Ibanez TS10は、1980年代後半から1990年代初頭にかけて生産された「10シリーズ (Power Series)」の中でも特に有名なチューブスクリーマー系エフェクターです。先行モデルであるTS808やTS9の流れをくむオーバードライブとして、当時はプロからアマチュアまで幅広く使われていました。
一方で、発売当初のTS10は、TS808やTS9ほどの認知度はなかったという背景もありました。しかし近年では、ジョン・メイヤーの使用例やヴィンテージ・エフェクターの再評価により、再び注目を集めるようになっています。
↓の動画は私が所有している日本製茶軸スイッチのTS10を、これまたジョン・メイヤーが使用してることで有名なKLON CENTAURと合わせてデラックスリバーブアンプに繋いで鳴らしてみた動画です。参考になれば幸いです。
1. Ibanez TS10とは?
TS10は、Ibanezが展開した「10シリーズ」の一部で、従来のTS9やTS808と同様に、適度にミッドレンジが強調された“あたたかみのある”オーバードライブを生み出すのが大きな特徴です。一般的にチューブスクリーマー系の回路は、軽いクランチから中ゲイン程度までが得意領域で、ギター本来の音や演奏のニュアンスを程よく残しながら、心地よい歪み感を付加します。
TS10はその設計コンセプトを継承しつつ、筐体デザインやスイッチ部分の仕様が変更されるなど、TS9までのシリーズとは見た目や操作感に若干の差異があります。
1-1. 発売時期と背景
TS10の発売時期は1986年頃から1990年代前半とされており、TS9の後継機種という位置づけです。80年代後半には音楽シーンも大きく変化し、ハイゲイン志向のギタリストが増えていたため、当時はTS9やTS808ほど注目されなかったという話もあります。
しかし、後年になってから、著名ギタリストのエピソードやヴィンテージ市場での再評価を経て、TS10のサウンドを再び見直す流れが起こっています。
2. 特徴とサウンド傾向
TS10は従来のチューブスクリーマーと同じく、ミッドレンジを心地よく持ち上げるというサウンドの特徴を引き継いでいます。ややコンプレッション感のある歪みが得られるため、リードプレイだけでなくカッティングやバッキングにも使いやすいのが魅力です。
2-1. 回路とJRC4558
TS10は、いわゆるチューブスクリーマーに多用されてきたオペアンプ「JRC4558」を採用しています。ただし、時期によって搭載されているチップが違う個体もあるとされており、音の傾向や個体差が少しある場合もあるようです。
それでも基本的には、適度にゲインを上げれば甘くサスティンのあるリードサウンドが得られ、ドライブを控えめにすれば、アンプのクリーンを程よくブーストできるオーバードライブとして使いやすい設計となっています。
TS808,TS9,TS10とサウンドも微妙に違いがありますが、回路にも若干の違いがあってその違いが個性の違いを生んでるのかと思います。個人的にはTS10が一番好きで使いやすいです。
2-2. 操作感
TS10には、DRIVE(歪み量)、TONE(音色調整)、LEVEL(出力音量)の3つのつまみが搭載されています。ドライブつまみを上げればほどよいガッツのある歪みを作りやすく、逆にドライブを下げてアンプや他のエフェクターをブーストする用途にも向いています。
TS9やTS808と同じく、一度使うとクセになってしまうようなウォームな歪み方が得られるのが、チューブスクリーマー系の魅力と言えます。
3. どんなジャンルに合うのか?
TS10は、軽いクランチからミディアムゲインまでをカバーするオーバードライブです。音色自体に強い個性があるわけではありませんが、それがむしろギターのキャラクターを活かしてくれるので、ブルース、ロック、ポップス、R&Bなど、幅広いジャンルに馴染みやすいと言えます。
特にクリーン系アンプを使っている場合は、TS10で中域に艶をプラスするような使い方が好まれることが多いです。ゲインが足りないと感じる場合は、別のディストーションペダルと組み合わせてブースター的に使うのも定番です。
4. 中古市場や価格動向
TS10は、長らくTS9やTS808ほどの人気ではなかったこともあり、中古市場でも手頃な価格で見つかる時期がありました。しかし、近年はヴィンテージエフェクターとしての価値が再認識され、価格が高騰傾向にあります。
一部の熱心なコレクターやギタリストの需要が高まっていることから、コンディションの良い個体になると数万円以上のプレミア価格で取引される場合もあるようです。購入を検討する際は、実機を試奏したり、信頼できるショップで状態をよく確認することをおすすめします。
5. 注意点とメンテナンス
TS10は生産終了品のため、いざ不具合が起きたときに純正パーツの入手が難しい場合があります。中古で手に入れる際は、筐体内部の状態やスイッチの反応などをしっかりチェックしておくと安心です。
また、10シリーズは筐体のスイッチ部分が9シリーズよりも華奢だという話もあるため、勢いよく踏みすぎるなどの扱いには少し注意したほうが良いでしょう。こまめにスイッチの接点をクリーニングするなど、メンテナンスを行うと長く愛用できます。
まとめ
Ibanez TS10は、チューブスクリーマーらしい温かみのあるサウンドと扱いやすさを兼ね備えた名機として再評価されています。TS9やTS808に比べると、ヴィンテージ市場での知名度が低かった分、以前は手に入れやすかった時期もありましたが、現在ではプレミア価格がつくことも珍しくありません。
それでも、適度なミッドブーストと素直な歪みが得られるTS10は、幅広いジャンルで使いやすく、一台あると便利なペダルと言えます。もし興味を持たれた方は、中古ショップやオークションなどでじっくり探してみるのも良いかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。