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森園勝敏氏の使用エフェクター9選まとめ

はじめに:今なお進化を続ける伝説的ギタリスト・森園勝敏

1970年代、日本のプログレッシヴ・ロックシーンを切り拓いた〈四人囃子〉、そしてフュージョン界の金字塔〈PRISM〉でその名を馳せ、現在もソロやセッションで精力的に活動を続けるストラトキャスターの名手、森園勝敏さん。彼のギターサウンドは、時代と共に進化し続け、多くのギタリストに影響を与えてきました。

本記事では、長年“自作エフェクター沼”に浸かり、森園サウンドを研究してきた筆者が、プレイヤーならではの視点で、彼の足元を支えるエフェクターボードの秘密を紐解きます。近年のインタビューでは、脳卒中のリハビリを経てアーム奏法を多用するようになったと語っており、そのサウンドはシングルコイルらしい煌びやかさと、粘りのある伸びやかな中音域を見事に両立させています。

サウンドの土台となるギター&アンプ

現在のメインギターは、東京・西荻窪の名店〈Guitars Market〉が手掛けるTERRA GUITAR “森園モデル”。ワーモス製のソニックブルー・ボディに、美しいバーズアイ・メイプルネック、そして指板には希少なハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)が採用された、まさに至高の一本です。ブリッジは、長年愛用してきたWilkinsonのVSVGに交換されているのが、サウンドへのこだわりの証です。

アンプは、13Wの小型コンボアンプ「BUDDA」を基本としつつ、ライブハウスの規模や環境に応じてMatchless TornadoやLine 6の小型モデリングアンプを持ち込むなど、柔軟なスタイルを貫いています。

https://barks.jp/news/918184/

森園勝敏サウンドの特徴とは?

森園サウンドを言葉で表すなら、「速いアタック、豊かなサスティン、そして絶妙な飽和感」という三つの要素が鍵となります。本人の言葉を借りれば、「ローが削れず、ミッドがふくよかに伸びる」クランチ~ミドルゲインが彼の理想。どんなアンプを使ってもそのサウンドを再現できるよう、ボードは〈歪みペダル3種+空間系+ワウ〉という、少数精鋭のミニマルな構成でまとめられています。

森園勝敏の使用エフェクター11選まとめ

① 歪み系(オーバードライブ/ファズ)

サウンドの核となる、キャラクターの異なるドライブペダルたちです。

WAY HUGE Red Llama Overdrive

メーカー説明

90年代に一度はシーンから姿を消したものの、そのサウンドを求める声が絶えず復活を遂げた伝説のブランド。創設者ジョージ・トリップ氏が生み出すペダルは、唯一無二のキャラクターで多くのギタリストを魅了しています。

製品説明

近年の森園サウンドの核となるメイン・オーバードライブ。本人が「最も出番が多い」と語る通り、このペダルがサウンドの基準となっています。ゲインを半ばにすれば鈴鳴りを残した絶品クランチ、フルにすればファズのように暴れる倍音感が得られ、まさに「一台二役」をこなす万能さが魅力。ストラトのシングルコイルでも音が細くならない、その守備範囲の広さが信頼の証です。

Frantone Brooklyn Overdrive

メーカー説明

1990年代から、ニューヨークを拠点に活動する女性ビルダー、フラン・ブランシェ氏が手掛けるブティック・ブランド。その独創的な回路とデザインで、カルト的な人気を誇ります。

製品説明

Red Llamaが基準だとしたら、こちらはサウンドにもう一段階ザラついた質感を加えたい時の選択肢。アンプで作った基本の音量を保ったまま、よりサチュレーションの強いドライブ感が得られます。現在では非常に入手困難なため、見つけたら幸運です。腕に覚えのある方は、公開されている回路図を基に自作に挑戦するのも一興でしょう。

https://dirtboxlayouts.blogspot.com/2020/03/frantone-brooklyn-overdrive.html

&K Laboratory Analog Face (Fuzz Face Clone)

メーカー説明

名古屋を拠点に、ヴィンテージ機材のサウンドを追求したハンドワイヤード・ペダルを製作する&K Laboratory。ゲルマニウム/シリコンといったトランジスタの特性を熟知したファズ作りで知られます。

製品説明

通称“白いファズ”。ギターソロなどで、豊かなサスティンと倍音を稼ぎたい場面で投入されます。ヴィンテージのFuzz Faceにインスパイアされつつも、原音のロー感を失わないよう巧みにチューニングされており、シングルコイルのストラトで踏んでも音が痩せないのが大きな利点です。

Crowther Audio Hot Cake

メーカー説明

ニュージーランドのバンド「Split Enz」の元ドラマー、ポール・クロウザー氏が1976年からハンドメイドで製造を続ける伝説的ブティック・オーバードライブ。そのユニークな非対称クリッピング回路は、多くのペダルに影響を与えました。

製品説明

2000年前後のPRISM期から愛用されている一台。特にMarshall系アンプと組み合わせた際に、リアピックアップでも低音が痩せずに粘りのあるサウンドが出せる点を評価していると推測されます。DRIVEノブ12時あたりでは上質なクランチ、3時以降では滑らかなオーバードライブと、守備範囲の広さも魅力です。

BOSS OD-1 OverDrive

メーカー説明

1977年、世界で初めて「オーバードライブ」と名付けられ発売された、歴史的なコンパクト・エフェクター。そのサウンドは、世界のロックギターの歴史そのものと言っても過言ではありません。

製品説明

80年代初頭のPRISMのライブ写真で、足元にこのOD-1が確認されています。当時の森園サウンド、特にアルバム『Lady Violetta』期のトーンを研究する上で、非常に重要な手がかりとなる一台です。

② 空間系&フィルター系

サウンドに彩りと奥行き、そして表情豊かな変化を与えるペダルたちです。

Line 6 DL4 Delay Modeler

Line 6 ディレイモデラー Stompbox Modeler DL4

Line 6 ディレイモデラー Stompbox Modeler DL4

29,800円(08/19 16:14時点)
Amazonの情報を掲載しています

メーカー説明

90年代後半に「モデリング」技術を世界に広めたLine 6が、2000年に発売したデジタルディレイの名機。その操作性は後継機であるMk IIにも受け継がれ、今なお多くのプロの足元で活躍しています。

製品説明

ショートディレイ、リバースディレイ、スウィープエコーといった多彩なサウンドを、3つのフットスイッチにプリセットし瞬時に呼び出せる操作性が、ライブ派ギタリストから絶大な支持を得ています。森園さんのボードに欠かせない一台です。

BUDDA Wah Pedal

メーカー説明

アメリカのブティック・アンプメーカー、BUDDA Amplificationが手掛ける定番ワウペダル。低ノイズで音楽的な効き方をするインダクター(心臓部)と、太い中低域が特徴です。

製品説明

DL4と並び、常にボードに設置されているペダル。一般的なワウにありがちな“鼻の詰まった”感じがなく、複雑なコードを弾きながら踏んでも各弦の音が明瞭に聴こえる開放感が最大の魅力です。森園さんが使用するのは希少な初期モデルですが、そのサウンドは唯一無二です。

Fairfield Circuitry Randy’s Revenge (Ring Modulator)

メーカー説明

カナダ・ケベック州のハンドメイド・ペダルブランド。ユニークな発想と、高品質なアナログ回路設計で、実験的なサウンドを求めるミュージシャンから高い評価を得ています。

製品説明

2020年の『ギター・マガジン』誌で最新ボードが公開された際に、搭載されていたことで話題になったリングモジュレーター。過激な金属音からシンセサイザーのような倍音まで幅広くカバーし、Red Llamaと組み合わせることで、リードトーンに独特の“宇宙感”を加えています。

③ ユーティリティ系

ボード全体の安定性を支える重要なペダルです。

KORG Pitchblack Tuner

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日本の電子楽器メーカーKORGが誇る、ペダルチューナーのベストセラー。高輝度のLEDメーターによる抜群の視認性で、暗いステージでのチューニングを強力にサポートします。

製品説明

エフェクターボードの最前段に置かれ、ミュート機能と信号を強化するバッファーとしての役割も担います。基準ピッチをA4=440Hzだけでなく、微妙に調整(キャリブレーション)できる点も、セッションなど様々な環境に対応するための選択理由だと考えられます。現行モデルはさらに精度が向上しており、常に最新のものを選ぶのがおすすめです。

MEMO

Hot CakeやRandy’s Revengeのような流通量の少ないブティック・ペダルは、中古市場でも価格が安定しません。国内ではReverbやメルカリ、楽器店の委託品などを並行してチェックすると、巡り会えるチャンスが広がります。

注意

本記事は2025年7月時点で確認できた情報を基に作成しています。アーティストの機材は、ライブやレコーディングのたびにアップデートされる可能性があります。最新情報は公式サイトやSNSでチェックしましょう!

まとめ:少数精鋭で構築する“ミニマルかつ多彩”なサウンドシステム

森園勝敏さんの機材選びは、「ローエンドを削らない」「倍音を豊かに加えつつも飽和させない」「どんな現場にも対応できる柔軟性」という3つの哲学に集約されます。キャラクターの異なる歪みペダルを段階的に用意し、飛び道具的なリングモジュレーターまで備えるのが、2020年以降のスタイルです。これに「三種の神器」とも言えるチューナー、ワウ、多機能ディレイを加えることで、どんなアンプや環境でも、常に“森園勝敏の音”を再現できる、ミニマルかつ多彩なサウンドシステムが完成するのです。

Q&A:よくある質問

Q. 森園勝敏さんのサウンドを作る上で、最も重要なエフェクターは何ですか?

ご本人のインタビューによれば、WAY HUGEの「Red Llama」を最も多用しているとのことです。シングルコイルのストラトで使っても低音が削れず、しっかりと歪んでくれる安心感が、サウンドの核となる決め手だと語っています。

Q. 「Hot Cake」と「Red Llama」は、どのように使い分けているのでしょうか?

推測になりますが、Hot CakeはMarshall系アンプと組み合わせた際にハイミッドを強調し、サウンドを前に出したい時に。対してRed Llamaは、アンプのキャラクターを活かしつつ、中域をフラットに保ったまま豊かな倍音を加えたい時に選ばれることが多いようです。

Q. なぜ飛び道具的な「Randy’s Revenge」を導入したのですか?

2020年の『ギター・マガジン』誌の取材で、「DL4のリバースディレイに、このリングモジュレーターを重ねると宇宙的なサウンドになる」とコメントしています。ストラトのハーフトーンと組み合わせることで、ノイズを抑えつつ金属的な倍音を付加できる点を評価しているようです。