エレキギター機材知恵袋を開設しました!質問募集中!

1176系エフェクターとは?ROSS・Dyna Compとの違い

1176系エフェクターとROSS・Dyna Compの違い

1176系コンプレッサーは、ピッキング直後の音をどれくらい残すか、音量が戻る速さ、圧縮の強さまで調整しやすいエフェクターです。音の粒を細かく整えたい人や、弱くかけて常時ONにしたい人に向きます。

一方、古いROSS CompressorやMXR Dyna Compに代表されるCA3080系は、少ない操作で圧縮感とサステインを作りやすい方式です。優劣ではなく、細かく調整したいか、コンプらしい音を素早く作りたいかで選びます。

先に結論
初めて1176系を試すなら、UAFX 1176 Studio Compressorが分かりやすい選択です。アナログ回路と細かな調整を求めるならCali76 FET Compressor、3機種の中で価格を抑えてスタジオ型の操作を試すならMXR M76が候補になります。ROSS/Dyna Comp系のはっきりした圧縮感が好きなら、無理に乗り換える必要はありません。
製品方式・位置づけ操作の特徴向いている使い方
UAFX 1176 Studio Compressor1176LNのデジタル・エミュレーションInput、Output、Attack、Release、Ratio、3モード1176の基本、常時ON、強いサステイン
Origin Effects Cali76 FET Compressor1176に着想を得たアナログFETコンプAttack、Release、Ratio、Dry、メーター原音を混ぜた常時ON、細かな追い込み
MXR M76 Studio Compressorスタジオ型コンプレッサーAttack、Release、Ratio、Input、Output入門からライブ、ギターとベースの兼用
ROSS Compressor(2023年JHS再発版)Dyna Compを手直しした系統Level、Sustain、Brightスイッチ圧縮感のあるクリーン、長いサステイン
MXR Script Dyna Comp1976年製Dyna Compを基にしたCA3080機Output、Sensitivityカントリー、ファンク、効果の分かりやすさ

1176系エフェクターとは

1176は、1967年に登場したスタジオ用コンプレッサー/リミッターです。大きすぎる音を素早く抑え、弱い音との音量差を小さくします。

身近な例にすると、演奏の音量を見張る手のようなものです。強く弾いた音が飛び出した瞬間に手を添え、落ち着いたら離します。手を添えるまでの時間がAttack、離すまでの時間がRelease、どれだけ押さえるかがRatioです。

ギター用の「1176系」は正式な回路規格ではありません。メーカーが1176の再現、または1176に着想を得た回路だと説明する製品を指す呼び方です。FETを使うコンプレッサーが、すべて1176系になるわけではありません。

UAFX 1176は、1176LNをデジタルで再現したペダルです。Cali76 FET Compressorは、1176に着想を得たアナログFET回路です。同じ1176系でも実装は異なります。

参考 UAFX 1176 Studio Compressor|製品と各モードHookup(Universal Audio国内代理店)

1176系とROSS・Dyna Comp系の違い

最大の違いは、部品名そのものよりも、演奏者が調整できる範囲です。

1176系はAttack、Release、Ratioを個別に調整できる製品が多く、ピッキング直後の音を残すか、素早く抑えるかを選べます。ROSS/Dyna Comp系の古典的な2ノブ機は、OutputとSensitivityまたはLevelとSustainを動かすだけで、圧縮感とサステインをまとめて変えます。

比較点1176系古典的なROSS/Dyna Comp系
音量を抑える仕組みFET。UAFX 1176はデジタルで動作を再現CA3080などのOTAを使う回路
主な操作Input、Output、Attack、Release、Ratio。製品によりDryOutput/LevelとSensitivity/Sustainが中心。再発版には追加スイッチを持つ機種もある
ピッキング直後の音Attackで残し方を調整しやすい回路に決められた反応が音の個性になる
圧縮の戻り方Releaseで曲の速さに合わせやすい基本的に外部からは調整しない
圧縮量の確認LEDメーターを備える製品が多い耳で音量とアタックを合わせる
得意な使い方弱い常時ONから強いリミッティングまでコンプ感、サステイン、粒のそろったカッティング
操作の難しさ調整幅が広い分、覚える項目が多い2ノブなら変化をつかみやすい

CA3080は、入力された音に応じて音量を変えるOTAという部品です。ただし、CA3080だけで音が決まるわけではありません。音を検出する回路、AttackとReleaseを決める部品、音を受ける回路と外へ送る回路、電源、調整状態でも反応は変わります。

ROSS CompressorもDyna Compと完全に同じ回路ではありません。JHSはROSSを、Dyna Compを手直しした回路として説明しています。

英語サイトの原文:

> “the classic Ross Compressor (which is a modified Dyna Comp)”

日本語訳:

> 「クラシックなROSS Compressorは、Dyna Compを手直しした回路です」

参考 Compression 101|ROSSとDyna Compの関係(英語)JHS Pedals公式・英語サイト

どんな人に1176系がおすすめか

1176系が合いやすいのは、次のような人です。

  • 強く弾いた音だけを抑え、弱く弾いた音との差を小さくしたい
  • ピッキング直後の硬さを残すか、丸めるかを選びたい
  • バラードのアルペジオやポップスのクリーンを一定の音量で支えたい
  • ギターを持ち替えても、バンドへ送る音量をそろえたい
  • コンプを弱くかけ、常時ONで使いたい
  • ギターとベースの両方で細かく調整したい

ROSS/Dyna Comp系が合いやすいのは、2ノブで迷わず音を作りたい人、カントリーやファンクのカッティングへ圧縮感を足したい人、クリーンや軽い歪みでサステインを伸ばしたい人です。

「音を整える機材」として使うなら1176系、「コンプをかけた音色」も楽しみたいならROSS/Dyna Comp系から試すと選びやすくなります。ただし、1176系でもRatioとInputを上げれば強く潰せます。ROSS/Dyna Comp系もSensitivityを下げれば弱くかけられます。

どんな曲で使うのか

特定のジャンル専用ではありません。曲の中で困っていることから設定を選びます。

曲の場面困りやすいこと試しやすい設定
バラードのアルペジオ弱い弦だけ聞こえにくい1176系を4:1、圧縮は弱め、Attackは中間から遅め
16ビートのファンク強いピッキングだけ飛び出す1176系でAttackを中間、Releaseを曲の速さに合わせる
カントリーの速いピッキング音の粒と「パコッ」とした圧縮感が欲しいROSS/Dyna Comp系のSensitivityを中程度から上げる
スライドや長いリード音が早く消える1176系のSustain系モード、またはROSS/Dyna Comp系を強めにする
歪みの強いロック音がすでに潰れているコンプをOFF、または歪みの前で弱くかける
宅録のクリーン波形のピークが大きく録音しにくいメーター付き1176系で、強い音だけ1〜3dB程度抑える

表の数値と設定は、自宅で音を合わせるときの出発点です。ギターの出力やアンプに合わせて調整してください。

1176系はつけっぱなしで使えるか

使えます。ただし、ONにしただけで音が良くなるわけではありません。バイパス時と音量をそろえ、強く弾いたときだけメーターが少し反応する状態から始めます。

常時ONの出発点は、UAFX 1176ならSingleモード、Cali76とM76なら通常の圧縮設定で作ります。UAFXのDualとSustainは2台分の設定を同時に動かすため、Singleと同じつまみの効き方ではありません。

次の順で合わせると迷いにくくなります。

1. Ratioを4:1にする

2. Attackは中間から遅め、Releaseは中間にする

3. Inputを下げた状態から、強く弾いたときだけ圧縮する位置まで上げる

4. Cali76はDryを少しずつ加える。UAFXのParallelはOutputで圧縮音の量を決める

5. 最後にバイパス時と全体音量をそろえる

音が引っ込む場合はAttackを遅くして、ピッキング直後の音を残します。コードを弾くたびに音量が揺れる場合は、Releaseを遅くします。ノイズが増える場合は、圧縮量とOutputの上げすぎを確認します。

ROSS/Dyna Comp系も常時ONにできます。OutputをOFF時と同じ音量にし、Sensitivityを9〜10時付近から上げると変化を確認しやすくなります。ピッキングの強弱が消える、ノイズが目立つ、コードの頭がへこむ場合は圧縮を下げます。

かけっぱなしの接続例と失敗しやすい設定はこちらで詳しく解説しています。

接続順はコンプレッサーから試す

基本は、ギター → コンプレッサー → オーバードライブ/ディストーション → アンプです。歪みへ入る音量を整えられるため、コードと単音の差を小さくできます。

ギター側ボリュームへの反応を重視するFuzz Face系は、ファズを先に置きます。

ギター → Fuzz Face系 → コンプレッサー → ほかの歪み → アンプ

コンプレッサーを歪みの後ろへ置くと、歪み量を大きく変えずに全体の音量を整えやすくなります。その代わり、歪みが出すノイズも持ち上がりやすいため、常時ONでは圧縮量を控えめにします。

1176系とスタジオ型コンプレッサーおすすめ3選

Universal Audio UAFX 1176 Studio Compressor

オリジナルの1176LNをUAFXエンジンで再現したデジタル・ペダルです。Singleは1台の1176として使い、Dualは2台を使った歪み寄りの音、Sustainは長いサステインを作ります。

Input、Output、Attack、Release、Ratioがそろい、パラレル・コンプレッションとトゥルー/バッファード・バイパスも切り替えられます。1176という機材の操作と音の幅を1台で試したい人に向きます。

電源はアイソレートされた9V DCセンターマイナスで、250mA以上が必要です。

参考 UAFX 1176 Studio Compressor 日本語マニュアルHookup(Universal Audio国内代理店)

Origin Effects Cali76 FET Compressor

1176に着想を得たオールアナログFETコンプレッサーです。Attack、Release、Ratioに加え、圧縮していない原音を混ぜるDryと、圧縮量を確認できる10個のLEDを備えます。

電源は9V DCセンターマイナスで、200mA以上が必要です。内部で24Vへ昇圧し、強い入力でも歪みにくい余裕を確保します。原音の立ち上がりをDryで戻しながら、音量差だけを整えたい人や、常時ONの設定を細かく追い込みたい人に向きます。

英語サイトの原文:

> “inspired by the world-famous Urei 1176 studio compressor”

日本語訳:

> 「世界的に知られるUrei 1176スタジオ・コンプレッサーに着想を得ています」

参考 Cali76 FET Compressor|回路・操作・仕様(英語)Origin Effects公式・英語サイト

MXR M76 Studio Compressor

Attack、Release、Ratio、Input、Outputと、何dB抑えているかを示す10個のLEDを備えるスタジオ型コンプレッサーです。Ratioは4:1、8:1、12:1、20:1から選べます。

M76は1176の再現機ではありませんが、Attack、Release、Ratio、Input、Outputを学びやすい比較候補です。ギターとベースを1台で扱いたい人、メーターを見ながら圧縮量を覚えたい人に向きます。

参考 MXR M76 Studio Compressor|操作と仕様モリダイラ楽器

ROSS・Dyna Comp系を選ぶなら

ROSS Compressor(2023年JHS再発版)

2023年にJHSが再発したROSS Compressorは、Level、Sustain、側面のBrightスイッチを備えます。このモデルは2024年に生産を終了しました。2026年に登場したROSS Era 6 Compressorは別モデルです。

細かなAttack/Release調整より、クリーンの粒をそろえ、サステインを伸ばす音を素早く作りたい人向けです。

MXR CSP102SL Script Dyna Comp

1976年製Dyna Compを基に、メタル缶のCA3080、Output、Sensitivityという構成を採用した現行モデルです。LEDとDCジャックを備えるため、古いDyna Compの方向をライブ用ボードで試しやすくなっています。

Sensitivityを上げると、音量差だけでなくピッキングの立ち上がりとサステインも一緒に変わります。2ノブでコンプの効果を耳で覚えたい人や、カントリー、ファンク、クリーンの単音へ圧縮感を足したい人に向きます。

参考 MXR Script Dyna Comp CSP102SL|CA3080と仕様モリダイラ楽器

CA3080系の実機記事

2n3565では、RCA製CA3080を使うGuyatone PS-103、Maestro・MXR・ROSSを参考にした鈴木茂 C-2、ROSS系A.Y.A R-Compを実機で紹介しています。部品名だけでなく、圧縮の強さ、バイパス時の変化、つまみの効き方を確認できます。

CA3080を使った国産ヴィンテージ機で、圧縮が深くかかる実例としてPS-103を紹介しています。

C-2はROSSだけのコピーではなく、Maestro、MXR、ROSSを参考にした実機です。

価格帯と方式を広く比べる場合は、ギター用コンプレッサーのまとめ記事も参考にしてください。

FAQ

1176系エフェクターとは何ですか?
スタジオ用1176コンプレッサーの動作を再現、または1176に着想を得たギター用コンプレッサーです。Attack、Release、Ratioなどを調整できる製品が多い一方、FETコンプがすべて1176系になるわけではありません。
1176系とDyna Compの違いは何ですか?
1176系はAttack、Release、Ratioを個別に調整しやすく、Dyna CompはOutputとSensitivityの少ない操作で圧縮感とサステインを作りやすい点が違います。どちらも設定により弱くも強くもかけられます。
1176系コンプレッサーはつけっぱなしにできますか?
できます。Ratio 4:1、圧縮量は弱め、Outputはバイパス時と同じ音量から始めます。音の立ち上がりが消える場合はAttackを遅くし、音量が揺れる場合はReleaseを調整します。
1176系はどんな曲で使いますか?
バラードのアルペジオ、ポップスのクリーン、ファンクのカッティング、スライド、サステインの長いリードで使えます。ジャンルより、音量差を整えたいのか、音を長く伸ばしたいのかで設定を選びます。
1176系やスタジオ型コンプレッサーを初めて買うなら、どれがよいですか?
1176の動作を直接試すならUAFX 1176、1176に着想を得たアナログ回路とDryを求めるならCali76 FETが候補です。M76は1176の再現機ではありませんが、Attack、Release、Ratioを備えたスタジオ型コンプレッサーの操作を学べます。

まとめ

1176系は、Attack、Release、Ratioを使い、ピッキングの立ち上がりと音量の戻り方を曲に合わせられるコンプレッサーです。音量差を細かく整える用途から、強い圧縮や長いサステインまで対応できます。

ROSS/Dyna Comp系は、少ない操作で圧縮感とサステインを作れることが魅力です。常時ONで薄く整えたいのか、カッティングやリードへコンプの音を足したいのかを基準にすると選びやすくなります。