物です。

Distortion+が乾いて荒いファズ寄りの歪みなのに対し、Distortion IIは艶があり、音の芯を残したまま滑らかにドライブします。100Vのコンセントへ直接つないだ状態でも十分に良い音で、単体の歪みだけでなく、常時ONのプリアンプとしても使えると思います。

一方で、電池駆動はできません。ケースから伸びた電源ケーブルをコンセントへ直接差し込む、内蔵トランス式です。アメリカ向けの117~120V仕様なので、日本の100Vで本来の動作条件へ近づけるなら、100V→120Vのステップアップトランスの使用をおすすめします。ただし、古い電源コードと内部トランスを持つ機材なので、安全確認をせずに通電するのは避けるべきです。

先に結論
艶があり、今の感覚ではオーバードライブに近いヴィンテージ・ペダルです。独特なRESONANCEとFILTERは面白く、歪みの主役にもプリアンプにもなります。購入時は音以前に、117~120V仕様、電源コード、トランス、アースと絶縁状態を確認してください。
4ノブと直出し電源ケーブルを備えたヴィンテージMXR Distortion II

所有するヴィンテージMXR Distortion II。DRIVE、RESONANCE、FILTER、OUTPUTの4ノブを備え、ケースから電源ケーブルが直接伸びています。

Distortion+とは音も設計も別物

同じマスタード色の筐体に「distortion」と書かれていますが、Distortion+の後継音を期待すると驚きます。

先日紹介したDistortion+は、私には厚みの少ないFuzz Faceのように聞こえました。対してDistortion IIは、歪ませても表面に艶があり、コードの響きが極端に痩せません。荒さで押すというより、アンプが自然に飽和したような滑らかさがあります。

1981年のMXR広告では、Distortion IIの音を次のように説明していました。

“warm sound with incredibly smooth and elastic sustain”

日本語にすると「非常に滑らかで弾力のあるサステインを備えた、温かい音」です。広告表現ではありますが、所有個体で感じる艶と滑らかさには通じるものがあります。

参考 1981年のMXR Distortion II広告(英語・PDF)World Radio History

現在の感覚ではオーバードライブに近い

製品名はDistortion IIですが、私が受ける印象は現代のオーバードライブに近いものです。DRIVEを抑えると音を大きく崩さずに艶と押し出しを加えられ、OUTPUTでアンプの入力段も押せます。

当時オーバードライブという概念がなかったわけではありません。BOSS OD-1 OverDriveは1977年に登場しています。ただし、歪みの分類や名称が現在ほど整理されていなかった時代です。MXRが「Distortion」と名付けたこの音を、現在の耳でオーバードライブやプリアンプとして捉えるのは不自然ではありません。

参考 1977年に登場したBOSS OD-1の公式ヒストリーBOSS公式

4つのノブは単純なGain・Bass・Trebleではない

コントロールは左から次の4つです。

  • DRIVE:歪みとサステインを増やす
  • RESONANCE:低域の迫力を加える
  • FILTER:高域成分と歪みの滑らかさを調整する
  • OUTPUT:全体の出力音量を決める

面白いのはRESONANCEとFILTERです。一般的な3バンドEQのBASSとTREBLEではなく、歪み方そのものと絡みながら効きます。片方を動かすと、もう片方の適正位置まで変わって聞こえます。

当時の広告は、RESONANCEを「大音量で鳴るスピーカーキャビネットのような低域のパンチ」、FILTERを「上側の倍音を整えて歪みを滑らかにするもの」と説明しています。単純な音質補正ではなく、アンプとキャビネットを含めた鳴り方へ近づけようとした設計です。

最初は次の位置から始めると、各ノブの役割を把握しやすくなります。

1. DRIVEを10時

2. RESONANCEを最小

3. FILTERを12時

4. OUTPUTをバイパス時と同程度

5. RESONANCEを少しずつ上げ、低域が膨らみすぎる直前で止める

6. FILTERで高域の艶と丸さを調整する

RESONANCEを上げすぎると、アンプやキャビネットによっては低域が前へ出すぎます。固定の正解はなく、ギターとアンプに合わせて2つのノブを行き来する必要があります。この相互作用が、特殊で面白い部分です。

117~120V仕様を日本の100Vで使う

この所有個体はアメリカ製で、117~120V程度の電源を前提とした仕様です。日本の一般家庭は100Vなので、そのまま接続すると内蔵トランスの二次側電圧も設計値より下がります。

100Vでも音は良く、使用自体が直ちに不可能になるわけではありません。ただし、電圧レギュレーターへ十分な入力電圧が届かない場合は、安定化された電圧を維持できず、ヘッドルームや動作が本来の条件と変わる可能性があります。実際にどの程度変わるかは、個体のトランスと負荷、壁側電圧を測らなければ決められません。

日本の家庭用電源が基本的に100Vであることは、経済産業省の資料でも確認できます。

参考 日本の家庭用商用電圧に関する資料(PDF)経済産業省

本来の条件へ近づけたい場合は、機器の定格と消費電力に合う100V→120Vのステップアップトランスの使用をおすすめします。ただし、先に次を確認してください。

  • 電源コードの硬化、亀裂、補修跡
  • プラグとケーブル引き出し部の緩み
  • 内部トランスの異音、発熱、焦げ跡
  • ヒューズ、アース、絶縁状態
  • 本体に記載された定格電圧と周波数

古いAC直結機材の改造には感電リスクがあります
ケース内にはコンセントの電圧が直接入ります。通電中に開けないでください。電源コード、トランス、一次側配線の交換や測定は、古いAC機器を扱える技術者へ依頼するのが安全です。

9V電源化は理論上可能でも、単純な追加改造ではない

内蔵トランスと多数のICや抵抗を使ったMXR Distortion IIの内部基板

所有個体の内部。複数のIC、大型抵抗、電源レギュレーター、基板下の内蔵トランスが確認できます。コンパクトなDistortion+より大幅に部品点数が多い構成です。

エフェクト回路へコンセントの電圧がそのまま流れているわけではありません。内蔵トランスで降圧し、整流・平滑・安定化してから回路へ供給しています。公開されている回路資料では15Vレギュレーターを使う構成とされ、18~24Vの直流をレギュレーター手前へ供給する改造例があります。

そのため、9Vからチャージポンプや昇圧回路で必要な電圧を作り、内蔵トランスを切り離す方法は理論上考えられます。ただし、9Vをつないで部品を1つ追加すれば済む話ではありません。

  • 15Vを安定して作るための入力電圧
  • 回路が必要とする電流
  • 昇圧回路のスイッチングノイズ
  • グラウンドと極性
  • 内蔵AC一次側の完全な切り離しと絶縁

これらを確認する必要があります。TIのLM7815資料では15V出力品が示され、代表値として約2Vのドロップアウトがあります。9Vのままでは同じ15V動作にはならないため、9V化するなら電源部の再設計として扱うべきです。

参考 LM7815を含むLM7800シリーズのデータシート(英語・PDF)Texas Instruments公式

私はクローン製作も考えましたが、この規模の回路と電源部を作る需要は多くないと判断し、断念しました。安全な外部DC電源仕様へ置き換えるなら実用性は上がりますが、オリジナルと同じ電源条件やノイズまで再現するには相応の検証が必要です。

当時としては高級なプロ向けペダルだったと考えられる

内部を見ると、Distortion+とは部品点数がまるで違います。複数のIC、大型の抵抗、電源の整流・平滑・安定化回路、内蔵トランスまで1つの筐体に収めています。

Guitar WorldのMXR史では、1980年代初頭のDistortion II、Limiter、Stereo Chorusを大型AC駆動ペダルとして紹介し、プロ仕様であった一方、日本製のコンパクトペダルより高価だったと説明しています。写真から受ける作りの良さと、当時の市場で高級品だったという見方は一致します。

参考 MXRの歴史と1980年代AC駆動モデル(英語)Guitar World

高価な部品を使えば必ず良い音になるわけではありません。しかしDistortion IIの場合は、4つのコントロールと高い動作電圧を成立させるために、実際に複雑な回路と電源が必要です。見た目だけを豪華にした構成ではありません。

西川進氏が高校時代から愛用

MXR Distortion IIを長年愛用する日本人ギタリストとして、西川進さんが知られています。

イシバシ楽器のインタビューで、西川さんはMXR Distortion IIを高校生の頃から使い、さまざまな機材を試しても「最終的にはここに戻ってくる」と語っています。単なる一時的な使用例ではなく、長年の中心機材です。

参考 西川進氏のMXR Distortion II使用インタビューイシバシ楽器

癖の強いRESONANCEとFILTERを持ちながら、長く戻ってこられる基本音がある。所有個体を弾くと、その理由は分かる気がします。

再販されず、現行品では代わりを探しにくい

2026年9月時点のJim Dunlop公式MXR製品一覧にはDistortion+やDistortion IIIはありますが、Distortion IIは掲載されていません。少なくとも現行の正規製品としては確認できず、基本的にはヴィンテージ個体を探すモデルです。

参考 MXR現行製品一覧(英語)Jim Dunlop公式

クローンが少ない理由も想像できます。回路が複雑で、4ノブの相互作用まで再現する必要があり、オリジナルの知名度はDistortion+ほど高くありません。作る側の負担に対して需要を読みづらいペダルです。

だからこそ、Distortion+とは違う艶のあるドライブや、RESONANCEによるキャビネットのような押し出しを求める人には、代わりが見つかりにくい魅力があります。

音とノブの効きを動画で確認

Distortion IIの基本音と4つのノブの効きを確認できる実演です。所有個体とは電源条件、ギター、アンプが異なるため、音色の方向を知る参考として掲載します。

まとめ

MXR Distortion IIは、Distortion+の単純な上位版ではありません。艶があり、滑らかで、現在の感覚ではオーバードライブやプリアンプとして使いやすいペダルです。100Vで鳴らしても十分に良い音がします。

RESONANCEとFILTERは、一般的なBASSとTREBLEより癖があります。その代わり、アンプやスピーカーまで含めたような立体的な音作りができます。メインのドライブとしても、常時ONで音へ艶を加える用途でも使えます。

最大の注意点は電源です。電池は使えず、117~120V仕様の古いAC直結機材なので、購入時はステップアップの要否だけでなく、コード、トランス、ヒューズ、絶縁まで確認してください。9V化も考えられますが、簡単なチャージポンプ追加ではなく、安全を含めた電源部の再設計です。

Distortion+の乾いた荒さが合わなかった人でも、このDistortion IIは試す価値があります。名前と色は似ていますが、音の狙いはまったく別です。

ほかの定番ディストーションと比べたい場合は、こちらの記事も参考にしてください。

FAQ

MXR Distortion IIは再販されていますか?
2026年9月時点のJim Dunlop公式MXR製品一覧には掲載されていません。基本的には中古市場でヴィンテージ個体を探すモデルです。
MXR Distortion IIは電池で動きますか?
所有個体は電池駆動に対応せず、ケースから伸びた電源ケーブルをコンセントへ接続します。内蔵トランス式なので、購入時は電源コードと絶縁状態も確認してください。
日本の100VでMXR Distortion IIを使えますか?
所有個体は100Vでも動作し、良い音がします。ただし117~120V前提の個体では内部電圧が設計値より下がる可能性があります。本体の定格を確認し、容量の合う100V→120Vステップアップトランスの使用をおすすめします。
MXR Distortion IIを9V電源化できますか?
昇圧して必要な電圧を作る方法は理論上考えられますが、電流容量、ノイズ、極性、内蔵AC一次側の切り離しと絶縁が必要です。感電リスクがあるため、古いAC機器を扱える技術者へ依頼してください。
MXR Distortion IIとDistortion+の音は似ていますか?
所有者の印象では似ていません。Distortion+は乾いて荒いファズ寄り、Distortion IIは艶と滑らかさのあるオーバードライブ寄りの音です。回路構成も異なります。
MXR Distortion IIを使用している日本人ギタリストは誰ですか?
西川進氏です。イシバシ楽器のインタビューで、高校生の頃から使い、ほかの機材を試しても最終的にDistortion IIへ戻ると語っています。