Ibanez MT10 Mostortionは、軽いクランチから中程度の歪みまでを、Bass/Middle/Trebleの3バンドEQで細かく整えられるオーバードライブ/ディストーションです。TS系より中域の位置を自由に動かしやすく、アンプやギターに合わせて低域と高域を補正できる点が実機で使う一番の強みです。
MT10の「MOS-FET」はCA3260のMOSFET入力段と関係しますが、MOSFETをクリッピング素子に使う一般的な「MOSFETクリッピング」と同じ意味ではありません。音を判断するときは部品名だけでなく、3バンドEQと実際のゲイン幅を見てください。
以下は、手元のMT10をFender Deluxe Reverbへ接続したデモです。ギターとアンプ側の条件でも音は変わるため、歪み量とEQの効き方を確認する参考として聴いてください。
Ibanez MT10 Mostortionの仕様
| 項目 | 公式カタログの記載 | 実機で見るポイント |
|---|---|---|
| 効果 | Overdrive/Distortion/Equalizing | 軽い歪みから中程度の歪みまで調整 |
| 最大ゲイン | +45dB | アンプを押す用途と単体の歪みの両方を試せる |
| EQ | 3 Band EQ | Bass/Middle/Trebleを個別に調整 |
| コントロール | Distortion/Bass/Middle/Treble/Level | 5ノブで音量・歪み・帯域を分けて設定 |
| 消費電流 | 12mA | 古い個体は電池端子や電源周辺も確認 |
Ibanezの1990年Sound Effectsカタログでは、MT10を「MOSTORTION MOS-FET DISTORTION」と掲載し、オーバードライブしたヴィンテージアンプの音を狙うU.S. designedの歪みとして説明しています。
参考
1990 Ibanez Sound Effects CatalogIbanez公式カタログ

実機で感じる音の特徴
クランチからミドルゲインまで使いやすい
手元の個体では、Distortionを低くするとピッキングの輪郭を残したクランチ、高くするとコードの厚みを保った中程度の歪みになります。強く歪ませることより、アンプとギターに合わせて歪みと帯域を整える使い方が向いています。
3バンドEQがMT10の中心
Bassを上げると低域の量感、Middleを上げると単音の押し出し、Trebleを上げるとアタックが強くなります。最初は3つとも12時から始め、アンプで不足する帯域だけを動かすと、MT10自体の歪み方を把握しやすいです。
- クリーン寄り: Distortionを低め、Levelを上げ、EQは12時付近
- ブルース/ロック: Distortionを12〜2時、Middleを少し上げる
- 太いコード: Bassを上げすぎず、MiddleとTrebleで輪郭を戻す
CA3260と「MOS-FET」の意味
実機にはCA3260が搭載されています。Renesasのデータシートでは、CA3260はMOSFET入力段とCMOS出力段を持つデュアルBiMOSオペアンプです。MOSFETは入力段に使われており、出力段はCMOSです。
したがって、MT10を「MOSFETクリッピングのペダル」と断定するのは正確ではありません。Ibanez公式カタログは回路をMOS-FET Distortionと表現していますが、実機の音はCA3260だけでなく、ゲイン回路、3バンドEQ、周辺部品の組み合わせで決まります。
参考
CA3260/CA3260A DatasheetRenesas公式

CA3260はMOSFET入力段とCMOS出力段を持つデュアルBiMOSオペアンプです。


中古で購入するときの確認点
MT10は現行品ではないため、部品名だけでなく個体の動作状態を優先して確認してください。MOSFETだから特別に衝撃や湿気へ弱いというより、古いペダル全般としてスイッチ、ジャック、ポット、電池端子、電解コンデンサの状態を見る方が実用的です。
- 全ノブを動かし、音切れや大きなガリがないか
- フットスイッチのON/OFFが安定するか
- 電池端子に液漏れや腐食がないか
- CA3260を含む内部部品が交換されているか
- 価格だけでなく返品条件と修理対応を確認できるか
現行オーバードライブとも比較する
MT10の希少性より、クランチ、3バンドEQ、アンプとの相性を重視する場合は、現行の定番オーバードライブとも比較してください。
CA3260と一般的な4558系など、オペアンプの種類と互換性を確認したい場合はこちらです。
まとめ
Ibanez MT10 Mostortionは、CA3260を使う回路だけでなく、Distortionと3バンドEQを分けて調整できる点に価値があるペダルです。実機では、軽いクランチから中程度の歪みを作り、アンプごとにBass/Middle/Trebleを補正する使い方が合います。
中古で選ぶ場合は「MOS-FET」という名称や相場だけで判断せず、5つのコントロールが正常に働くか、内部の交換歴があるか、返品・修理条件を確認してください。

