長岡亮介(浮雲)の使用機材を徹底解説|ギター・アンプ・エフェクターから紐解くサウンドの核
長岡亮介氏のライブやレコーディングで使用されてきたギター、アンプ、エフェクターを網羅的に調査し、そのサウンドメイク術をわかりやすく整理しました。この記事を読めば、あの独特なサウンドの秘密を機材の側面から深く理解できます。
長岡亮介とは
ペトロールズでギター&ボーカルを務め、東京事変では「浮雲」名義でギタリストとして参加。卓越したカッティング技術と絶妙な「間」の感覚、そして音の抜き差しを活かしたプレイが持ち味です。ファンク、ソウル、ロックといったジャンルを自在に横断しつつ、エフェクターは必要最小限の構成で的確に使いこなすスタイルで知られています。
浮雲とは
「浮雲」は、東京事変で活動する際の名義です。バンドアンサンブルの中で他の楽器と音がぶつからないよう巧みにスペースを作り、ワウやトレモロで絶妙なアクセントを加えるのが特徴。ボーカルを邪魔することなく、楽曲に色気を与えるギタースタイルで知られています。
使用ギターの傾向
彼のサウンドの根幹をなすのは、ユニークながらも実用的なギターの数々です。
Songbird Guitar “テレファントム”
長岡氏の代名詞とも言える一本。ヘッドの鳥のインレイが印象的なこのギターは、ルシアーの戸田真一氏が製作するSongbird Guitarによるものです。テレキャスターを基にしながらも、P-90タイプのピックアップやビグスビーアームを搭載するなど、独自の仕様が施されています。
RS Guitarworks
アメリカの工房で、ヴィンテージライクなサウンドとエイジド加工に定評があります。長岡氏は複数のモデルを愛用しており、特にテレキャスターやストラトキャスタータイプの使用が目立ちます。
https://www.digimart.net/search?brandId=19120
Gibson ES-335
セミアコースティックギターの定番モデル。甘く豊かな響きは、ジャジーなアプローチや歌もののバッキングで活躍します。ペトロールズの楽曲でもそのサウンドを聴くことができます。
Fender Stratocaster / Telecaster
キャリアを通じて、フェンダー製のギターも多数使用しています。特にヴィンテージのストラトキャスターやテレキャスターを所有しており、楽曲やプロジェクトに応じて使い分けています。
使用アンプの傾向
ギター本来の鳴りを活かす、上質なクリーンサウンドを持つアンプを好む傾向にあります。
Fender Deluxe Reverb
フェンダーアンプの定番であり、多くのギタリストに愛されるモデル。艶のあるクリーントーンとナチュラルなスプリングリバーブは、彼のサウンドの基準の一つと言えます。
Dr. Z Amplification
アメリカのブティックアンプメーカー。レスポンスが速く、ピッキングニュアンスを忠実に再現するモデルを愛用していることで知られます。
Two-Rock
最高峰のブティックアンプとして名高く、豊かな倍音と、歪ませても芯が潰れないサウンドが特徴です。こちらもクリーンサウンドの評価が非常に高いアンプです。
Roland JC-120 Jazz Chorus
ソリッドステートアンプの世界的名機。クリアで硬質なクリーントーンが持ち味で、エフェクターのノリが良いことでも知られています。
サウンドメイクが参考になる楽曲
東京事変「OSCA」:鋭利なフレージングとワウペダルによる表現豊かなニュアンスが際立つ代表曲です。
ペトロールズ「Fuel」:クリーンからクランチへと変化するダイナミクス、ディレイによる巧みな空間演出が参考になります。
ペトロールズ「Talassa」:クリーンサウンドのレイヤーに、リバーブやディレイで深みを加えていく繊細なアプローチが学べます。
長岡亮介の使用エフェクター
彼の足元は、楽曲に応じて少数精鋭のペダルが並びます。ここでは、これまで使用が確認されている主なエフェクターをカテゴリー別に紹介します。
機種名 | メーカー名 | カテゴリー |
---|---|---|
歪み系 | ||
Phantom fx Hizumi Station | Phantom fx | オーバードライブ/ファズ |
Ibanez TS808 Tube Screamer | Ibanez | オーバードライブ |
Roger Mayer Voodoo-1 | Roger Mayer | ディストーション |
Union Tube & Transistor Tsar Bomba | Union Tube & Transistor | ファズ |
Human Gear VIVACE | Human Gear | オーバードライブ |
H.A.O. Rumble MOD | H.A.O. | オーバードライブ |
BOSS “Distortion” 系 (DS-1/DS-2) | BOSS | ディストーション |
Sobbat Drive Breaker DB-1 | Sobbat | オーバードライブ |
ワウペダル | ||
Carl Martin 2 Wah | Carl Martin | ワウ |
Dunlop Cry Baby GCB95 | Dunlop | ワウ |
VOX V847系 | VOX | ワウ |
空間系・モジュレーション系 | ||
BOSS DD-5 (Digital Delay) | BOSS | ディレイ |
Line6 DL4 | Line 6 | ディレイ |
Strymon blueSky (Reverb) | Strymon | リバーブ |
Providence Anadime Chorus | Providence | コーラス |
Guyatone VT-3 (Vintage Tremolo) | Guyatone | トレモロ |
その他 | ||
Xotic RC Booster | Xotic | ブースター |
BOSS LS-2 (Line Selector) | BOSS | ラインセレクター |
BOSS TU-2/TU-3 (Chromatic Tuner) | BOSS | チューナー |
歪み系ペダル
Phantom fx Hizumi Station
ローゲインOD/オーバードライブ/ファズを1台で切り替え可能なマルチステージ・ディストーション。楽曲内で歪みのキャラクターを瞬時に切り替えるための心臓部として機能します。音量ではなく質感の変化で楽曲の展開を作るのに貢献する一台です。
Ibanez TS808 Tube Screamer
オーバードライブの代名詞的存在。単体での使用はもちろん、アンプや他の歪みペダルをブーストし、中音域に艶とコシを加える目的で使用されることが多いようです。ギターソロなどで音を一段前に出したいときに重宝します。
Roger Mayer Voodoo-1(Distortion)
チューブアンプ特有のコンプレッション感と豊かなサステインを狙って設計された、英国製のディストーション。ゲインは歪み始める直前に設定するのが、バンドアンサンブル内での良好な音抜けを確保するコツです。
Union Tube & Transistor Tsar Bomba(Fuzz)
ロシアンMuff系の回路を基にしたファズペダル。強く歪ませてもサウンドの輪郭が飽和しすぎない点が長所。これにより、他の楽器との音域の棲み分けがしやすくなります。
Human Gear VIVACE
国産ハンドメイドエフェクターブランドによるダンブル系オーバードライブ。ピッキングへの追従性が非常に高く、手元のボリューム操作でクリーンからドライブサウンドまでを自在にコントロールできるのが魅力です。
H.A.O. Rumble MOD
こちらも国産ブランドで、TS系を基にしながらもより広いレンジと高い解像度を持つオーバードライブ。コードの分離感が良く、カッティングプレイでも音が潰れにくいのが特徴です。
BOSS “Distortion” 系 (DS-1/DS-2)
多くのプロに信頼されるBOSSの定番ディストーション。使用するアンプやギターの特性に応じて、サウンドに不足している帯域を補うような運用が基本。DS-1やDS-2を使用しているそうです。
Sobbat Drive Breaker DB-1
図太くコシのあるサウンドが特徴の国産オーバードライブ。ゲインの幅が広く、クランチからハードなドライブまで対応可能。特にシングルコイルとの相性が良いとされています。
ワウペダル
Carl Martin 2 Wah
2系統のサウンドモードと3段階のQ(ピークの鋭さ)設定が可能な多機能ワウ。可変域が広いため、ペダルを大きく操作する必要がなく、細かなアクセント付けでファンクのニュアンスを生み出せます。
Dunlop Cry Baby GCB95
ワウペダルの代名詞。よりロックテイストの硬質なピーク感が欲しい場合の選択肢。踏み始めから中域にかけての粘りのあるサウンドが特徴です。
VOX V847系
60年代の設計思想を継承し、スムーズな効き方が特徴のワウ。ペダルを“開けきらない”状態で使うと非常に心地よい効果が得られ、サウンドに艶や色気を加えるのに適しています。
空間系・モジュレーション系
BOSS DD-5(Digital Delay)
楽曲のテンポにディレイを正確に同期させる際に重宝するデジタルディレイ。DD-5はすでにだいぶ古いモデルで、最新版はDD-8です。本当に長岡亮介氏が好きで同じものを使いたいという理由以外でアレば最新モデルを買ったほうが良いです。デジタル系のエフェクターは。
Line6 DL4
多彩なディレイモードとルーパー機能を搭載した名機。特にリバースディレイやテープエコーのシミュレーションは、独特の浮遊感を生み出すのに貢献します。
Strymon blueSky(Reverb)
高品位なリバーブペダル。原音を邪魔せずに自然な「奥行き」を加えられるのが魅力。トーンをやや暗めに設定することで、ボーカルの帯域と干渉せずに空間を演出できます。最新版はV2です。
Providence Anadime Chorus
クリアで暖かみのあるサウンドが特徴のアナログコーラス。深くかけても音が揺れすぎず、アルペジオやカッティングに爽やかな彩りを加えます。
Guyatone VT-3 (Vintage Tremolo)
往年の国産ブランドによるトレモロ。揺れの深さは控えめに、周期は遅めに設定し、ストロークの隙間に「呼吸」のような揺らぎを与える使い方が効果的です。
その他
Xotic RC Booster
原音のキャラクターをほとんど変えずに音量を持ち上げるクリーンブースターの定番。ソロでの音量アップや、アンプを軽くプッシュしたいときに使用されます。
BOSS LS-2 (Line Selector)
複数のエフェクトループを切り替えたり、信号をミックスしたりできる万能ペダル。複雑なシステムを足元でスマートにコントロールするために使用されます。
BOSS TU-2/TU-3 (Chromatic Tuner)
ステージでの信頼性が非常に高いチューナー。正確なチューニングはもちろん、確実なミュートスイッチとしても機能します。
長岡亮介のエフェクター活用術 まとめ
長岡亮介(浮雲)のサウンドは、上質なクリーントーンを土台とし、ワウ/ディレイ/リバーブを最小構成で加えて音像を整え、楽曲に応じてキャラクターの異なる歪みで表情付けを行う、という設計思想が核となっています。ワウはレンジやピークを微調整できるモデルを好み、ディレイはタップテンポで正確に合わせ薄く短くかけるのがポイント。ファズやディストーションは音量差を生むためでなく、質感のレイヤーを重ねるように用い、帯域と歪みの質でダイナミクスを演出します。
サウンドメイクを試す際は、まずアンプで心地よいクリーントーンを設定することを起点に、ワウ=アクセント、ディレイ=テンポ整理、リバーブ=奥行き、という各エフェクトの役割分担を意識してみてください。歪みエフェクターはゲインを上げすぎず、レベルとミッドレンジで音を前に出すことを意識すると、彼のような「抜き差し」のニュアンスに近づけるでしょう。