ストラトキャスターのピックアップは種類が非常に多く、それぞれの違いを理解するのは容易ではありません。 こんにちは。ギター歴7年で、現在も定期的にライブ活動を行っている筆者が、自身の経験を踏まえて解説します。 本記事では、ピックアップの基本的な仕組みから、選び方のポイント、具体的なおすすめモデル、そして交換作業の要点までを体系的に解説します。ピックアップ選びに悩むギタリストの一助となるよう、情報を整理しましたので、ぜひご一読ください。
ストラトキャスター用ピックアップの基礎知識
サウンド特性を決定する「磁石」と「出力」
ピックアップのサウンド特性を決定づける主な要因は、コイルの巻き方やワイヤーの材質、そして磁石(マグネット)の種類です。
特に代表的な「アルニコ」マグネットにはいくつかの種類があります。
・Alnico II:甘くメロウで、中音域に特徴のあるサウンド。
・Alnico V:クリアで輪郭がはっきりとし、ダイナミクスが広いサウンド。
これらは大まかな傾向ですが、ピックアップを選ぶ上での重要な指標となります。
コイルの巻き方とサウンドへの影響
ピックアップのコイルは、サウンドキャラクターを左右する重要な要素です。
・巻き数(ターン数):一般的に、コイルの巻き数が多いほど出力が高くなり、中音域が強調された力強いトーンになります。これを「オーバーワウンド」と呼びます。逆に巻き数が少ないと、出力は控えめになりますが、高音域の抜けが良い繊細なヴィンテージトーンが得られます。
・巻き方(機械巻き vs 手巻き):均一にコイルを巻く「機械巻き」は、安定的でタイトなサウンドになる傾向があります。一方、職人が手作業で巻く「手巻き(ハンドワウンド)」は、巻き方に微妙な不均一さが生じ、それが豊かな倍音や複雑なニュアンスを持つサウンドに繋がるとされています。
ポッティングの有無とハウリングへの耐性
ポッティングとは、ピックアップを蝋(ワックス)に浸すことで、コイルの隙間を埋める処理のことです。これにより、コイルの不要な振動(マイクロフォニックノイズ)が抑制され、特に大音量時やハイゲイン設定時における「キーン」という不快なハウリングを防ぐ効果があります。
一方で、あえてポッティングを施さない「ノンポッティング(アンポッテド)」仕様のピックアップも存在します。こちらはハウリングのリスクが高まる半面、ボディの鳴りなど微細な振動を拾いやすく、独特の空気感や倍音成分を持つサウンドが得られるとされ、一部のヴィンテージ系モデルで採用されています。
シングルコイル特有のノイズとその対策
シングルコイルピックアップは、その構造上、ハムノイズと呼ばれる特有のノイズを拾いやすいという課題があります。特に、照明設備や歪みエフェクターの影響を受けやすい環境では顕著になります。
このノイズを軽減するために開発されたのが「ノイズレス」や「スタック」構造のピックアップです。これはコイルを縦に2段重ねることで、ハムバッカーと同様の原理でノイズを相殺する仕組みです。ノイズを大幅に抑制しつつ、シングルコイルらしいサウンド特性を維持することを目指して設計されています。
ピックアップ選びのポイント
音楽ジャンルと出力特性から選ぶ
ピックアップ選びは、まず演奏する音楽の方向性から大別するのが有効です。
・ヴィンテージタイプ(低出力):きらびやかなクリーントーンや、繊細なピッキングニュアンスを表現するのに適しています。ブルース、ジャズ、シティポップなどのジャンルに向いています。
・モダン/ホットタイプ(高出力):中音域が強調され、サスティンが豊かな力強いサウンドが特徴です。ハードロックや、よりヘヴィなディストーションサウンドを求める場合に適しています。
HSS配列やシングルサイズ・ハムバッカーという選択肢
ストラトキャスターのブリッジポジションにおけるサウンドの鋭さを和らげ、より太いサウンドを求める需要も少なくありません。
その解決策として、ブリッジにハムバッカーを搭載する「HSS」配列や、シングルコイルと同じ外見ながらハムバッカー構造を持つ「シングルサイズ・ハムバッカー」が有効な選択肢となります。これらは、ギター本体への加工を最小限に抑えつつ、パワフルなハムバッカーサウンドを得られる利点があります。
ヴィンテージ感(きらびやか/ガラス質)→「Alnico Vのヴィンテージ系」から。 太さ/ミッドの押し出し→「テキサス/ホット系」やシングルサイズHB。 ステージのノイズが気になる→「ノイズレス/スタック」。
【目的別】おすすめピックアップ8選
ここでは、サウンドの方向性が異なる代表的なピックアップを8種類紹介します。それぞれの特徴を比較し、選定の参考にしてください。
モデル名 | メーカー | タイプ |
---|---|---|
Fender Pure Vintage ’65 Strat® Pickups | Fender | ヴィンテージ |
Fender Custom Shop Texas Special™ Strat® | Fender | ホット/テキサス |
Seymour Duncan SSL-1 Vintage Staggered | Seymour Duncan | ヴィンテージ |
Seymour Duncan SSL-5 Custom Staggered | Seymour Duncan | ホット |
Lindy Fralin Vintage Hot Strat | Lindy Fralin | ヴィンテージホット |
Lollar “Sixty-Four” (旧Blackface) | Lollar | ヴィンテージ |
DiMarzio Area 58 / 61 | DiMarzio | ノイズレス |
Fender Gen 4 Noiseless™ Strat® | Fender | ノイズレス |
1. Fender Pure Vintage ’65 Strat® Pickups
1960年代中期のストラトキャスターサウンドを再現したモデル。きらびやかな高音域とバランスの取れた中音域が特徴で、幅広いジャンルに対応できる定番ピックアップです。
2. Fender Custom Shop Texas Special™ Strat®
Fender ピックアップ Fender® Custom Shop Texas Special™ Tele Pickups
通常よりもコイルの巻き数を増やした(オーバーワウンド)モデルで、力強いミッドレンジが特徴。特にブルースロック系のドライブサウンドで真価を発揮します。
3. Seymour Duncan SSL-1 Vintage Staggered
Seymour Duncan SSL-1 Vintage staggered White セイモア ダンカン シングルコイル ギター ピックアップ ス…
ヴィンテージ系リプレイスメントピックアップの代表格。「ベル・トーン」と称される明るく明瞭なサウンドが魅力で、特にカッティングプレイにおいて優れたレスポンスを示します。
4. Seymour Duncan SSL-5 Custom Staggered
SeymourDuncan PU セイモアダンカン ピックアップ SSL-5 Custom Staggered WH【国内正規品】
SSL-1の出力を高めたモデル。特にブリッジポジションでより力強く、サスティン豊かなリードトーンを求めるギタリストに適しています。
5. Lindy Fralin Vintage Hot Strat
ヴィンテージトーンのニュアンスを維持しつつ、出力をわずかに高めることで現代的な音楽シーンにも対応しやすく設計されています。バランスの取れた扱いやすいサウンドが特徴です。
6. Lollar “Sixty-Four”(旧Blackface)
クリーントーンの透明感と豊かな倍音成分に定評があるモデル。アルペジオや繊細なクランチサウンドにおいて、そのサウンドクオリティを実感できます。
こちらいくつかのサイトで販売されているのが確認できました。
https://shop.miyaji.co.jp/SHOP/ka-g-011023l-iy01.html
7. DiMarzio Area 58 / 61
ノイズレス構造でありながら、シングルコイル特有のサウンドニュアンスを追求したAreaシリーズ。Area 58はよりクリアなヴィンテージ志向、Area 61はやや出力を高めたモダンなキャラクターです。ライブやレコーディングなど、ノイズ対策が重要な場面で有効です。
8. Fender Gen 4 Noiseless™ Strat®
Fender ピックアップ Fender® Vintage Noiseless™ Strat® Pickups, Aged White
Fenderによる最新世代のノイズレスピックアップ。ハムノイズを効果的に抑制しながら、ヴィンテージピックアップのような温かみのあるトーンを目指して開発されています。
改造の選択肢と交換の実務
ブリッジのハムバッカー化(HSS配列)
ハードロックなど、より高出力なサウンドを求める場合、ブリッジポジションをハムバッカーに交換するHSS配列が有効です。これにより、1本のギターで多彩なサウンドメイクが可能になります。(注:ボディへのザグリ加工が必要な場合があります)
シングルサイズ・ハムバッカーの活用
ギター本体への加工を避けたい場合は、前述の「シングルサイズ・ハムバッカー」が最適な選択肢です。外見を変えることなく、ブリッジポジションのサウンドをより太く、パワフルにすることができます。
ピックアップ交換の手順と注意点
作業の全体像
ピックアップ交換は、主に「ピックガードの取り外し → 配線のハンダ付け → 再組付けと高さ調整」という手順で進行します。作業自体は電子工作の基本的な知識があれば可能ですが、配線ミスは出音トラブルに繋がるため、配線図を確認しながら慎重に行う必要があります。
プリワイヤード・アッセンブリの利用
ハンダ付け作業に不安がある場合、ピックアップやポット、スイッチ類がすべて配線済みの「プリワイヤード・ピックガード」を利用するのも一つの手です。出力ジャックとアースへの接続のみで作業が完了するため、交換の難易度を大幅に下げることができます。
ピックアップの高さ調整
交換後の高さ調整は、サウンドを決定づける重要な最終工程です。Fender社が推奨する初期設定値(最終フレットを押弦し、弦の下面からポールピース上面までの距離を測定)を基準に、最終的には聴感上で最適なポイントを探ります。
一般的には「6弦側を弦からやや離し、1弦側をやや近づける」ことから始めるとバランスが取りやすいでしょう。
[hint]注意:ピックアップを弦に近づけすぎると、磁力の影響で弦振動が阻害され、サスティンの減少や音程の不安定化(ストラトitis)を招くことがあります。推奨値か、やや離れた位置から微調整を始めるのが安全です。[/hint]
まとめ:ジャンル別推奨ピックアップ
ブルース / クランチサウンドが主体のプレイヤー向け
ピッキングニュアンスの再現性を重視する場合、ヴィンテージ系の低出力モデルが適しています。Seymour Duncan SSL-1やFender Pure Vintage ’65などが代表的な選択肢です。
ロック / ハイゲインサウンドが主体のプレイヤー向け
バンドアンサンブル内での存在感を求めるなら、中音域に特徴のあるホット系のモデルが有効です。Fender Texas Specialや、ブリッジにSeymour Duncan SSL-5を搭載するなどの組み合わせが考えられます。
ライブやレコーディングでのノイズを避けたいプレイヤー向け
外部ノイズによる影響を最小限に抑えたい場合、ノイズレスタイプのピックアップが最適です。DiMarzio AreaシリーズやFender Gen 4 Noiselessは、実用性とサウンドクオリティを両立しています。
FAQ
Q. ピックアップを交換すると、サウンドはどの程度変化しますか?
サウンドは大きく変化します。ピックアップはギターの音色を決定づける最も重要な要素の一つです。特に出力特性が大きく異なるモデルに変更した場合、アンプのゲイン設定などを根本的に見直す必要があるほどキャラクターが変わることもあります。
Q. ポジション2/4のハーフトーンでノイズが低減されるのはなぜですか?
センターピックアップがRWRP(逆巻き・逆磁極)仕様になっているためです。隣のピックアップと組み合わせることで、ハムバッカーと同様のノイズキャンセリング効果が得られるという仕組みに基づいています。
Q. ノイズレスピックアップは、純粋なシングルコイルと同じサウンドですか?
これは一概には言えない点です。構造的にはハムバッカーに近いため、厳密にはサウンドキャラクターが異なります。しかし、近年のモデルは設計技術が向上し、シングルコイル特有の明瞭さやレスポンスを非常に高いレベルで再現しています。ノイズ軽減という実用的なメリットは大きく、多くのプロミュージシャンにも採用されています。
Q. 交換後のピックアップの高さは、どのように設定すればよいですか?
まずはメーカーの推奨値(例:Fenderの推奨設定)を基準に設定することをお勧めします。そこから最終的にはご自身の耳で、出音のバランスやサスティンを確認しながら微調整を行ってください。この調整はサウンドに大きく影響する重要なプロセスです。