はじめてのオーバードライブにお悩みの方へ!
ロックやブルース、ハードロックを弾きたくてオーバードライブを探すと、種類の多さに迷ってしまうはずです。私はギター歴20年、エフェクター製作歴18年で、これまでに300台以上のペダルを作り、うち200台以上がオーバードライブです。スタジオやライブでの検証と、回路設計の視点を合わせて、今日選んで明日から頼れる“13台”だけに絞って案内します。まずは基礎を押さえてから、目的に合わせて最短で一台を選べるように構成します。
そもそもオーバードライブとは?
BOSS OD-1が元祖
1970年代後半、BOSS OD-1が“アンプを押し込んだときの心地よい歪み”を小さな箱に収めて登場しました。真空管アンプを大音量で鳴らさなくても、似た質感のサチュレーションを得られるようになり、ロックの現場で広く受け入れられました。以後、回路は進化し続け、現在の定番モデルにつながっています。
オーバードライブにも種類がある
多くはオペアンプ式で、信号を増幅してダイオードで波形をやわらかく削ります。トランジスタなどを組み合わせたディスクリート式も存在して、反応の速さや粒立ちに個性が出ます。音の傾向では、原音の輪郭を保つトランスペアレント系、中域の押し出しを作るTS系、透明感と厚みを両立するケンタウロス系などに分かれます。ここを理解すると選択肢を整理できます。
ディストーションとの違いとは?
どちらも波形を削って歪ませます。違いは主に歪み量と手ざわりです。オーバードライブはやわらかく歪ませて、ピッキングやギターのボリュームに追従します。ディストーションは歪み量が多く、輪郭がはっきりして、リフの迫力を出しやすくなります。曲の目的に合わせて使い分けると音作りが安定します。
おすすめのオーバードライブ13選
まず全体像を一覧で確認してから、個別の解説に進んでください。表は横にスクロールできます。
画像 | 機種名 | メーカー名 | カテゴリ | 備考 |
---|---|---|---|---|
![]() | BOSS SD-1 Super OverDrive | BOSS | TS系に近い非対称クリッピング | 定番の入門機。ブーストにも向きます。 |
![]() | BOSS OD-3 OverDrive | BOSS | オペアンプ式・ワイドレンジ | 素直な太さ。メインの歪みに使えます。 |
![]() | BOSS BD-2 Blues Driver | BOSS | オペアンプ式・ハイレスポンス | アタックが立つクランチに合います。 |
![]() | Ibanez Tube Screamer(TS9/TS808) | Ibanez | TS系・ミッドブースト | ソロの押し出しや前段ブーストに最適です。 |
![]() | Electro-Harmonix Soul Food/Crayon | Electro-Harmonix | ケンタ系/オリジナルOD | 手頃な価格で実用的な2機種です。 |
![]() | Vemuram Jan Ray | Vemuram | トランスペアレント系・ハイエンド | 原音重視で長く使えます。 |
![]() | Fulltone OCD | Fulltone | アンプライク・中〜高ゲイン | ボリューム操作で表情を作れます。 |
![]() | Mad Professor Sweet Honey Overdrive | Mad Professor | ローゲイン・ビンテージ系 | 歌伴のクランチに向きます。 |
![]() | Friedman BE-OD | Friedman | ハイゲイン・アンプ系 | 厚い歪みをきれいに作れます。 |
![]() | MXR CSP027 Timmy Overdrive | MXR | トランスペアレント系 | 常用の押し出しに適します。 |
![]() | EarthQuaker Devices Plumes | EarthQuaker Devices | TS再解釈・3モード | TSが合わなかった人にも向きます。 |
![]() | EarthQuaker Devices Special Cranker | EarthQuaker Devices | ローゲイン・質感強化 | 原音の芯を残して厚みを足します。 |
![]() | WALRUS AUDIO Warhorn | WALRUS AUDIO | ミッド可変・2バンドEQ | 人とかぶりにくい選択肢です。 |
まずはここから:一台目で選びやすい定番
入手しやすさと扱いやすさを重視しつつ、スタジオの音量でも輪郭を保てるモデルを選びました。練習から本番まで一貫した手応えを得られます。
BOSS SD-1 Super OverDrive
初めての一台で迷っていて、伴奏とソロの両方を一つでこなしたい人に向きます。バンドの中で音を前に出したい人にも合います。
BOSSはステージでの信頼性と実戦的な音作りで支持を集めています。SD-1は1981年から続くロングセラーで、やわらかい歪みとほどよい中域の押し出しを両立します。メーカーはシンプルな操作で幅広く使えることを重視して設計していて、電源周りや耐久性も安定しています。非対称のクリッピングにより、アンプで軽く歪ませたような手ざわりが生まれます。メインの歪みとしても、ソロの前に少し音量と輪郭を足す用途としても活躍します。価格が手頃で、音作りの基準として長く持てるところも安心できます。
おすすめのセッティング例:レベルはバンドの音量に少し余裕を持たせて、トーンは12時少し上、ドライブは控えめに設定します。アンプはクリーン寄りにして、必要に応じてアンプのトレブルを少し下げると耳あたりが整います。
BOSS OD-3 OverDrive
BOSS ボス OD-3 OverDrive オーバードライブ + ACアダプター FREE THE TONE SP-9 セット
コードの厚みを感じながら、ジャンルをまたいで一本で対応したい人に向きます。歌ものでも扱いやすく、落ち着いた太さを求める人に合います。
OD-3はBOSSの定番オーバードライブで、素直なゲインと太さを備えます。メーカーはワイドレンジな応答と、ピッキングに対する素直な反応を意識して設計しています。中低域の腰がしっかりして、単音のリードでも和音のストロークでも輪郭を保ちます。SD-1より癖が少なく、メインの歪みとして使いやすく、クリーンアンプ相手でも手早く気持ちよいクランチを作れます。バンドのアンサンブルに混ざっても音像が崩れにくく、PA席からも扱いやすい音として評価されます。
おすすめのセッティング例:レベルはやや上げて存在感を作り、トーンは中央から微調整します。アンプはクリーンにして、必要なときだけドライブを少し足すと、リズムもリードもまとめて扱えます。
ちなみに私はSD-1よりOD-3のほうが好きです。SD-1はアンプを活かす感じで、OD-3はプリアンプ的なニュアンスがあります。
BOSS BD-2 Blues Driver
BOSS/BD-2 Blues Driver[純正ACアダプター同時購入セット]オーバードライブ ブルースドライバー BD2
ピッキングの強弱を音に反映させたい人や、カッティングの切れを求める人に向きます。ニュアンス重視で弾きたい人に合います。
BD-2は名前こそブルースですが、幅広いジャンルで使われています。メーカーは反応速度とニュアンスの再現性を重視して、アタックの立ち方と倍音の伸び方を調整しています。弾き方が音に出やすいので、意図したダイナミクスを作りやすくなります。高域が出やすい設計なので、トーンを落ち着かせるとまとまりが良くなります。単音の歌う感じと、和音のきらめきを両立させたいときに活躍します。
おすすめのセッティング例:トーンは少し下げて耳あたりを整えます。アンプはクリーンに設定して、強く弾いたときだけ心地よく歪む領域を狙います。
BD-2は改造して更に良くなるエフェクターです。ファズにもできるというポテンシャルの幅が広いエフェクターです。
以下の記事は当サイトで紹介しているBD-2の改造方法です。はんだごてが使えれば試してみてください。
価格差はそんなに無いので、中古で安くBD-2を探すのも手ですが、最初から上位モデルである技クラフトのブルースドライバーを買うのもいいと思います。結構良かったです。
Ibanez Tube Screamer(TS9/TS808)
ソロの輪郭をはっきりさせたい人や、別の歪みやアンプの前で音を引き締めたい人に向きます。中域の存在感を出したい人に合います。
Ibanezはチューブスクリーマーで世界的な評価を得てきました。TSは中域の張りと粘りを作る点が特徴で、メーカーはバンドの中で埋もれにくいリードトーンを重視します。TS9は現場で扱いやすく、TS808は滑らかな質感が得られます。低域を少し整理して、必要な帯域にエネルギーを集めるため、前段ブーストとしても効果を発揮します。レベルを上げてドライブを控えると、伴奏では引き締まり、ソロでは前に出る働きを示します。
おすすめのセッティング例:レベルをしっかり上げて、ドライブは控えめにします。アンプはクリーンでも、軽く歪ませても合います。ソロの直前だけオンにすると抜けを強化できます。
TS808は枯れたニュアンスがあり、TS9は太い音のニュアンスがあります。完全に好みですが、私はTS9のほうが好きです!
Electro-Harmonix Soul Food/Crayon
electro-harmonix エレクトロハーモニクス エフェクター ディストーション/ファズ/オーバードライブ Soul F…
価格を抑えつつ実用的な一本を探す人や、透明感を保ちながら存在感を足したい人に向きます。細かい帯域調整をしたい人にも合います。
Electro-Harmonixは独創的な設計で知られます。Soul Foodはケンタウロス系の思想を手頃に体験できるモデルで、透明感に中域の旨味を添える感覚で使えます。Crayonはベースとトレブルの二つのトーンで細かく合わせ込めます。どちらも録音とライブで扱いやすく、ギターやアンプを選びにくい点が強みです。Soul Foodはクリーンブーストから軽い歪みまでなめらかにつながり、CrayonはEQの自由度で環境に素早く適応します。
おすすめのセッティング例:レベルはやや高めで存在感を作り、トーンは中心から微調整します。アンプはクリーンにして、必要な曲だけオンにすると、伴奏とソロの切り替えが楽になります。
長く使える本命:最初からハイエンドも選択肢
反応と音の質感、混ざったときの聞こえ方にこだわりたい人向けです。価格は上がりますが、一本で長く付き合えます。
Vemuram Jan Ray
原音の輪郭を崩さずに、前に出る気持ちよさを足したい人に向きます。歌伴のクランチや常用の押し出しに合います。
Vemuramは東京発のハイエンドブランドで、現場の声を細部に反映する作りが持ち味です。Jan Rayは透明系の代表的存在で、明るさと張りを保ちながら、弾き手のニュアンスを素直に引き出します。メーカーはノイズの少なさやトリム調整の自由度にも配慮して、環境やギターに合わせた微調整を可能にします。クリーンの気持ちよさを残したいときに頼りになり、常に踏んだままでも自然に鳴らせます。
おすすめのセッティング例:レベルで前に出る量を作り、ドライブは控えめにします。アンプはクリーンにして、手元のボリュームでクリーンから軽いクランチまで行き来します。
Fulltone OCD
アンプのような手応えを求めて、ギターのボリュームで表情を作りたい人に向きます。リフもソロも一本でこなしたい人に合います。
Fulltoneはプロの現場での視点から、反応とダイナミクスを重視した設計を行います。OCDはアンプライクな中〜高ゲインの代表格で、低域の厚みと高域の伸びが共存します。モード切り替えでキャラクターを変えられるので、シングルコイルでもハムバッカーでも合わせやすくなります。ギターのボリュームを下げるとクリーン寄りに、上げると堂々としたクランチに移行して、一本で幅広く対応します。
おすすめのセッティング例:ドライブは中程度から始めて、必要に応じて上げます。アンプはクリーン〜ごく薄いクランチにして、手元で行き来します。
Mad Professor Sweet Honey Overdrive
Mad Professor マッドプロフェッサー エフェクター FACTORY Series オーバードライブ Sweet Honey Overdriv…
軽い歪みの表情を大切にして、コードの分離と甘い質感を両立させたい人に向きます。歌ものやブルース寄りの表現に合います。
Mad Professorは北欧のハンドクラフトが特徴で、音楽的な倍音と扱いやすいレンジを重視します。Sweet Honeyはローゲインの名品で、指先のコントロールに素直に追従します。Focusでアタックの出方と明るさを調整できるので、ギターやアンプの種類に合わせて最短で音をまとめられます。分離感の良い和音と、歌う単音を同時に狙えるところが魅力です。
おすすめのセッティング例:ドライブは控えめ、レベルで前に出る量を作ります。アンプはクリーンにして、Focusでアタックを曲に合わせて調整します。
Friedman BE-OD
厚い歪みをきれいにまとめて、リフとソロの両方で存在感を出したい人に向きます。ハードロック寄りの表現にも対応できます。
Friedmanはアンプメーカーとしての知見を活かし、ペダルでもアンプ級の作り込みを実現します。BE-ODはBE-100の系譜を感じる力強い歪みを持ちます。Bass、Treble、Presence、Tightで細かく整えられるため、厚い音でも輪郭を保てます。ハムバッカーとの相性はもちろん、シングルでも工夫次第で力強いリードを作れます。
おすすめのセッティング例:ドライブはやや高めから始めて、Tight相当のコントロールで低域の動きを整えます。アンプはクリーンにして、ペダル側で主役の歪みを作ります。
人とかぶりにくい個性派:実用性はしっかり
2台目以降の差し替えにも、常用の一本としても使えるモデルを選びました。バンドのアレンジや会場に合わせて音を作り替えられます。
MXR CSP027 Timmy Overdrive
音色を大きく変えずに、前に出る感じと艶だけを足したい人に向きます。常に踏んだままでも自然に鳴らしたい人に合います。
MXRは現場での使いやすさと堅牢さで支持されます。Timmyは透明系の代表で、原音の輪郭を保ちながら密度を少しだけ高めます。メーカーは小型筐体でも扱いやすいノブ配置を採用して、ステージでの微調整を容易にします。BassとTrebleで帯域を素早く整えられるので、編成や会場に合わせたチューニングがしやすくなります。クリーンの質感を崩さずに存在感を足せます。
おすすめのセッティング例:ドライブは控えめ、レベルで前に出る量を作ります。アンプはクリーンにして、BassとTrebleでその日の空間に合わせて調整します。
EarthQuaker Devices Plumes
TS系の良さを保ちながら、低域の細さや帯域の固定感を和らげたい人に向きます。曲ごとに性格を切り替えたい人に合います。
EarthQuaker Devicesは個性的で実用的な回路づくりに強みがあります。PlumesはTSの再解釈で、対称、非対称、クリッピングなしの3モードを切り替えられます。メーカーはノイズの低さと、トーンの効きの自然さにも配慮して、バンドでの扱いやすさを高めています。TSが少し合わなかった人でも、このモデルなら合わせやすくなります。
おすすめのセッティング例:モードは非対称から試して、必要に応じて切り替えます。アンプはクリーンにして、TS系の押し出しで前に出します。
EarthQuaker Devices Special Cranker
Earth Quaker Devices/Special Cranker オーバードライブ EQD アースクエイカーデバイセス
いまのクランチが気に入っていて、質感だけを少し上品にしたい人に向きます。原音の芯を残して厚みを足したい人に合います。
Special Crankerはローゲインの質感を磨く設計で、ゲルマニウムとシリコンの切り替えで手ざわりを変えられます。メーカーは原音の位相と帯域の乱れを抑えることに配慮して、クリーンから軽い歪みまで自然に接続できるようにしています。コードの響きを豊かにしながら、単音の輪郭も保ちます。
おすすめのセッティング例:レベルを上げて、ドライブはごく控えめにします。アンプはクリーン〜薄いクランチにして、質感を少しだけ豊かにします。
WALRUS AUDIO Warhorn
コードの輪郭を崩さずに、中域の主張を少しだけ増やしたい人に向きます。リズムの力強さと抜けの良いリードを両立したい人に合います。
WALRUS AUDIOはデザインと機能の両立に定評があります。Warhornは二つのトーンとクリッピングの切り替えで、図太い方向と開放的な方向を使い分けられます。メーカーはライブでの実用性を意識して、ノブの効きと切り替えの変化量をわかりやすく設計しています。編成や会場に合わせて素早く調整できます。
おすすめのセッティング例:状況に合わせてクリッピングを切り替えます。アンプはクリーンにして、必要に応じてトーンで帯域を整えます。
すぐに試せるセットアップのコツ
どのオーバードライブでも最初は、レベルは12時、トーンは12時、ドライブは9〜10時から始めます。ソロで前に出にくいと感じたら、レベルを少し上げて、トーンで明るさを足します。歪みが濁ると感じたら、ドライブを少し下げて、レベルで音量を補います。アンプはクリーン寄りにして、ギターのボリュームで表情を作ると安定します。
よくある質問
初心者が最初のオーバードライブで失敗しにくい選び方は?
バンドで埋もれにくい中域の存在感と、情報量が多い定番機を基準に選ぶと安定します。BOSS SD-1やIbanez TS9は価格と入手性のバランスが良く、レビューやセッティング例が豊富なので、音作りの基準を作りやすいです。
原音の輪郭を保ちたい場合はどのタイプが向いていますか?
トランスペアレント系が向いています。MXR CSP027 TimmyやVemuram Jan Rayは、音色を大きく変えずに押し出しだけを加えやすく、クリーンブーストから軽い歪みまで自然に移行できます。歌伴やコード主体のプレイで扱いやすいです。
自宅とスタジオで音が違って感じるときはどう調整すれば良いですか?
スタジオでは高域が強く聞こえやすいので、トーンを少し下げてレベルで音量を確保します。アンプはクリーン寄りにして、必要に応じてTS系で中域を足すと前に出やすくなります。歪みが濁るときはドライブを下げてレベルで補うと輪郭が戻ります。