はじめに:RADWIMPSのサウンドを彩る桑原彰のギター
RADWIMPSのリードギタリストとして、唯一無二の存在感を放っていた桑原彰さん。彼のギターサウンドは、ガラスの破片のように煌びやかなクリーントーンから、楽曲の情景を鮮やかに描き出す空間系エフェクト、そして芯の通ったリードトーンまで、多彩な表情を見せます。
サウンドの土台となるギター&アンプ
桑原さんのサウンドの基本は、Gibson Les paulを主軸としたギター選びにあります。アンプは、楽曲や求める音色に応じて複数のヘッドを使い分けるのが彼のスタイルです。
- Orange Rockerverb 100: 温かく濃厚なミッドレンジが特徴。
- Divided by 13 RSA 31: 解像度が高く、きらびやかなサウンド。
- Hughes & Kettner TriAmp MK III: 多彩なチャンネルを持つ万能アンプ。
ライブでは、Orangeの持つファットな中域と、Divided by 13のハイファイな質感をABYスイッチャーで同時に鳴らし、PA側でミックスするという手法がよく用いられます。これにより、太さと明瞭感を両立した立体的なサウンドが生まれるのです。
桑原彰サウンドの「三層設計」とは?
彼のサウンドは、大きく分けて3つの層で構築されているのが特徴です。
- 第一層(土台): 中低域が痩せない上質なクランチサウンド。
- 第二層(彩り): モジュレーションやピッチ系エフェクトによる独特の「揺らぎ」。
- 第三層(奥行き): ディレイを駆使した空間的な広がり。
特にディレイタイムは、クリックと完全に同期させるなど、楽曲の再現性を極限まで高めるための徹底したシステムが組まれています。
本記事の情報は、2025年7月時点のインタビューやライブ写真などの公開情報に基づいています。最新のツアーやレコーディングでは、機材構成が変更されている可能性がありますのでご了承ください。
桑原彰さんの使用エフェクター28選まとめ
① 歪み系(オーバードライブ/ブースター)
Ibanez TS808HW
メーカー説明
日本の星野楽器が世界に誇るギターブランド、Ibanez。スティーヴ・ヴァイをはじめとする数々のアーティストモデルで知られますが、その名を不動のものにしたのが、伝説のオーバードライブ「TS=チューブスクリーマー」シリーズです。
製品説明
桑原サウンドの心臓部であり、彼のボードで「常時ON」を担うペダル。厳選されたパーツを使用し、手作業で丁寧に配線されたこの特別仕様のTS808は、ギターサウンドのミッドレンジを温かくプッシュし、ピッキングに粘りを加えます。軽いクランチ設定で、アンプのポテンシャルを最大限に引き出す使い方が、あの芯のあるリードトーンの秘密です。
桑原さんが使用していたのは初期型で、現在はVer.2が流通してます。
Ibanez TS808
製品説明
ハンドワイヤード版に比べ、よりタイトで引き締まった低域が特徴の現行スタンダードモデル。クリーンなアルペジオに厚みとサスティンを加えたい時など、サウンドに絶妙な艶を与える目的で重宝されます。SRVやJohn Mayerも愛用する、歴史的オーバードライブです。
BOSS BD-2 Blues Driver
メーカー説明
ローランドが1977年に立ち上げたBOSSは、世界中のギタリストの足元を支えてきたコンパクト・エフェクターの代名詞。どんな過酷なツアーにも耐えうる堅牢な筐体と、誰にでも分かりやすい操作系で、世界的な信頼を勝ち得ています。
製品説明
まるで良質な真空管アンプをドライブさせたかのような、ピッキングの強弱にダイレクトに反応するレスポンスが最大の魅力。Gainを9時~12時あたりに設定すれば、甘くブルージーなクランチから、エッジの効いたロックサウンドまで幅広く対応します。Billie Joe Armstrong(Green Day)のボードにも長年設置されています。
Om Laboratories Sahasrara Overdrive
メーカー説明
アメリカを拠点とする、知る人ぞ知るブティック・ペダルブランド。自然な倍音成分とピッキングへの追従性を重視した設計思想で、一台一台ハンドメイドで丁寧に製作されています。
製品説明
非常にワイドレンジなPREGAINとTONEコントロールを持ち、中音域のフォーカスを自在に調整できるのが特徴。桑原さんは、主にソロ用のブースターとして、高域をわずかに強調し、サウンドに煌びやかさと抜けの良さを加えています。ナッシュビルのトップセッションマン、Tim Pierceが絶賛したことでも有名です。
JHS Pedals Moonshine v2
JHS Pedals ジェイエイチエスペダルズ エフェクター オーバードライブ Moonshine Overdrive V2 【国内正規品】
メーカー説明
JHS Pedalsは、創業者Josh Scott氏が2007年に立ち上げたブランド。既存ペダルのモディファイからキャリアをスタートし、現在ではYouTubeでの情報発信も積極的に行い、世界中のギタリストから注目を集めています。
製品説明
TS系の回路をベースに、より幅広いゲインと太いサウンドを目指して再構築された一台。桑原さんはDRIVEを1時あたり、サウンドをタイトにする「Moon」スイッチはOFFの状態で、密度のあるシャープなカッティングサウンドを作り出します。Foo FightersのChris Shiflettも使用。
Mad Professor Sweet Honey Overdrive
Mad Professor マッドプロフェッサー エフェクター オーバードライブ (New) Sweet Honey Overdrive 【国内…
メーカー説明
2002年にフィンランドで創業したMad Professorは、アンプライクなサウンドと低ノイズ設計で高い評価を得ているブランド。特にハンドワイヤードシリーズは、多くのプロギタリストから支持されています。
製品説明
ピッキングへの追従性を調整する「FOCUS」ノブがこのペダルの真髄。クリーントーンの立体感を保ったまま、絶妙なサチュレーション感を加えることができます。ブルースギタリストのAlan Nimmoがステージで多用していることでも知られています。
JHS Charlie Brown
製品説明
多くのロックサウンドの原点である、Marshall「JTM45」のサウンドを9Vで再現したペダル。耳に痛い高域が抑えられた、ウォームでウッディな質感が特徴で、英国ロック調の骨太なリフに最適です。現代の3大ギタリストの一人、John Mayerがレコーディングで試用したことでも話題になりました。
Psychederhythm 抹茶ドライヴ
メーカー説明
東京・恵比寿に工房を構えるハイエンドギター工房、Psychederhythm(サイケデリズム)。プロ・ミュージシャンからの信頼も厚く、徹底した品質管理とセットアップ、そして限定生産される美しいカラーリングが人気です。
製品説明
その名の通り、甘くまろやかながらも芯のあるミッドレンジが魅力のオーバードライブ。限定生産のため入手は困難ですが、日本のトップギタリスト佐橋佳幸氏(山下達郎バンドなど)がライブで使用するなど、その実力は折り紙付きです。
One Control Granith Grey Booster
メーカー説明
日本のLEP Internationalが、伝説的なペダルビルダーBjörn Juhl氏(BJFE)とタッグを組んで展開するブランド。小型筐体ながら高電圧で駆動させることによる、広いヘッドルームとノイズの少なさが特徴です。
製品説明
原音のキャラクターを一切変えることなく、最大+15dBまでクリーンに音量を持ち上げられるプロ品質のブースター。ギターソロで音量を持ち上げたり、アンプや後段の歪みペダルをさらにプッシュしたい場面で活躍します。
② 揺れもの系(モジュレーション)
Eventide ModFactor
メーカー説明
1971年創業のEventideは、世界初のハーモナイザー「H910」でレコーディングスタジオに革命をもたらした伝説的メーカー。そのスタジオ品質のアルゴリズムを、ギタリストの足元に届けるべく開発されたのが”Factor”シリーズです。
製品説明
コーラス、フランジャー、フェイザー、トレモロなど10種類のモジュレーション・エフェクトを網羅したプロセッサー。MIDIで制御することで、複雑な設定を楽曲ごとに瞬時に呼び出すことができ、桑原さんの緻密なサウンドスケープ構築に不可欠な一台です。John Petrucci(Dream Theater)も愛用。
BOSS BF-2 Flanger
製品説明
飛行機のジェットサウンドのような強烈な効果から、アルペジオを彩る爽やかなコーラスのような揺れまで、幅広いサウンドメイクが可能なアナログ・フランジャーの定番機。John Frusciante(RHCP)のサウンドに欠かせないペダルとしても有名です。
現在は最新版のBF-3が流通してます。
BOSS TR-2 Tremolo
製品説明
オプチカル(光学式)回路による、ヴィンテージアンプに搭載されているような温かく滑らかな音量変化が特徴のトレモロ。WAVEノブで揺れの波形を三角波から矩形波まで連続可変でき、幅広い表現が可能です。John FruscianteやLindsey Buckinghamも愛用。
Line 6 MM-4
メーカー説明
1996年設立のLine 6は、アンプやエフェクトの「モデリング」技術を世界に普及させたパイオニア。2014年からはヤマハグループの一員となり、革新的な製品を開発し続けています。
製品説明
16種類もの高品位なモジュレーション・エフェクトを一台に凝縮したペダル。4つのプリセットを足元で切り替えられる利便性も受け、多くのプロの現場で活躍しました。MetallicaのKirk Hammettが長年ライブで使用していたことでも知られています。残念ながら廃盤で、おそらく後継機も出てきてないです。
③ 空間系(ディレイ/リバーブ)
BOSS RV-5 Digital Reverb
製品説明
数あるリバーブペダルの中でも、特に「Modulate」モードが人気のモデル。このモードはリバーブの残響音に穏やかな揺らぎを加え、楽曲に幻想的で浮遊感のある響きをもたらします。シューゲイザーからプログレまで、幅広いジャンルのギタリストに愛されています。
最新版のRV-6が流通してます。こういうデジタル系は無理してヴィンテージや古いものを買う意味はないので新しいものを買いましょう。
Line 6 DL4
製品説明
「おしゃかしゃま」などで聞けるトリッキーなループプレイや、楽曲に独特の浮遊感を与えるリバース(逆再生)ディレイなど、RADWIMPSのサウンドに欠かせない飛び道具的役割を担います。“Big Green Box”の愛称で親しまれ、Radioheadのメンバーも使用しています。
tc electronic Nova Delay ND-1
メーカー説明
デンマークが誇る音響機器メーカー、tc electronic。1976年の創業以来、プロオーディオの世界で名を馳せ、特に伝説的なラックディレイ「2290」は世界中のスタジオの標準機となりました。
製品説明
その伝説の「2290」から受け継いだ高品位なディレイ・アルゴリズムをコンパクトなペダルに凝縮。タップテンポ機能も搭載し、クリアで解像度の高いディレイサウンドが特徴です。ギターヒーローAndy Timmonsもスタジオで常備する実力派です。
BOSS DD-7
製品説明
最大6.4秒のロングディレイや、タップテンポを使った符点8分ディレイなど、多彩な機能をコンパクトな筐体に詰め込んだ万能機。アナログディレイやモジュレートディレイのモードも搭載しており、これ一台で様々なディレイサウンドをカバーできます。
すでに廃盤で最新モデルはDD-8です。
④ ピッチシフト/フィルター系
Eventide PitchFactor
製品説明
インテリジェントなハーモニー生成から、過激なピッチベンド、シンセのようなサウンドまで、音程に関わるあらゆるエフェクトを網羅するモンスターマシン。MIDI制御により、複雑なハーモニーをライブで正確に再現するために不可欠な存在です。Steve VaiやGuthrie Govanも活用。鈴木茂さんのボードにも入ってました。
DigiTech Whammy DT
メーカー説明
1984年創業のDigiTechは、Whammyペダルの登場により、それまで高価なラック機材でしか実現できなかった過激なピッチシフトを、ギタリストの足元で可能にした革命的ブランドです。
製品説明
ギターサウンドを過激に変化させるピッチシフターの代名詞。このDTモデルは、従来のピッチベンド機能に加え、スイッチ一つでドロップチューニングやカポタストの役割を果たす機能を搭載。Rage Against the MachineのTom MorelloやJack Whiteの使用であまりにも有名です。
BOSS AW-3 Dynamic Wah
製品説明
ピッキングの強さに応じてフィルターが掛かるタッチワウ。「Humanizer」モードを使えば、まるで人が「あ→お」と発声しているような、ユニークでボーカルライクなワウ効果が得られます。My Bloody ValentineのKevin Shieldsも愛用。
MXR CAE Wah MC-404
メーカー説明
1972年、アメリカで設立されたMXRは、Phase 90やDyna Compといった名機を次々と生み出し、コンパクト・エフェクターという文化を世界に根付かせた立役者の一つです。
製品説明
著名なシステムビルダーBob Bradshaw氏(CAE)との共同開発モデル。内部にFasel社製のインダクターを2種類搭載し、スイッチで切り替えることで、ヴィンテージライクなワウからモダンでクリアなワウまで一台でカバー。Slashが自身のシグネチャーモデルから乗り換えたことでも話題に。
Morley George Lynch Dragon Wah
メーカー説明
1969年創業のMorleyは、ペダル内部のポット(可変抵抗器)をなくし、代わりに光学式センサーを採用することで、ポットの摩耗によるガリノイズを根本的に排除した設計で知られています。
製品説明
80年代を代表するギターヒーロー、George Lynchのシグネチャーモデル。可変幅が広く、ハイゲインなアンプに繋いでも音が細くならない、パワフルで滑らかなフィルタースウィープが得られます。
⑤ その他(ユーティリティ系)
Shin’s Music Perfect Volume STD
メーカー説明
日本のベテランリペアマンでありビルダーでもある鈴木伸一氏が主宰するShin’s Music。プロミュージシャンの現場の声をダイレクトに反映した、高品質なカスタムペダルや機材を製作しています。
製品説明
音質劣化が極めて少なく、スムーズなトルク感で、ヴァイオリン奏法のような繊細な音量コントロールを可能にするボリュームペダル。LAのトップセッションギタリストMike Landauも長年愛用する、プロ御用達の一台です。
KORG Pitchblack PB-01
メーカー説明
1962年創業のKORGは、シンセサイザーやチューナーの分野で世界をリードしてきた日本の電子楽器メーカー。Pitchblackシリーズは、その視認性の高さと精度で、ステージ用チューナーの代名詞的存在となりました。
製品説明
±0.1セントという高精度と、暗いステージでもはっきりと見える大きな表示が特徴のチューナー。トゥルーバイパス仕様で、オフ時の音質への影響も最小限に抑えられています。John PetrucciやTosin Abasiなど、正確なピッチが求められるテクニカル系ギタリストの信頼も厚いです。
2025年現在はすでに古いモデルで、わざわざチューナーに古いモデルを選ぶ意味はないので新しいモデルを買いましょう。
KORG ギター/ベース用 ペダルチューナー Pitchblack Advance BL スパークル・ブルー PB-AD BL
Electro-Harmonix C9 Organ Machine
メーカー説明
1968年にニューヨークで創業したElectro-Harmonix(エレハモ)は、Big Muffをはじめとする独創的で革新的な回路を持つペダルを次々と生み出し、世界の音楽シーンに多大な影響を与えてきました。
製品説明
ギターを接続するだけで、往年のロックで使われた伝説的なオルガンのサウンドを9種類もシミュレートできるユニークなペダル。楽曲に意外な彩りを加えることができます。ジャズギターの巨匠Bill Frisellもその表現の幅を広げるために使用しています。
Mooer Acoustikar
メーカー説明
2010年に中国・深圳で創業したMooer Audioは、驚異的な小ささを誇るマイクロサイズの筐体に、多機能・高音質なサウンドを詰め込むことで、瞬く間に世界中の市場を席巻しました。
製品説明
3種類のモードを搭載したアコースティック・シミュレーター。ライブでエレキギターからアコースティックサウンドに瞬時に切り替えたい、といった場面で活躍します。Tame ImpalaのKevin Parkerがスタジオで試用したことでも知られます。
Free The Tone ARC-3
メーカー説明
日本のトップギターテックとして数多くのプロミュージシャンのシステムを構築してきた林幸宏氏が、2011年に立ち上げたブランド。現場で培われたノウハウを基に、音質と信頼性を極限まで追求した製品を開発しています。
製品説明
桑原さんのような大規模なエフェクトシステムを制御する心臓部。多数のエフェクターの組み合わせをプリセットとして保存し、フットスイッチ一発で瞬時に呼び出すことができます。ONE OK ROCKのToru Yamashitaら、国内の多くのトップギタリストが絶大な信頼を寄せています。
おそらくすでに廃盤なので最新モデルを買いましょう。
Free The Tone/ARC-4 Audio Routing Controller Clickless フリーザトーン スイッチャー
Providence PEC-04
メーカー説明
株式会社パシフィクスが1996年に立ち上げたProvidence。プロの現場で求められる音質と耐久性を満たした高品質なケーブルや、PECシリーズに代表されるスイッチャーで、日本の音楽スタジオの定番ブランドとなりました。
製品説明
4つのエフェクトループと、アンプのチャンネルなどを切り替えるスイッチアウトを備えたコンパクトなコントローラー。大規模なシステムの中で、特定の役割に特化して組み込まれている可能性があります。ギタリストのMIYAVIも活用しています。
桑原彰のサウンドに関するQ&A
桑原さんが特にこだわっているエフェクトは何ですか?
楽曲の世界観を正確に再現するため、MIDIで緻密に制御できるEventideのペダルは特に重要視しているようです。ModFactor(揺れもの系)とPitchFactor(ハーモニー系)を駆使し、複雑なサウンドをライブのステージで完璧に構築しています。
ディレイを複数台使うのはなぜですか?
それぞれのディレイに役割を持たせているためです。例えば、Line 6 DL4は「ループや逆再生などのトリッキーなプレイ用」、Nova Delayは「高音質な基本的なディレイ用」、DD-7は「タップテンポを使った符点8分ディレイ用」といったように、各ペダルの長所を活かして、あの多層的で奥行きのあるサウンドを作り上げています。
自宅で桑原さんのような音を作るコツはありますか?
大音量のアンプを鳴らせない環境なら、アンプシミュレーターやIR(インパルス・レスポンス)を活用するのが近道です。歪みはBD-2やTS808のような定番ペダルを、ゲインを上げすぎずに使うのがポイント。空間系エフェクト、特にディレイやリバーブはDAWソフト上でステレオで掛けると、グッと立体感が増して雰囲気が近づきます。