はじめに:今なお進化を続ける伝説的ギタリスト・森園勝敏
1970年代、日本のプログレッシヴ・ロックシーンを切り拓いた〈四人囃子〉、そしてフュージョンバンド〈PRISM〉でその名を馳せ、現在もソロやセッションで精力的に活動を続けるストラトキャスターの名手、森園勝敏さん。彼のギターサウンドは、時代と共に進化し続け、多くのギタリストに影響を与えてきました。
森園勝敏が使用するエフェクター9機種を紹介します。近年は、脳卒中のリハビリを経てアーム奏法を多用するようになったとインタビューで話しています。
サウンドの土台となるギター&アンプ
現在のメインギターは、東京・西荻窪の名店〈Guitars Market〉が手掛けるTERRA GUITAR “森園モデル”。ワーモス製のソニックブルー・ボディに、美しいバーズアイ・メイプルネック、そして指板には希少なハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)が採用された、至高の一本です。ブリッジは、長年愛用してきたWilkinsonのVSVGに交換されているのが、サウンドへのこだわりの証です。
アンプは、13Wの小型コンボアンプ「BUDDA」を基本としつつ、ライブハウスの規模や環境に応じてMatchless TornadoやLine 6の小型モデリングアンプを持ち込むなど、柔軟なスタイルを貫いています。
Wilkinson by GOTOH VSVG Cosmo Black CK コスモブラック ウィルキンソン トレモロシステム 【Ebiオリジナ…
森園勝敏サウンドの特徴とは?
本人は、低音が減りにくく、中音域が伸びるクランチから中程度の歪みを好むと説明しています。エフェクターボードには、歪み系エフェクター3台、ディレイ、ワウなどが載っています。
森園勝敏の使用エフェクター9選まとめ
① 歪み系(オーバードライブ/ファズ)
音作りで重要な、歪み量や音域のバランスが異なるドライブ系エフェクターたちです。
WAY HUGE Red Llama Overdrive
WAY HUGE ウェイ ヒュージ レッド ラマ WM23 RED LLAMA OVERDRIVE MkIII オーバードライブ【国内正規品】
メーカー説明
90年代に一度はシーンから姿を消したものの、そのサウンドを求める声が絶えず復活を遂げた伝説のブランド。創設者ジョージ・トリップ氏が生み出すエフェクターは、モデルごとに異なる歪み方や音域のバランスを備えています。
製品説明
WAY HUGE Red Llamaはオーバードライブです。本人は「最も出番が多い」と話しています。Gainを上げると歪み量が増え、軽い歪みからファズに近い強い歪みまで調整できます。
Frantone Brooklyn Overdrive
メーカー説明
1990年代から、ニューヨークを拠点に活動する女性ビルダー、フラン・ブランシェ氏が手掛けるブティック・ブランド。その独創的な回路とデザインで、カルト的な人気を誇ります。
製品説明
Red Llamaが基準だとしたら、こちらはサウンドにもう一段階歪みの粒をさらに粗くを加えたい時の選択肢。アンプで作った基本の音量を保ったまま、よりサチュレーションの強いドライブ感が得られます。現在では非常に入手困難なため、見つけたら幸運です。腕に覚えのある方は、公開されている回路図を基に自作に挑戦するのも一興でしょう。
https://dirtboxlayouts.blogspot.com/2020/03/frantone-brooklyn-overdrive.html
&K Laboratory Analog Face (Fuzz Face Clone)
メーカー説明
名古屋を拠点に、ヴィンテージ機材のサウンドを追求したハンドワイヤード・エフェクターを製作する&K Laboratory。ゲルマニウム/シリコンといったトランジスタの特性を熟知したファズ作りで知られます。
製品説明
通称“白いファズ”。ギターソロなどで、豊かなサスティンと倍音を稼ぎたい場面で投入されます。ヴィンテージのFuzz Faceにインスパイアされつつも、原音のロー感を失わないよう巧みにチューニングされており、シングルコイルのストラトで踏んでも音が痩せないのが大きな利点です。
Crowther Audio Hot Cake
メーカー説明
ニュージーランドのバンド「Split Enz」の元ドラマー、ポール・クロウザー氏が1976年からハンドメイドで製造を続ける伝説的ブティック・オーバードライブ。そのユニークな非対称クリッピング回路は、多くのエフェクターに影響を与えました。
製品説明
2000年前後のPRISM期から愛用されている一台。特にMarshall系アンプと組み合わせた際に、リアピックアップでも低音が痩せずに単音を伸ばしやすいサウンドが出せる点を評価していると推測されます。DRIVEノブを12時あたりにするとクランチ、3時以降ではより強い歪みに調整できます。
BOSS OD-1 OverDrive
メーカー説明
1977年、世界で初めて「オーバードライブ」と名付けられ発売された、歴史的なコンパクト・エフェクター。そのサウンドは、世界のロックギターの歴史そのものと言っても過言ではありません。
製品説明
80年代初頭のPRISMのライブ写真で、足元にこのOD-1が確認されています。当時の森園サウンド、特にアルバム『Lady Violetta』期のトーンを研究する上で、非常に重要な手がかりとなる一台です。
② 空間系&フィルター系
サウンドに彩りと反復音や残響、そして表情豊かな変化を与えるエフェクターたちです。
Line 6 DL4 Delay Modeler
メーカー説明
90年代後半に「モデリング」技術を世界に広めたLine 6が、2000年に発売したデジタルディレイの名機。その操作性は後継機であるMk IIにも受け継がれ、今なお多くのプロの足元で活躍しています。
製品説明
ショートディレイ、リバースディレイ、スウィープエコーといった多彩なサウンドを、3つのフットスイッチにプリセットし瞬時に呼び出せる操作性が、ライブ派ギタリストから絶大な支持を得ています。森園さんのボードに欠かせない一台です。
BUDDA Wah Pedal
メーカー説明
アメリカのブティック・アンプメーカー、BUDDA Amplificationが手掛ける定番ワウペダル。ノイズが少なく、強い低中音域が特徴です。
製品説明
BUDDA WahはDL4とともにエフェクターボードに載せていた機材です。複雑なコードでも各弦を聞き取りやすい音で、初期モデルを使用していました。
Fairfield Circuitry Randy’s Revenge (Ring Modulator)
メーカー説明
カナダ・ケベック州のハンドメイド・エフェクターブランド。ユニークな発想と、アナログ回路設計で、実験的なサウンドを求めるミュージシャンから高い評価を得ています。
製品説明
2020年の『ギター・マガジン』誌で公開されたエフェクターボードに載っていたリングモジュレーターです。過激な金属音からシンセサイザーのような倍音まで幅広くカバーし、Red Llamaと組み合わせることで、リードトーンに独特の“宇宙感”を加えています。
③ ユーティリティ系
ボード全体の安定性に使う重要なエフェクターです。
KORG Pitchblack Tuner
KORG(コルグ) ギター/ベース用 ペダルチューナー Pitchblack X ±0.1セントの高精度 ULTRA BUFFER トゥルー…
メーカー説明
日本の電子楽器メーカーKORGが誇る、ペダルチューナーのベストセラー。高輝度のLEDメーターによる抜群の視認性で、暗いステージでのチューニングを強力にサポートします。
製品説明
エフェクターボードの最前段に置かれ、ミュート機能と信号を強化するバッファーとしての役割も担います。基準ピッチをA4=440Hzだけでなく、微妙に調整(キャリブレーション)できる点も、セッションなど様々な環境に対応するための選択理由だと考えられます。現行モデルはさらに精度が向上しており、常に最新のものを選ぶのがおすすめです。
Hot CakeやRandy’s Revengeのような流通量の少ないブティック・エフェクターは、中古市場でも価格が安定しません。国内ではReverbやメルカリ、楽器店の委託品などを並行してチェックすると、巡り会えるチャンスが広がります。
本記事は2025年7月時点で確認できた情報を基に作成しています。アーティストの機材は、ライブやレコーディングのたびにアップデートされる可能性があります。最新情報は公式サイトやSNSでチェックしましょう!
まとめ:少数精鋭で構築する“ミニマルかつ多彩”なサウンドシステム
森園勝敏さんの機材選びは、「ローエンドを削らない」「倍音を豊かに加えつつも飽和させない」「どんな現場にも対応できる柔軟性」という3つの哲学に集約されます。歪み量や音域のバランスが異なる歪み系エフェクターを段階的に用意し、飛び道具的なリングモジュレーターまで備えるのが、2020年以降のスタイルです。これに「三種の神器」とも言えるチューナー、ワウ、多機能ディレイを加えることで、どんなアンプや環境でも、常に“森園勝敏の音”を再現できる、ミニマルかつ多彩なサウンドシステムが完成するのです。
Q&A:よくある質問
Q. 森園勝敏さんのサウンドを作る上で、最も重要なエフェクターは何ですか?
インタビューでは、WAY HUGE Red Llamaを最も多く使うと話しています。シングルコイルのストラトキャスターにつないだときも低音が減りにくく、歪み量を確保できると説明しています。
Q. 「Hot Cake」と「Red Llama」は、どのように使い分けているのでしょうか?
推測になりますが、Hot CakeはMarshall系アンプと組み合わせた際にハイミッドを強調し、ギターを聞こえやすくしたい時に。対してRed Llamaは、アンプ本来の音を活かしつつ、中域をフラットに保ったまま豊かな倍音を加えたい時に選ばれることが多いようです。
Q. なぜ飛び道具的な「Randy’s Revenge」を導入したのですか?
2020年の『ギター・マガジン』誌の取材で、「DL4のリバースディレイに、このリングモジュレーターを重ねると宇宙的なサウンドになる」とコメントしています。ストラトのハーフトーンと組み合わせることで、ノイズを抑えつつ金属的な倍音を付加できる点を評価しているようです。






