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Ibanez MT10 Mostortion|Mosfet IC使用のレアオーバードライブ

はじめに

Ibanez MT10(通称「Mostortion」)は、1990年代初期に発売された貴重なオーバードライブ/ディストーション・ペダルです。その生産台数は決して多くなかったため、現在では入手困難なモデルとして知られています。
今回は、このMT10の歴史や特徴、サウンドの傾向、そして中古市場での人気や評価について紹介します。

↓の動画は私が所有するMT10をデラックスリバーブに繋いで鳴らしてみたデモ動画です。よかったら参考にしてください。


1. Ibanez MT10とは?

Ibanez MT10 Mostortionは、1990年代初頭にIbanezの「10シリーズ (Power Series)」の一つとして発売されました。名前のとおりMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)という半導体を使った回路が大きな特徴で、チューブライクな歪みを生み出すことを狙ったエフェクターです。
一見すると、とてもコンパクトでシンプルに見えますが、内部構造はかなり凝っていて、3バンドEQ(Treble / Middle / Bass)を備えていることもあって幅広い音作りが可能です。


1-1. 発売時期と背景

MT10はおよそ1990年前後から数年程度生産されたと言われています。Ibanezの定番オーバードライブ「TS系」よりも幅広いサウンドを目指し、MOSFETならではの独特の倍音やタッチ感を活かす狙いがありました。ですが、当時の日本国内外の市場ではそこまで大ヒットとはならず、比較的少量の生産にとどまったようです。


2. 特徴とサウンド傾向

MT10が人気を集めている最大の理由は、その“MOSFETならではの歪み”にあります。チューブアンプに近い質感の倍音とコンプレッション感が得られながら、クランチから中ゲインくらいまで対応できる柔軟さが魅力です。

2-1. MOSFETによるチューブライクな歪み

MOSFETは真空管(チューブ)と似たような特性を持つとされ、独特のタッチレスポンスや倍音が出やすいといわれています。TS系ほど中域が強烈に押し出されるわけではなく、クリーン~クランチ寄りに使うときに深みのある倍音が出やすいという特長があります。

CA3260と記載のあるICがMosfetベースのオペアンプ。正確にはインプットがMosfetでアウトプットがCMOS。

2-2. 3バンドEQによる柔軟な音作り

MT10はコンパクトな筐体ながら、Treble / Middle / Bassそれぞれの帯域を細かくブースト&カットできる3バンドEQを搭載しています。ここがMT10の大きな魅力で、ジャンルやギター、アンプに合わせて多彩なセッティングが可能です。
たとえば、ベースをしっかり持ち上げて図太いロックサウンドを作ったり、トレブルを上げてカントリー系の歯切れの良いサウンドに仕上げたりと、音作りの自由度がかなり高いです。


3. どんなジャンルに合うのか?

歪みの量としては、いわゆる“クランチ~ミドルゲイン”で使いやすい傾向があります。カントリーやブルース、軽めのロック、あるいはポップスでも活躍する場面が多いとされています。

3-1. ナッシュビル系ギタリストに支持される理由

アメリカ・ナッシュビルのセッションギタリストたちの間で評判が広がったことは有名です。ブレント・メイソン(Brent Mason)など、カントリー系の一流ギタリストが愛用していたことから、その存在が徐々に知られるようになりました。カントリーではチキンピッキングなど、アタックをしっかり残したプレイが求められるため、MT10の輪郭のある歪みと3バンドEQがとても重宝されたようです。


4. 中古市場や価格動向

現在MT10は生産終了品のため、新品で入手するのは困難です。それゆえに、中古市場では希少性から価格が高騰する傾向があります。

4-1. 中古価格の高騰

海外のオークションサイトやReverbなどでは、200~600ドル程度、日本国内ではコンディションによっては5万円以上になることもあります。レア度が増すにつれ、今後も価格が上がる可能性がありますので、購入を検討される方は相場をよくご確認ください。


5. 注意点とメンテナンス

ヴィンテージエフェクターのひとつに数えられるようになったMT10は、メンテナンス面でも少し気をつけたいポイントがあります。

5-1. MOSFET回路の繊細さ

MOSFET回路はパーツそのものが繊細ですので、落下などの強い衝撃や湿気、ホコリなどには注意が必要です。ヴィンテージ機材ですので、保管環境やメンテナンスには気を配ってあげると安心です。

5-2. 部品の入手困難

生産終了から長期間が経過しているため、もし内部パーツやオペアンプが故障すると、同じ仕様のパーツが手に入りにくい場合があります。修理を依頼する際は、楽器店やエフェクター専門のリペアショップに相談してみましょう。


まとめ

Ibanez MT10 Mostortionは、MOSFET回路による独特のチューブライクな歪みと、3バンドEQの柔軟な音作りが光る貴重なエフェクターです。特にクランチ~中ゲイン帯のサウンドで多くのギタリストから高い評価を受けており、カントリーやブルース、ロックなど幅広いジャンルで愛用されています。
しかしながら、生産終了品で中古価格が高騰しているため、購入には十分なリサーチが必要です。もし興味はあるものの高価すぎると感じる場合は、ブティックメーカーや個人ビルダーによるクローンモデルや、同系統の現行品も検討してみると良いでしょう。

少しでも皆さんのエフェクター選びの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。購入を考えている方は、ぜひ中古相場やクローンペダルの情報を含めて検討してみてください。